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第六話 ペンギン、名前を貰う
しおりを挟むオレはデミに手を引かれて、彼女の家まで連れて行かれた。
デミの家はボロかったが、大家族というだけあって少し大きな家だった。
大きいが、豪邸とかお屋敷とか言うのとは全然違い、小さな家に増築に次ぐ増築を重ねた結果大きくなった、継ぎ接ぎだらけの複雑は家だ。(家族関係が複雑とかじゃないよ)
「父ちゃんただいま。薬草、薬と交換してきたよ」
「お帰り、遅かったな」
デミが玄関で声を掛けると、奥から父親と思われる野太い声で返事が返ってきた。
悪かった。遅くなったのはオレの足が遅かったせいだ。足が短いから・・・・・・。
「なあ姉ちゃん、森でペンギン見つけたんだって」
若い女性の声がしたと思ったら、十歳くらいの少年が出てきた。デミが言ってた弟か?
「ペンギン? 違うよピングイーノだ――ッ!? 」
「あっえっ、この子? 連れて来たんだ? カワイイねえ! 」
デミの反論を遮って、オレを見つけた少年が抱きついてきた。
「アホだな姉ちゃん。これはどう見たってペンギンじゃん! 父ちゃんもアホだから間違ったんだ――テッ!? 」
「お前にアホ呼ばわりされたくないッ」
アホ呼ばわりする弟に、デミの拳骨が落ちる。
「グワッ、グゴーガー(コラッ、苦しい離れろ)」
デミの鉄建にもめげず弟は頬ずりを止めない。
「すごいよ姉ちゃん、喜んでる」
オレは短い手で少年の顔をギューと押し返すが弟は聞く耳を持たない。まあ言葉も通じないのだが・・・・・・。
なんか、デミも弟も野生動物に対して遠慮がないな。まあ見た目は愛らしいペンギンだけど、これで中身がおっさんって知られたらどう思われるかな。気づかれないようにしないと。
「「ペンギン? 見せて見せてッ」」
また奥から少女の声が、聞こえてきた。
やってきたのは五、六歳位の顔立ちのそっくりな二人の女の子だ。ポニーテールのリボンが色違いだがそれ以外は見分けがつかない。
多分この二人がデミが言っていた双子の妹か。
「「カワイイ~、名前なんていうの? 」」
「ピングイーノだからピグエモンって名――ッ!?」
「だからピングイーノじゃ無くってペンギンだって言ってるじゃん。こいつはペンギンの男の子だからペンシロウだよ」
弟が勝手に名前を付ける。
「え~、アニーはオスじゃなくってメスがいい、ペンナちゃんがいい」
「えっと、エニーもメスがいい。でも名前はペンコちゃんがいい」
いやメスがいいって言われてもオレは男、ってかオス? なんだけど。
双子がオレに抱きついてワガママを言う。
「ペンコ? ダッサ、ダメに決まってんじゃん。ポコペンが一番だって」
弟が双子の妹の意見を一蹴する。活発を通り越してオレ様な性格をしているなあ。さっきと名前違うし、・・・・・ってか、なんだよポコペンって。
「お~い玄関先で何やってんだ」
「みんな揃わんからメシにできんぞ」
子供たちがワイワイやってると、奥から筋肉が・・・・・・もとい、大人の男が出てきた。三十半ばくらいの男はザ・筋肉というくらいのマッチョマン。いい奴かもしれない、オレも体を鍛えたから判る。ウン。筋肉は嘘つかない。
その後ろにもう一人いた。、六十代の初老の男で、逆に細い締まった体をしている。
雰囲気からすると、父親と祖父だろうか。
「それが、こいつらあたしが決めた名前に文句が有るらしくってサ」
デミがため息混じりに言う。
「名前? たしかピングイーノのモンスターだからピ〇モンって名前にしたかと」
モンスターじゃねえし。筋肉親父は脳みそも筋肉だった。やめろなんかどっかから何か言われそうな名前だ。
「バカ言え、ワシがピ〇ミンってつけたんだぞ」
爺さんも今はじめて会ったのにもう過去形で名付け親になってる。それもやめろ。
それをきっかけにまた子供たちがワイワイ騒ぎ出す。
「ピグエモンだよ」
「ペンギンだからペンドラゴンで決まりだな」
「ペンドラゴンいいな」
「どっかの貴族の名前であるじゃろ、不敬罪になるぞい」
「だったらペンワイバーンは? 」
「ドラゴンより弱いじゃん」
「じゃペンベヒモス」
「ペンリヴァイアサン」
もうペンはから離れよっか、なあ。
「アニーはピグナがいい」
「エニーは何でもいいけどピグミでもいいかな」
「もうシロでいいじゃないか」
「いや背中は黒色だからシロクロ」
「いっそ間とってハイイロで」
ワイワイと揉めているところに、多分父親の弟(筋肉オヤジをさらに一回り大きくした男)でデミの叔父とその妻、そして多分母親の妹とその娘も混ざっててきた。
「何、名前つけてんの? タマかな」
「ポチでしょ」
「え、名前? チャトラとかクマとか? 」
「白黒だからパンダッ」
もうペンギンじゃねーし・・・・・・。
しかし、お前らネーミングセンスなさすぎ。
「そんなことより、母ちゃんと婆ちゃんに薬飲ませてあげたら」
みんなでワイワイやってるところに、男の子の意外と澄んだ通る声が響いた。
みんながシンとなってその声の主を見つめる。七、八歳くらいの、分厚い昆虫図鑑を片手に抱えた眼鏡男子だ。確かもう一人弟がいるって言ってたよな。
「いっけない、忘れてた」
デミ、お前忘れんなよ、何しに森まで行ったんだよ。
「そうだジョアンの言うとおりだ、名前は後でまた考えよう。まずは母さんと婆ちゃんに薬をあげて、それからご飯にしよう」
筋肉親父が苦笑いしながら家族を促して、オレを置いて奥へと入っていく。
オレは玄関に一人・・・・・・、じゃなくって一羽取り残される。
いやジョアンと呼ばれた眼鏡男子がオレを見つめている。
「ペンペン、早く行くよ」
そういってオレに、本を抱えていない、反対側の手を差し出してきた。
すると、家の奥に去りかけたみんなが、緊張した顔つきで一斉にオレとジョアンを振り返った。
「グア」
皆が注目する中、オレはジョアンに返事をして手を取る。
そのとたん、みんながあせった顔で速攻でオレの前に戻ってきて一斉に名前を叫んだ。
「いや待って、ピグエモンだよね」「・・・・・・」
「ペンドラだろ」「・・・・・・」
「ピグナちゃん」「・・・・・・」
「ピグミちゃん」「・・・・・・」
「シロ」「クロ」「マッチャ」「クマ」「タマ」「ハナ」「パンダ」「・・・・・・」
どれもいまいちな名前でオレは返事をしない。
「ペンペン」
「グア」
ジョアンがもう一度呼ぶのに答えるオレ。この中では一番まともだ。オレはその名前意外には返事をしない。
すると 頭の中でピロリロリンと何か効果音がした。
『ペンペンねぇ、まあいいんじゃない(どうでも)』
『・・・・・・とにかく、人間と仲良くなれればそれでいいのじゃ』
駄女神’sのやる気なさげな感想が聞こえてきた気がした。
こうしてオレの名前はペンキチローでもペンヤでもピグエモンでもペンドラゴンでもなく、一周回ってペンペンに決まった。
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