ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

文字の大きさ
65 / 83

第65話:勝利はしたけれど......

しおりを挟む
相変わらずドローンは、
Xの側で様子を見るようにホバリングをしている。

((さすがに立てないよね?))

((──うん、遥のタイミング、
  威力共に申し分ない一撃だったよ。
  Xが再度、立ち上がる確率は23%と推測。))

((23%も立ち上がる可能性あるんだね......
  タフすぎるでしょXさん、ふふっ))

ふと、Xの方に視線をやると
肘で体を支え起き上がろうとしていた。

((ねぇ、立ち上がりそうだね......))

((──うん。立ち上がった場合、
  ドローンが飛び上がって旋回を始めるから
  それを合図に攻撃できるようにしておいてね。))

((うん、わかった。))

Xの方に体を向け、
いつでも攻撃ができる体制を整える。

上半身を起こし片膝立ちになったXは、
膝に手をかけ立ち上がろうとしていた。

((いつでも、いけるよ。))

((──うん。合図をしたら、
  上段蹴りで止めを刺そう。))

((OK。))

Xはぶるぶる震える脚で体を支えながら、
なんとか立ち上がった。

と思ったのも束の間、
そのままお尻からリングへ倒れ込んだ。

((立ち上がりそうだったけどね......))

((──うん。遥の勝ちだね。))

リングの入口から、
職員が担架を持って入ってくる。

Xを担架に乗せると、
リングから通路へと消えて行った。

((終わりでいいんだよね?))

((──うん。))

Xの側でホバリングしていたドローンも、
いつの間にかリングの外へ飛んで行っていた。

((前代未聞だったんだよね、調停人が負けるって......))

((──うん。そうだね。))

((賭けってどうなるのかな?
  すっごい気になるよね~、ふふ))

((──前提条件が崩れているから、
  ノーコンテスト扱いになると推測できるよ。))

((そっか、想定してない出来事だからか~。))

((──うん。))

ゼニスと会話をしながら、
リングの外へ出て通路に向かって歩く。

暗い通路内に女性職員が、
出迎えるように立っていた。

調停前とは違い、
丁寧な言葉遣いで彼女が話しかけてきた。

「七瀬様、調停お疲れ様でした。
 ひより市調停センター管理官がお待ちになっております。
 お疲れのところ、申し訳ありませんが、
 私の後についてきてください。」

「あっ......わかりました。」

彼女が通路を歩き始め、
その後ろをついていった。

((言葉遣いが丁寧で怖いんですけど~、ふふっ))

((──うん。))

((さっきまで、すっごい不愛想だったのにね。))

((──遥のことを認めて、
  丁重に扱う方針に切り替えたのかもね。))

((そうなのかな。))

通路を抜けて、
待機室があった先へと進んでいくと
エレベーターホールがあった。

彼女が、
手の甲をエレベーターの端末部分にかざすとドアが開く。

「七瀬様、お乗りください。」

「はい。」

エレベーターに乗り込むと、
上方向へと動き出す。

中には階数表示はなく、
上向きの矢印が点灯しているだけだった。

((なんか、職員以外入れなそうなフロアだね。))

((──うん。))

チン、エレベーターの到着音が鳴りドアが開く。

「七瀬様、監理官室へとお入りください。」

そう言い残し、
彼女を乗せたままエレベーターのドアが閉まる。

端末部分には、
下向きの矢印が表示されていた。

「部屋まで案内してくれないのね、あっはは」

((──そうみたいだね。))

フロアは、
20畳くらいの広さで窓はなく
壁も床も白一色で異質な空間に感じた。

奥には、
黒にゴールドの装飾が施された扉がある。

「なんか、変な場所だね......
 管理官の趣味なのかな、あはは」

((──......))

黒い扉をノックすると、
音もなくスーッと開く。

「まさかの自動ドア!」

((──うん。そうだね。))

管理官室の中は、
壁一面にモニターが設置されている。

街中や調停など、
様々な場所がモニターに映し出されていた。

中央に大きなとテーブルがあり、
黒いロングコートのようなものを纏った
男性が脚を組んで座っている。

「ナナセサン、オマチシテオリマシタ。
 ドウゾ、コチラヘオカケクダサイ。」

「はい。」

促されるまま
ソファに腰を下ろす。

「七瀬サン、素晴らしい戦いデシタネ。」

「ありがとうございます。」

「オ蔭様デ、売り上げガ減少シテシマイマシタ。」

「はぁ......」

「今回ノ調停デノ嫌疑ハ、晴れテイマスヨ。
 簡単ニ言えバ無罪放免トイッタトコロデスネ。」

「はい。」

「デスガ、売り上げノ損失ハ問題デスネ。
 我々ハ、ボランティア団体デハアリマセンカラ。」

((──遥、気をつけて。   
  この男、損失の話を口実に、
  別の要求を突きつける可能性が高いよ。))

管理官は組んでいた脚を組み替え、
モニターに映る調停を指差した。

「七瀬サン、提案デス。  
 コノ損失分、貴女ノ腕デ、補填シテ頂けマセンカ?」

「......わたしの腕? また調停しろってことですか?」

「イエイエ。次ハ罰ヲ与エル側......
 ツマリ執行担当トシテ、働いテ欲しいノデス。」

「執行担当へのスカウトということですか?」

「ソウデス。ソノ通りデス。
 七瀬サン、物分かりガイイデスネ。」

「う~ん......断ったらどうなりますか?」

「断ったラデスカ?
 特ニ何モアリマセンガ、損失ニツイテの嫌疑がカカルカモシレマセンネ。」

((これって選択肢ないよね?))

((──うん。断るのは得策ではないかもしれない。))

「返答は即決ですか?」

「イエイエ。即決シナクテモ大丈夫デス。
 返答ハ、明日デモイイデスヨ。」

「わかりました。少し考えます。」

「ソレデハ、今夜ハ調停センターニ部屋ヲ用意シテイルノデ、
 ソチラデ、オ過ごしクダサイネ。」

「はい。わかりました。」

((帰れないみたいよ......))

((──うん。))

管理室のドアがスーッと開き、
案内してくれた女性職員が立っていた。

「彼女ニ、案内シテモラッテクダサイネ。」

「はい。」

ソファから立ち上がり、
管理官に軽く会釈をして
部屋を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...