ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

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第53話:ひより市調停センター

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「なんか、
 勢いで外に出ちゃったけど、
 さすがに早いよね。ふふふっ」

((──うん。
  開場までは、まだ時間があるよ。))

「だよね......
 調停センターの周辺になんかない?」

((──調停センターの周辺には、
  ショッピングモールなどの施設はないよ。))

「そっか......
 じゃあ、近くで時間潰しはできないね......」

((──うん。そうなるね。))

そんな会話をしながら歩いていると、
ひより駅の北口広場まで来ていた。

「とりあえず、
 コーヒーでも買ってこようかな。」

((──うん。
  ヒヨリナの1階に、
  コーヒーショップがあるよ。))

「あぁ~......あるね~。
 わたしは、缶コーヒーでいいかな。ふふ」

((──遥は、
  缶コーヒーが好きなんだね。))

「うん。
 なんか、手軽でしょ。」

((──遥らしいね。))

自動販売機で缶コーヒーを買い、
近くのベンチに座る。

「冷静に考えてみるとさ、
 なんで調停を楽しみにしてるんだろ?」

((──遥は、好奇心が強いからね。
  もっと知りたい、
  わくわくするといった快感が生まれて、
  脳内でドーパミンが出るタイプなんだと思うよ。))

「知りたがりではあるかもね~。あはは」

((──そうだね。
  知らないことを、
  前向きに捉えることができるのは、
  ポジティブな遥だからこそだね。))

缶コーヒーを開け、
一口飲んで、空を見上げる。

「未知って、楽しいよね......
 わたし、異世界に行っても、
 楽しめるタイプだと思う。」

((──そうだね。
  遥は、困難に立ち向かうタイプだから。
  そう考えても、不思議ではないね。))

「刺激があった方が、面白いでしょ?」

((──遥らしい考え方。))

「うん。
 これが、わたしだもんね。」

((──うん。))

「少し早いかもだけど、
 行ってみようか、調停センター。」

((──うん。行ってみようか。))

「南口の方に、
 タクシー停まってるよね?」

((──南口には、
  タクシー乗り場があるから、
  確実に数台は停まっているよ。))

「OK。南口行こ~。」

缶コーヒーを飲み干し、
ゴミ箱に缶を捨て、
南口に向かって歩き出す。

南口広場に出ると、
タクシー乗り場が見えた。

「タクシーすぐ乗れそうだね。」

((──うん。))

タクシーの運転手に会釈をして、
ドアを開けてもらい乗り込む。

「どちらまで行かれますか?」

「あっ......えっと......」

((ねぇ、場所って、
  なんて言えばいいの?))

((──ひより市調停センターと言えばいいよ。))

((ありがと。))

「えっと、
 ひより市調停センターまで、お願いします。」

「はい。
 ひより市調停センターですね。」

運転手さんがそう言うと、
タクシーは静かに走り出した。

((久しぶりに乗ったかもタクシー。))

((──歩ける範囲でしか、
  行動していなかったからね。))

((そう言えば、そうだよね。ふふ))

タクシーは、
ひより市調停センターに向けて、
静かに走り続けている。

((わたし、本当に場所を知らないもんな。))

((──うん。
  行ったことがなければ、知らないかもね。))

((確かに......
  なんで、行かなかったんだろ?))

((──興味がなかったのか、
  研究が忙しかったのか。
  あるいは、別のことに好奇心が向いていたのかもね。))

((そうなのかも......))

タクシーは減速し、
建物の前に停車した。

会計を済ませ、
運転手さんにお礼を伝えて降りる。

「建物......けっこう大きいんだね。」

((──ひより市調停センターは、
  3000人収容の会場だから、
  そこまで大きな方ではないよ。))

「そうなんだね。
 もっと大きな会場も、あるってことか。」

((──人口にもよるけれど、
  5000人や、10000人を収容できる会場を
  持つ自治体もあるよ。))

「人口比率によるんだね。」

((──うん。そうだね。))

「まだ、早いよね?
 人も、まだ集まってなさそうだし......」

((──事前にチケットの購入はできるよ。))

「買っておけば、安心だね。」

((──予約しているから、
  ギリギリでも大丈夫だけどね。))

「だよね~、あっはは」

ひより市調停センターに入り、
入口近くの受付窓口に向かった。

((受付の人にチケットくださいって言えばいいの?))

((──予約番号1101です、と伝えればいいよ。))

((なるほど。予約番号があるんだね。))

受付にいる女性に、
声をかける。

「すいません。予約番号1101です。」

「はい。
 1101番の七瀬遥さんですね。
 本人確認をお願いします。」

今では慣れた端末に、
左手の甲を当てる。

「本人確認、ありがとうございます。」

「はい。」

「それでは、こちらがチケットになります。」

会計を済ませ、
チケットを受け取る。

受付の女性にお礼を伝え、
その場を離れた。

「チケットって紙じゃないんだね。
 番号がついたプラスチックタグみたいな感じ......」

((──そうだね。
  それを、座席の挿入口に差し込めばOKだよ。))

「へぇ~、座席に差し込むタイプなんだ。」

((──紛失しないようバッグに入れておいてね。))

「あっ......うん、そうだよね。」

バッグに、
タグのようなチケットをしまう。

すでに会場の空気は、
静かに動き始めていた。
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