婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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シュヴァリエ

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 ──諦めよう。

 己のことをよく理解している私は、どんな些細なことでも粘ることはなかった。
 醜い容姿のせいで卑屈になり、人生において様々なことを諦めてきた。
 そうすることで、必要以上に傷つかないよう、自身を守り続けてきた。

 そんな弱い心を持つ私が、愛する人の唯一の伴侶になりたいと、大それたことを願ってもいいのだろうか……。

 私がリュセだけを愛すると語ったところで、誰もリュセを諦めることはなかっただろう。
 だが、影響力のあるリュセなら話は別だ。

 多くの人の目があるところで、リュセが生涯重婚することはないと宣言したことは、皆に衝撃を与えることとなった。

 リュセは聡い子だ。
 騎士団で活躍する姿が見たくて会いに来たと話していたが、それも本心ではあると思うが、リュセの行動のすべてが私のためだったに違いない。

 そのことに気付いた時……。
 私の中でリュセを愛おしいと想う気持ちが、これ以上ないほど膨れ上がっていた。



 騒ぎを起こした私たちがいては収拾がつかないため、リュセと共に馬車に乗り込む。
 ハラハラしたり、喜びが爆発したりと、いろんな感情を一気に味った。
 そんなまたとない経験をさせてくれるリュセと共にいると、感動することばかりだ。
 

 ──そして今は、もっと胸が熱くなっていた。

 
「一度婚約を解消しているのに、再度婚約できるだなんて法律は変えるべきです!」

 そう言って、私に隙間なくくっついているリュセは、むうっと頬を膨らませる。
 家族や私の前でしか見せない愛らしい仕草に、胸を撃ち抜かれた。
 
 どうやらリュセは、ミイルズが私を好いており、再度私に求婚してくる可能性があるかもしれないと、ありえない勘違いをしているようだった。

 愛らしい以外の言葉が見つからない私は、リュセに骨抜きにされている。
 それでも冷静を装い、膨らむ頬を撫でた。

「ミラジュー王国の法律は、子を産める者に有利なものばかりだ。だが、誰も意義を唱えたことはないわけだから、変わることはないだろう。私も不思議に思ったことはないが、リュセからしたらおかしなことなのか?」
「ううっ。おかしいというか……。だって、もしミイルズさんが心を入れ替えて突撃してきたら……その時、モブに勝算はあるのかな……?」

 もごもごと話しているリュセは、顔を曇らせた。
 非の打ち所がないのに、驕ることのない性格がとても好ましいと思うのは私だけではないだろう。

 リュセが不安に思うのは、私の口数が少ないことが原因かもしれない。
 本音を語ることは気恥ずかしいのだが、リュセを大切に想う気持ちは伝えていこう。
 リュセならきっと受け止めてくれるはずだ。

 そう思い、俯くリュセの顔を覗き込んだ私は、魅力的な光を放つ黒い瞳を見つめた。

「あの男が心を入れ替えたところで、かつて私に吐き捨てた言葉が消えるわけじゃない……。それに、昔からあの男のことなどどうだっていいんだ」

 力なく眉を下げたリュセに、私は微笑みかける。

「三年前……。私のもとに舞い降りたあの瞬間から、私はリュセのことしか考えていない」
「っ、」
「僅かな時間でも、リュセの好きな紅茶を飲みながら、ただまったりと過ごすだけでも幸せだ。婚姻後の話が出来ることも、その時を心待ちにしているリュセの笑顔を見ている時も……。リュセが隣にいてくれるだけで、幸せなんだ。私を、これ以上ないほど幸せな気持ちにさせてくれるリュセのことが、愛おしくて仕方がない」

 想いが届くようにゆっくりと言葉を紡いだが、リュセは固まっていた。
 本心を語れば安心してくれるだろうと思ったのだが、暫くして「っ、なんてこった」と呟いた。
 予想外の返答に驚いたものの、両手で口元を押さえるリュセは、恥ずかしそうに強く目を瞑る。

 どうかしたのかと敢えて問いかける私は、真っ赤な顔で首を横に振る愛おしい婚約者を抱きしめて、幸福感を噛み締める。
 そしてリュセの笑顔を守るべく、不安要素は排除することを決意した。

 







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