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22 最小限に
しおりを挟む「これはこれは、凄い光景だ」
私を止めようとする兵士達をエメラルドが威嚇する中、塔の天辺に立つと、優に一万を超えるバルサール国の兵士達が要塞付近まで列をなしていた。
最前列の兵士たちが弓を構えており、こちらも壁に隠れて弓を構えている。
「おい、危ないぞ!」
国旗に向かって一直線に矢が飛んできたが、剣で払い除ける。
なんだなんだと兵士たちが騒ぎ出した。
その中から、一際美しい漆黒の髪の美丈夫が姿を現し、目を丸くする。
「っ、クラウディア……なのか!?」
最後に会った時よりも、ワイルドなお顔になっているアリステア様は、剣を手にしたまま呆然と私を見上げている。
「お久しぶりです、師匠。……いや、婚約者殿。加勢しに来ました」
声を失った様子のアリステア様に微笑みながら、飛んできた矢を剣で払う。
「どうしたら良いですか? 撤退させます?」
「えっ……、ちょ、ちょっと待て」
すぐに行くと告げて走り出したアリステア様に、兵士たちが戸惑いながら顔を見合わせていた。
全速力で階段を登ってきたアリステア様は、肩で息をしながら微笑む。
「大きくなったな」
「はい。ずっとお会いしたかったです」
「私もだ」
目尻を下げて優しい顔付きになる美丈夫がゆっくりと歩み寄る。
感動の再会を果たしている中、矢が飛んでくるが、風を操り、方向転換する。
放ったはずの矢が勢いよく足元に突き刺さり、敵国の兵士が悲鳴を上げる声がした。
「クラウディア……」
「なんですか?」
「いや、なんでもない……」
異変を感じ取った様子のアリステア様だったが、特になにも言わずに肩を竦めた。
「バルサール国の最前線にいる兵士たちは、ほとんどが寄せ集めの農民だ。被害を最小限にしたいと思っていた」
「お優しいお方ですね、アリステア様は。全然変わっていない」
くすりと笑うと、恥ずかしかったのかはわからないが、咳払いをしている。
「被害を最小限にして、撤退させれば良いんですよね?」
「……ああ、そうだが、どうするつもりだ?」
怪訝な顔になるアリステア様に微笑み、晴れ渡る空を見上げた。
──力を貸して。
あっという間に灰色の雲が空を覆い、しとしとと雨が降り出した。
「なっ……」
手を上げて、信じられない様子で雨に触れるアリステア様を横目に、小さく笑いながら祈る。
その瞬間、蛇口をひねったかのようにザァァーッと大雨が降り出した。
土砂降りの中、自国に戻れと言われているかのように、突風が吹き荒れる。
「一時撤退っ! 撤退だっ!」
逃げ帰る敵兵たちの背を見送り、これで被害は最小限だと頷いた。
戦いを避けたいのであれば、天候を操り、矢を放てない状況にするまで。
足場が悪くなれば、一時的にではあるが、撤退させることは容易だ。
風を操って雨を避けても良かったのだが、アリステア様の力になれたことが嬉しくて、天を見上げ、全身で大粒の雨を受けた。
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