ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

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第23話:ひかり食堂で満たされたひと時

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「お好きなお席どうぞ~。」

と声をかけてくれたのは、
食堂をずっと切り盛りしてきたような、
やわらかい笑顔の女性だった。

「は~い。ありがとうございます。」

軽く会釈しながら言って、
奥の席へと腰かける。

腰を下ろしたタイミングで、
さっきの店員さんが近づいてくる。

「ご注文お決まりでしたら、お声がけくださいね。」

柔らかい声が、食堂の空気にそっと溶けた。

「は~い、ありがとうございます~。」

微笑んで返事をする。
テーブルの端に置かれていたメニュー表を手に取った。

パラリと開く。

......少し古めのデザイン。
字体やレイアウトに、どこか懐かしい気配がある。

なのに——

角に折れ曲がりや油染み、
色褪せもない......

使い込まれているように見えるけど、
まるで新品に見える不思議な感覚。

((ゼニス、このメニューなんかスゴイね!))

((──はい。
  一見すると経年劣化しているようですが、
  同時に新品同様の状態にも見えます。))

((なんかそれ、頭が混乱しそうな矛盾だね~。))

((──気にする必要はありません。
  使用には問題ありませんので。))

((うん、気にしてるわけじゃないよ。
  不思議だな~って、ちょっと思っただけ......))

((──遥。唐揚げはありそうですか?))

((そうだった! 唐揚げ、超大事じゃん!!))

メニューの中に、
オムライスと唐揚げの両方がちゃんと載っていることを確認し、
店員さんにそっと声をかけた。

「すいませ~ん。注文お願いします。」

声をかけると、
店員さんは振り返って微笑んだ。

「は~い、ただいま~。」

「え~っと、オムライスと唐揚げをお願いします。」

「オムライスと唐揚げですね。
 少々お待ちくださいね~。」

注文を終え、
ふと店内を見渡してみる。

壁際に、小さな本棚があった。

置いてある本の並びが妙に整っていて、
背表紙の高さも色味も、どれも均一にそろっている。

まるで――
同じ本を何冊も並べているみたいな揃い方。

((......全部、同じ本なのかな?))

((──同じ本を複数配置するのは、
  非合理的です。
  通常では考えられません。))

((その本が、めっちゃ好きとか~。
  まぁ......ないか......ふふふ))

((──それなら、可能性はゼロではないですね。))

「いやいやいや!ないでしょ~~っ!あははは~!」

思わず大きな声でツッコんでしまったのに、
店員さんは何事もなかったように、淡々と作業を続けている。

((......くろいわベーカリーの時も思ったけど、
  わたしへの無関心ぶりがスゴイ......ふふふ))

((──遥に対して無関心なのではありません。
  作業に集中していると、周囲の音が入りにくくなるだけです。))

((あ~......たしかに、わたしもあったな~。
  『七瀬さん聞いてます?』とかよく言われてた気がする......))

((──遥も体験があるように、
  一般的によくあることなのです。))

((だよね~。))

脳内会話を楽しんでいると、
注文した料理が運ばれてきた。

「オムライスと唐揚げです。
 唐揚げは揚げたてで、熱いので注意してくださいね。」

「は~い。ありがとうございます。」

((めっちゃ美味しそうだね~ゼニス。))

((──はい。美味しそうですね。
  遥の食欲が高まっていることが伝わってきます。))

((いやいや、美味しそうだけでいいの!
  食欲が~とか言わなくていいよゼニス......ふふ))

オムライスをスプーンですくい、
一口ほおばる。

ふわっとした卵の甘みと、
中のケチャップライスの香ばしさが広がっていく。

((おいしい!))

自然とほっぺがゆるむ。

((ゼニス、これめっちゃ美味しい!))

((──はい。味覚はないので、直接的に味わうことはできませんが、
  遥の反応で、オムライスも非常に良いものだと理解できました。
  つまり、美味しいということです。))

((うんうん、素直に美味しいって言えば、
  もっといいけどね~......うふふ))

((──美味しいですね、遥。))

((じゃ~、ゼニスが楽しみにしてる唐揚げも食べてみよ~。))

唐揚げを箸でつまみ、そっと一口かじる。

じゅわっと広がる肉汁に、
衣のサクッとした食感が重なって......
一瞬で幸福感が押し寄せてきた。

「おいしっ! 熱いけど、めっちゃ美味しい~!」

思わず声に出てしまう。

((──遥。熱いのでご注意を。))

((揚げたてなの忘れてたよ~......えへへ))

((──気をつけてください、遥。))

((うん。唐揚げも美味しいね、ゼニス。))

((──はい。唐揚げも美味しいです。))

((ホント......一緒に食べてるって、いいもんだよね~!))

((──はい。非常に良いものです。))

そのあとも、
オムライスのまろやかさと、
唐揚げの香ばしい余韻を楽しみながら、
ゆっくりと食べ進めた。

気づけば、お皿はきれいに空っぽになっていた。

「ふぅ~......お腹いっぱい!ごちそう様でした!」

胸の奥まで、じんわり満たされていく感覚。

((──満腹状態を確認しました。
  良い食事でしたね、遥。))

((うん! 大満足だよ~!))

((──良い傾向です。))

オムライスと唐揚げのお皿をそっと重ね、
テーブルの上を軽く整える。

それから席を立ち、レジで会計を済ませる。

大満足の食事を提供してくれた
ひかり食堂をあとにした。
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