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シュヴァリエ
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しおりを挟む席に着けば、直様ミイルズについて謝罪する父。
私とミイルズの関係は破綻しているのだが、どうしてか今も優しく接している。
きっとなにか理由があるのだろうが、リュセがミイルズと接触しないよう、今後関わるつもりはないと伝えておかなければならない。
「悪いな。前々からブレイク男爵家から、再度婚約の打診が来ていたんだ」
「まさか受けるわけじゃないだろうな? うちの愛息の方が断然いいだろ。比べるまでもない」
「ああ、それはわかっている。だが……。天使に選ばれた相手が、シュヴァリエだとの噂は、真実だったのか?」
「クククッ……ジャスティンとは昔からの仲だが、まさか親族になるとは思っていなかったぜ!」
「っ、」
旧友の言葉に絶句した父と、久しぶりに視線が交わった。
「リュセから告白したんだぜ?」
「っ…………なんの冗談だ? 笑えないぞ」
「ククッ。仲良くお手手繋いでたぜ? なあ?」
はい、と答えた私に、普段は相好を崩さない父が、気絶しそうになっていた。
私の母のスワインは、リュセ程ではないが美人の部類だった。
公爵夫人の座を望んでおり、十人以上いた恋人との関係を清算して、父と婚姻したのだ。
どれほど美しい子が産まれるのだろうと期待されていたところに、見るに耐えない容姿の私が誕生したというわけだ。
産まれた私を一目見た瞬間、奇声をあげた母は、私を抱くことはなかったそうだ。
産まれたばかりの息子を乳母に任せて、過去の恋人のもとへ行き、邸に帰ってくることはなかった。
気付けば離婚届を置いて隣国に旅立っており、それ以来、母の姿を見た者はいない。
「すぐに婚約の手続きを」
そう告げた父は、事前に用意されていた書類にサインをした。
サルース商会とは前々から取引していたため、より親交が深まることとなる。
資金援助などの必要はないため、婚約に関しての条件は特にない。
……奇跡だ。
私のような容姿の醜い者が、想い人と相思相愛になるだけでも信じられないようなことなのに。
胸にぐっと来るものがある。
私が感動している間にリュセの両親が詳しい経緯を話してくれ、私の出る幕はなかった。
ただ、何度も確認を取る父は、書類にサインをしても未だに信じきれていないようで、どこかぼんやりとしていた。
それでもリュセの両親の目を見て、ようやく夢ではないのだと受け入れたらしい。
「ブレイク男爵家には断りを入れておく」
「はい。今後はリュセのためにも、公爵邸の出入りを禁じたいと思います。それからジェイコブも。よろしいでしょうか」
私が積極的に意見したことはなかったため、父は目を見張っていた。
「ああ。婚姻後は、私は引退する。お前の好きにしたらいい。助けが必要な時は、いつでも呼んでくれてかまわない」
「ありがとうございます」
「……待ち続けた甲斐があったな」
微笑を浮かべた父は、ジェイコブではなく、血の繋がった私に家督を継いでほしかったようだ。
だから唯一望みのあったミイルズのことも、無下には出来なかったのか。
多忙な父とは、仕事以外で会話をすることはなかったため、期待されているとは露ほども思っていなかった。
リュセと想いを通わせていなければ、その事実にも気付かずに、見捨てられたと思っていただろう。
「リュセさんには感謝してもしきれないな。ただ、やはり今でも信じられない」
「…………明日、リュセとダンスの練習をする約束をしています。一緒に行きますか?」
リュセの卒業式でパートナーを務めることを話せば、再度気を失いそうになる父。
婚約にはリュセのサインも必要なので、明日は父と共に会いに行くことに決まった。
盛大な式にしようと盛り上がる三人。
気が早いと思うのだが、私も出来ることなら一日でも早くリュセと結ばれたいと願っていた。
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