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第二章 王都編
第三十六話 魔法騎士学校入学試験 その9
しおりを挟む「という事は殿下、先ほどの賭けは私の勝ちという事になりますか」
「ん? どういう事だ」
「だってカルロさんが勝ったら殿下の勝ち、JJくんが勝ったら私の勝てなんでしょ。今のカルロさんのお話ですと、どうやらJJくんの勝ちのようですが……」
そう言うと殿下は、子供のように少しむっとした顔をする。
「いや、審判は間違いなくカルロの勝ちを宣言した。」
「ですが、勝負をしたご本人は勝ったとは思っていないようですよ」
「カルロは『勝つことが出来なかった』と言っただけだ。負けてはいない」
「その後『自分が絶対負けていた』とか『勝ちを譲られた』とか言ってました。それはつまり――」
「ああそうだ。JJが勝ったとは言っていない。それに譲られたなら勝ちはカルロの物だろ。返せと言うのか」
「そんな屁理屈を」
「こっちのセリフだ」
「ああ、殿下がこんなに負けず嫌いだったなんて」
「そのまま返すぞ」
「「どっちなんだカルロッ! 」さんッ! 」
「え、えっと、試合に勝って勝負に負けたといいますか……どっちでしょう」
「「ややこしいッ! 」」
カルロさんも殿下と私の勢いに目を白黒させて答えを詰まらせる。
「まあまあ、お二人とも」
角付き合わせる距離でにらみ合う私達をロレンツォが仲裁する。
「なんだか今回の試合の結果はハッキリしないですし、当事者のカルロさんも納得いかない部分もあるようです。どうでしょう、賭けは不成立ということでいかがでしょうか」
「……ロレンツォ殿のよろしいように」
ロレンツォナイス!
最高の落としどころよ。でもここは、玉虫色の決着であまり納得いかないが仕方ない、と言った雰囲気を出しつつ頷きます。
「仕方ないな」
殿下も今の状況ではこれ以上は強く言えないと感じたようです。
よかった~。許婚だ、謁見だ、となったら面倒が多すぎですから。
今度から安易に賭けに乗るのは止めましょう。
「だが、シャーロットよ。あのJJという者には興味がある。春から同級生になるのだ。その時はJJをきちんと紹介してほしい」
「もちろんご希望であれば紹介の労くらい厭いませんが、……同級生というのは難しいかと」
「JJは合格が難しいという事か。あれほど強いのに。あっ……頭悪いのか」
けっこうハッキリ言いますねこの人。でも悪知恵は働きますから、あながち頭は悪くないかと思いますが。
「頭が悪いか、そこはわかりませんが。というか合格できたら多分私達と同じBクラスになると思います。母がそう手回しをしていますから」
「シャーロット!? 」
しまった。許婚の件が片付いて安心したら、ついポロッと余計な事を言ってしまった。
「なぜだ? 辺境伯家ならAクラスだろう」
「その、色々と事情がありまして」
「事情? 事情とは何だ」
ああ、面倒臭いなんて説明しよう。
「えっと色々とその」
「ふうむ、ロレンツォお前は事情を知っているのか。知っているなら教えて欲しい」
私は話さないと思ったのだろう、殿下はロレンツォに話を振る。
「知っております。知っておりますが、やはりお話できかねます」
「シャーロット。ロレンツォには言えてオレには言えぬというのか」
「ラージュ様、誤解されませんよう願います」
殿下は私に問いかけたが、答えたのはロレンツォだった。
「私がその事情を知っているのは、当事者の一人としてその場にいたからでございます。そしてお話出来ないのは、シャーロット嬢のプライバシーにかかわる事であると同時に、非常に政治的な要素が含まれているため安易にはお話出来ないのでございます」
ロレンツォは殿下に対しても、物怖じしないで話す。
「本来はここまでもお話出来ない事でございますが、シャーロット嬢を気遣われる殿下のお気持ちを汲みまして少しだけお話させていただきました」
「ふうむ。わかった、ロレンツォお前の気持ち嬉しく思う。ではシャーロット嬢、今日は深く聞くまい。話せる日が来たら言ってほしい。力になれることもあるだろう」
「お話できるようになりましたら、その時はぜひ」
物分りのいい人で助かった。それとロレンツォがいて本当に助かったわ。
もし殿下に話をしたら、間違いなくこの紳士は私達の味方をしてくれるだろう。だけどそれは下手をすると事が大きくなりすぎる可能性がある。まだ話す時ではない。
「話を戻すと、JJは合格するとBクラスになるようになっているのだな」
「多分、母がそう学校に働きかけているはずです」
「よし、オレもBクラスにしてもらおう」
「殿下? 」「ラージュさま!? 」
どういう発想をすれば、王族がBクラスになろうと思うのだろう。
「カルロもJJとクラスメイトになれば、今日の決着もつけるやすくなるだろう」
「さすが殿下、御心のままに」
「その時は勝てよ」
「御衣」
脳筋? この二人脳筋なの、ねえ。
わかった。この人は新しいおもちゃを見つけて楽しんでいるだけなのだ。
物言いや、佇まいはいかにも紳士だが、基本はオレ様キャラなんじゃないだろうか。
「さっきの事情とやらも。オレがクラスメイトになっていれば助けになる事があるかもしれない。力になってやるぞ。オレに任せろ」
やっぱりオレ様だ。
さっきの事情も、自分が仲間はずれなのが嫌で首を突っ込みたかっただけなんじゃ……。
脳筋オレ様キャラ。
だけど悪い人ではなさそうだ。私は新しい学校での生活に、ちょっとの不安と大きな希望を見出したのです。
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