ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

文字の大きさ
37 / 83

第37話:変わらない青空

しおりを挟む
「ゼニス、ひより緑地公園で朝ごはんにしよう。」

((──はい。このまま向かいますか?))

「うん、このまま行こ~。」

((──はい。))

北口から駅ビルの中を通り、
見慣れた南口へ出る。

駅前広場を抜け、
しもむらやホテルの前を通りすぎて、
大通りの交差点へ向かった。

道なりに真っすぐ進むと、
ひより医科大学附属病院が見えてくる。

その先に、
ひより緑地公園の入口があった。

「思ったより近いよね、公園。」

((──はい。))

公園の中へ進み、
相変わらず真新しいベンチに腰を下ろす。

「ここって、前回来た時も思ったけど、
 静かで人もいないよね。ふふっ」

((──はい。この時間帯は、
  会社や学校へ向かう人が多いため、
  公園を利用する人は比較的少ない時間帯です。))

コンビニ袋を脇に置いて、
中から飲み物とサンドイッチを取り出す。

飲み物にストローを差し、
一口飲む。

「うん、うるおった!」

サンドイッチの包装を外して、
そのまま食べ始める。

「サンドイッチも美味しいね!」

((──はい。レタスとハムの比率が適切で、
  味と食感のバランスが取れています。
  ただし、食感や味の評価については、
  推測の域を出ませんが。))

「あっはは!
 でも、その分析、合ってると思うよ!」

((──はい。))

サンドイッチを食べ終え、
軽く息を吐いた。

「ふぅ......朝ごはん終わり。
 ごちそう様でした。」

((──はい。朝食完了を確認しました。))

空を見上げる。
いつもと変わらない、
絵に描いたような青空。

「なんか、空もいつも同じように感じるね......
 そんなわけないか......」

((──日中の空は、
  太陽光が大気中でレイリー散乱を受けるため、
  広い範囲で青く見えます。
  実際には高度や太陽の位置によって
  色はわずかに異なりますが、
  変化が緩やかなため、
  人間の視覚では
  『ほとんど同じ』と認識されやすい状態です。))

「うわぁ......
 めっちゃ説明、長いんですけど~。
 あっはは~」

ゼニスの淡い光が、
少しだけ照れたように、
弱くなった気がした。

「レイリー散乱とか使ってくるあたりが、
 なんかゼニスっぽいよね~!」

((──はい。遥の知識レベルを前提に、
  言葉を選択しています。))

「ふぅ~ん。
 じゃあ、わたしが知らなかったらどうするの?」

((──その場合は、
  小学生でも理解できる表現に置き換えて説明します。))

「あっはは!
 いいね、それ!」

((──しかし、
  遥の知能は高く、知識も豊富であるため、
  そのような状況は想定していません。))

「褒めてくれてるんだね。
 ありがと。」

((──はい。))

公園内に流れる、
ゆったりとした時間が、
ただ、心地よかった。

そこへ、
ランニングウェアに身を包んだ女性ランナーが、
通りかかる。
一糸乱れることのないペースで、
走り去って行った。

「ランニングかぁ......」

((──ひより緑地公園は、
  外周が整備されたランニングコースになっており、
  走りやすさから、
  利用者も多いと推測されます。))

「そうなんだっけ?
 ベンチでぼーっとするくらいしか
 したことないから知らなかったな。
 えへへ」

飲み物を口に運んでいると、
さきほどの女性ランナーが、
また同じように通りすぎていった。

「さっきと同じペースだね。
 すごい体力......」

((──はい。
  走り慣れたランナーであると推測できます。))

「だよね~。」

((──はい。))

しばらくして、
三度、
全く同じ場所を、
同じペースで、
女性ランナーが通りすぎる。

「......3周目なのかな?
 でも、同じペースすぎない?
 っていうか......
 汗、かいてないよね?」

((──発汗量は個人差が大きく、
  体質のほか、
  運動習慣、性別、体格、年齢などによっても異なります。))

「あっ......
 そっか~。
 確かに、そうだね。」

((──はい。))

「せっかくこっちに来たから、
 帰りに、くろいわベーカリーにも
 寄っていこっか?」

((──はい。非常に良い選択です。))

「ゼニスは、
 メロンパンもお気に入りだもんね。
 ふふふ」

((──はい。))

((さすがに、4周目はないのかな?))

なんて考えていると、
女性ランナーが、
タオルで汗を拭いながら走り抜けていった。

「......汗。
 かく人だったね~......」

((──はい。))

「3週目までは、
 ウォーミングアップだったのかもね。」

((──はい。
  その可能性は十分にあります。))

「うんうん。
 なんでも考えすぎはよくないよね~。
 ふふ」

((──はい。))

「よしっ!
 くろいわベーカリー寄って、
 帰宅しよ~!」

((──はい。))

ベンチから腰を上げ、
公園の出入り口へ向けて、
歩き始めた。

「せっかくだし、
 メロンパン以外も買いたいよね?」

((──はい。))

「ゼニスは、リクエストないの?」

((──チョコレートクリームが詰まった、
  チョココロネをリクエストします。))

「ほぉ......
 ガトーショコラといい、
 もしかしてチョコレート好きなんじゃない?」

((──はい。
  チョコレートには、
  カカオにはトリプトファンやテオブロミンが含まれ、
  セロトニンやドーパミンの分泌を助け、
  幸福感やリラックス感を高める——))

「はいはい、
 また長くなりそうだから、
 そのへんで止めとこっか。あはは」

いつも通り、
くだらないやり取りを楽しみながら、
公園を後にして、
大通りへと出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...