あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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第二章 王都編

第三十六話 魔法騎士学校入学試験  その7

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 あれ、横からじゃない。
 横から来たら、自ら横に吹っ飛んで勢いを殺すのに……。
 これはもう避けるしかない。
 足をもつれさせたフリをしてたけど、今は仕方ない。たまたま避けられた、という態で避けよう。
 オレは振り下ろされた槍を、身体を半身にひねって鼻先五セルチマイトルで避ける。
 カルロの驚きと怒りの混ざった表情がスローモーションで見えた。
(これを避けるかーッ! )
 とでも思っているのかな。
 やれやれ、今度は横からやってくれよ、横から殴ればお前の勝ちだ。
 と思っていたら、カルロの槍に異変が起きた。
 カルロの槍は、オレの鼻先を通り過ぎ勢いよく石畳を打った。そして石畳を打ったその槍は、その衝撃に耐え切れずに、真ん中あたりからへし折れたのだ。
 今まで散々オレの盾を叩いてきたのだ。盾と同じく槍の柄も衝撃を受けていて、石畳を打った際についに限界が来たのだった。
 そしてカルロ自身も、石畳を打った衝撃で腕が痺れたようで、折れた槍を手放していた。
 目に前にいるオレの対戦相手は、無手となって、無防備に突っ立って唖然とした表情をしていた。
 冒険者同士の喧嘩でもなく、魔物との殺し合いでもない。純粋に剣と槍の試合は初めての体験でちょっと楽しかった、つい顔がほころぶ。
 試合終了のつもりで、オレはついクセで、カルロのノド元に剣を向けてしまう。
 剣を向けてしまってから我に返った。
 メッチャ勝った者のポーズしてるけど……、まずい勝っちゃいけない。
「そこまで、勝者――ッ!? 」
「参りましたッ!! 」
 オレは審判が勝利宣言をする前に、その声を遮って自ら土下座して負けを宣言した。
「えっとキミ、キミは勝――ッ!? 」
「違うんです! 」
 オレが勝ったんだ――、と説明しようとする審判に、なおもオレはその声を遮って負けた説明をする。ってかしなきゃいけないけど何か良い言い訳は……。
 下を向くオレの視線の先に赤い線が見えた。
 これだ!
「待ってください、ボクはさっき、このお兄ちゃんの槍を避けたけど、でもその時反則しちゃって、そこの後ろのあった場外のラインを超えちゃったんだ。だからボクの場外負けなんです。場外に出なかったら、お兄ちゃんの槍がボクに当ってたからお兄ちゃんの勝ちだよ」
 オレが舞台の隅に追いやられていたのは事実だ。
 そして誰も足元は見ていなかった。本当に足が出てたかどうかはオレも知らない。
 でもそんな事はどうでも良い。
 オレが負けてBクラスになれればそれで良いのだ。
 オレは勢いでカルロの勝利を主張。
 だがカルロも場外反則勝ちでは納得いかないらしく、再試合を主張したが、オレは体力が限界だといって認めなかった。
 最終的には、審判も終始攻勢に出ていたカルロの勝利を認め、カルロは五勝〇敗で試験終了となり、憮然とした表情で、手続きをするため受付へと去っていった。
 オレは四勝一敗で次の受験者を待つことになった。
「次の受験生と試合出来るなら、カルロ君と試合しても良かったんじゃないの」
 と係の人に言われた時はどうしようかと思った。
 でももう面倒臭い。せっかく拾った負け星を手放したくない。
「あのお兄ちゃんには絶対勝てないよ」
 と子供っぽく言い訳して誤魔化した。
 次の受験者は、さっき四試合目で戦った生徒で、同じ対戦相手とは再試合は出来ないためもう一人受験生を待って、そいつをサクッと倒して五勝一敗で受験を終えた。
 そいつはあまり強くなかったので負けると八百長が疑われそうだったし、もう一回負けるのも、もう面倒だったのでサクッと終わらせた。



 試合の結果が書かれた書類を受付に提出しに戻る途中、一回戦の試合会場の横を通った。
一回戦の試合はまだ続いていた。
 オレはサクサク試合を終わらせていたので、試験は早く終わったが、普通の試合は小ロウソク半分とか時間がかかるので、まだ試験全体は終わっていないようだった。
 見るとオレに負けた痩せぎすの少年がまだ一回戦の舞台で試合を行っていた。
 フラフラで剣を持つのも重そうな感じだった。
 係の人に聞くと、〇勝十七敗で負け続けらしい。止めないのか聞いたら、本人がやると言う以上止めないらしい。
 対戦する受験生はまだ何十人も並んでいる。六つある試合の舞台はこの舞台以外は空いてしまっている。
 こいつら確実に勝てる痩せぎすの少年以外とは戦いたくないようだ。
「くそったれがッ! 」
 さっきも思ったが、こいつら本当にくそったれだ。こんなフラフラで痣だらけの半病人のような少年相手に勝ち星を拾って、それで合格して嬉しいのか。
 いや、嬉しいんだろうな。
 みんなニヤニヤと笑いながら、順番待ちをしていやがる。
 ああもう、こいつら全員タロスの全力で頭を殴ってやりたい。やらないけど。
 などと思っていたら、痩せぎすの少年が試合の舞台から転げ落ちてきた。
「勝者二三五番」
 場外負けになったようだ。これでこの少年は〇勝十八敗ということか。
 痩せぎすの少年は息も絶え絶えに座り込んでしまった。
「大丈夫か」
 オレが手を貸して立ち上がると、そこに舞台に上がる階段の方から小太りのポッチャリした受験生が走ってきた。
「おい、割り込むな。次はボクの番なんだからな」
「ボクは試合は終わったから、割り込むなんて事はしないよ。でも少しくらい休ませてあげてもいいんじゃないの」
「ふん、時間がないんだ。早くしないと時間切れで不合格になっちゃうよ、さっさと行くぞ」
 ポッチャリ受験生は痩せぎすの少年の腕を取って連れて行こうとする。
「きみ、ありがとう。ハアハア……ボクは大丈夫。一回でも勝てれば合格できるんだ。なんとか……勝って次で棄権すればいいんだ、ハアハア」
 荒い息をしながら痩せぎすの少年は言う。
 後で聞いたが、筆記試験や魔法の試験で結構良い成績を残したら、後はこの試合で一度でも勝てれば合格という生徒はけっこういるらしい。
 この生徒も一回戦だけでも勝てれば合格らしい。
「じゃあさ、水だけでも飲んでいきなよ」
「ありがとう……ってこれは」
 オレは水と嘘をついて一本だけ持っていた高級ポーションを飲ませてやった。
 体力や怪我を治すだけだ。
 力を強くしたり、速度を早くしたりというドーピングものではない。
 あくまでも試合前の状態にするだけなので反則ではない。
 この後こいつが相手の受験生に勝てるかどうか、それは分からない。この痩せぎすの少年次第だ。
 この痩せぎすの少年も、最初はオレをカモにして二回戦にいこうとしていたので、で同じ穴の狢かもしれないが、どんなに負け続けても試合を投げ出さず、合格を目指して頑張ってるんだ。このくらいはしてあげてもいいだろう。
 この後こいつが相手の受験生に勝てるかどうか、それは分からない。この痩せぎすの少年次第だ。
「じゃあ頑張れよ」
 オレは痩せぎすの少年の背中にそう言って受付へと戻っていった。
 舞台の上では、急に元気がよくなった相手を見て、ポッチャリ受験生が顔を青ざめさせていた。

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