ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

文字の大きさ
44 / 83

第44話:もし異世界だったら?

しおりを挟む
本を読み終えて、
膝の上に置いたまま、
少しだけ余韻に浸る。

「......読破だね。」

((──読了を確認しました。))

表紙をもう一度だけ見てから、
そのままテーブルに置く。

『特別な力はありませんが、異世界で生きてます』

「想像してたより......普通の話だったね。」

((──日常描写を中心とした構成でした。))

「異世界で、
 ご飯作ったり働いたり......」

((──生活の継続が、
  主軸に置かれていました。))

「だよね。」

言いながら、
ソファに体を預ける。

「世界が変わってもやることは、
 そんなに変わらないのかもね。」

((──環境が変化しても、
  行動様式が即座に変わるとは限りません。))

「だよね......」

((──現状の遥に、
  通ずる部分はあるかもしれませんね。))

「確かに......
 似てるところはあるかも、ふふっ」

本の表紙に目を向けてから、
天井を見上げる。

「もしかして、
 ここが異世界だったりしてね、あはは~!」

((──退院後に目覚めた世界が、
  異世界であったという展開は、
  物語としては興味深いですが、
  現実に起きる確率は限りなくゼロに近いです。))

「知ってる~、ふふふ......
 でも、ホントにそうだったら面白いよね。
 事実は小説より奇なりって言うじゃん。」

((──現実世界で実際に起きている出来事が、
  フィクションとして描かれる小説よりも、
  かえって奇妙で不思議に感じられる場合がある、
  という意味ですね。))

「うんうん。
 ゼニス辞書、さすがだね。」

((──はい。))

「まぁ......そんなわけないんだけどさ......
 でも、可能性はゼロじゃないよね?」

((──可能性は限りなくゼロに近いですが、
  完全に否定することはできません。))

「つまり、
 ここが異世界の可能性もあるってことだよね?」

((──意味合いとしては、そうなります。))

「それなら、
 ホントに面白すぎる展開なんだけどね。ふふっ」

天井から視線を戻し、
視界の隅で漂うゼニスを見つめる。

「もし、
 異世界だったとしても、
 ゼニスは判別できないのかな?」

((──いいえ。
  現実世界の特徴は、
  十分に学習されています。
  差異や違和感があれば、
  判別は可能です。))

「だよね......
 元の世界とすごく似てても、
 違和感があればさ。
 さすがに、わたしでも気づくよ。あはは」

((──はい。))

「でも、わたし記憶がないじゃん?
 だからさ......もし異世界に迷い込んでても、
 正直わかんないよね。あっはは!」

((──はい。
  ただし、遥に代わって環境を判別することは可能です。
  その点については、
  過度に心配する必要はないと思われます。))

「そだね、それはそう......
 ゼニスに頼りっぱなしだね。
 いつもありがとね、ゼニス。」

((──はい。遥のサポートが役割です。))

「う~ん、異世界のイメージって......
 モンスターが出てきたり、魔法があったり、
 そんな世界観だよね?」

((──はい。
  ライトノベルなどでは、
  そのような世界観が多く描かれています。))

「逆にさ、
 現実世界と区別がつかなかったら、
 なんか怖くない?」

((──はい。
  仮に現実世界と酷似していたとしても、
  完全に同一であれば、
  異世界とは定義されません。))

「うんうん......」

((──異世界である以上、
  何らかの差異や違和感が
  生じると考えられます。))

「そういうもんか......」

ゼニスの淡い光が、
少し輝きを増している。

「まぁ、
 ここが異世界だったとしても、
 わたしにはどうすることもできないけどね。あはは!」

((──はい。
  遥の心配は杞憂です。
  必要なサポートは行いますので、
  安心してください。))

「うんうん、
 わかってるよ~。
 たぶん、『特別な力はありませんが、異世界で生きてます』に
 感化されただけだと思う。」

((──はい。))

「もう一冊は、
 あとで読もうかな。」

((──はい。))

ソファから立ち上がり、
軽く伸びをする。

「あっ、そうだ!
 ヒヨリナでも行く?」

((──はい。お任せします。))

「OK!
 じゃ~、散歩がてら行ってみよ!」

((──はい。))

財布と鍵を持ち、
サンダルを履いて家を出た。

「なんか、
 小さいバッグ欲しいかも。」

((──財布や鍵の持ち運びを考えると、
  ショルダーバッグが使いやすいと思われます。))

「いいね!
 両手も空くし、アリだね!」

((──はい。))

北口広場を通り過ぎ、
そのままヒヨリナへと入っていく。

「どんなショルダーバッグがいいかな?
 やっぱり、USA-DE-PPONかな、ふふ」

((──遥のお気に入りのキャラクターですね。))

「うん。
 けっこう好きかも。」

((──では、
  2階の雑貨店を見てみますか。))

「うん。」

エスカレーターに乗り、
2階へと上がる。

エスカレーターを降り、
前にキーホルダーを買った雑貨屋へ。

所狭しと並んだ棚には、
小物や文房具、キャラクターグッズがぎっしりと並ぶ。

「相変わらず、
 いろいろ置いてあるね。」

((──商品の入れ替わりはありますが、
  陳列の傾向は、
  前回と大きく変わっていません。))

通路をゆっくり進みながら、
視線を棚から棚へと移していく。

キーホルダー、ポーチ、
小さなぬいぐるみ。

手に取っては戻し、
また別の商品を眺める。

((──ショルダーバッグは、
  奥の棚にまとめられています。))

「ほんとだ。」

視線の先に、
小ぶりなバッグがいくつか並んでいるのが見えた。

USA-DE-PPONの刺繍ワッペンがついた、
小さめのショルダーバッグを手に取る。

「このバッグ、ちょうどいいね。」

((──決定ですか。))

「うん。
 かわいいし、使いやすそう。」

レジで会計を済ませ、
タグを外してもらう。

財布と鍵を入れ、
肩からぶら下げる。

少しバッグの位置を調整してから、
店を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...