期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん

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 その後、ミゲルは今まで会話をすることもなかった使用人からも祝いの言葉をかけられていた。
 そして日が暮れた後に、ジェラルドと結婚式を挙げる流れとなり、ミゲルは気が狂いそうだった。

 拒否したくとも、ジェラルドに弱みを握られているミゲルは、逃げることができない――。

 戦場の鬼神を最も恐れていたミゲルだが、今は優しい人だとすら思えていた。
 なにせクレメントは、ミゲルに『良き弟であり続けろ』と話している。
 つまり、ミゲルの過去の愚かな行為をフラヴィオに伝える気はないのだ。

 しかし、ジェラルドは違う。

(……コイツもきっと、兄様の熱狂的な信者だ)

 現在進行形で、最愛の兄の信者が増え続けている現状に、ミゲルは頭を抱えたくなっていた――。


 かつてクレメントとロミオが最強夫夫と呼ばれていたが、今は違う。
 戦場では活躍するが、その他の行事には一切顔を出さなかったクレメントが、今では当たり前のように参加しているのだ。
 影響力のあるクレメントが行動を起こせば、自ずと人はついてくる。
 統率力に優れているクレメントが本領を発揮すれば、社交界という戦場でも大活躍である。

 それもすべては、愛する後妻の為――。

 クレメントも否定することはないため、フラヴィオこそがディーオ王国の最強であると、一目置かれる存在となっていた。

 そしてフラヴィオ自身も、皆に愛されている。
 気取らず自然体なフラヴィオは、一緒にいて居心地よく、関わる人は皆、穏やかな気持ちになる。
 貴族やジラルディ領民はもちろん、国民の間でも支持を得ているため、ジェラルドがフラヴィオの信者であってもおかしくはなかった――。


 地獄の結婚式まで刻々と時間が迫る中、他の三人は和やかに会話を楽しんでいる。
 苛つくミゲルが小刻みに足を揺らすと、隣に座るジェラルドに鼻で笑われた。
 気付けば、ミゲルよりも上手な男は、あっという間にフラヴィオとの仲を深めていた――。

「実は俺、フラヴィオ様の絵葉書を……五千枚ほど持っています」

「っ、そんなに!? 五枚の間違いでは……?」

 たまらずフラヴィオが聞き直すも、笑顔のジェラルドは首を横に振る。

 誰よりもフラヴィオを愛している、と自負するミゲルがドン引きしている中、部屋の隅に控える使用人たちは『同志』だと思っていた――。

「今の俺は平民ですが、クレメント様には昔からお世話になっていたのです。ですから、少しでもジラルディ公爵領のためになればと――」

「っ、そうだったのか……」

 領民想いのフラヴィオの心を掴みにかかるジェラルドが、照れたように微笑んだ。

(閣下を敬服しつつ、兄様に気に入られようとしているのが見え見えだっ!)

 ジェラルドは要注意人物だと、ミゲルの直感が告げている。

(この変態医師から兄様を守るためには、僕がコイツの伴侶になるしかないのか……っ)


 フラヴィオを守る人間からは、最も厄介な人物であると判断されていることをわかっていないミゲルは、ひとり伴侶となる男を危険視していた――。


「…………どうせ私の姿は、切り刻んで燃やしたのだろう?」

「――ククッ。俺が恩人に対して、そんな無礼なことをするはずがないではありませんか」

 不機嫌なクレメントに対して、心外だと肩を竦めたジェラルドの瞳は、感動している様子のフラヴィオを熱心に見つめていた。

 ミゲルといる時とは違い、締まりのない顔には『美しく、可愛らしい人だ』と書いてある。
 もちろんミゲルも同じことを思っているため、ジェラルドの気持ちがわかったまでだ。

(……コイツは、僕と同類だ……)

 フラヴィオの前ではいい子ぶるジェラルドを見ているだけで、ミゲルは吐き気がしていた――。







 煌びやかな衣装に着替えたミゲルだが、辺りが暗くなるにつれて、ミゲルの気分もどん底まで落ち込んでいる。

「ミゲル……。遠く離れても、私はミゲルの幸せを祈っているよ」

 涙ぐむフラヴィオに優しく抱きしめられたミゲルは、ちっとも喜べなかった。
 ミゲルの幸せは、フラヴィオがいなければ成り立たない。
 それでもミゲルは愛する人の華奢な体を抱きしめて、すんと甘く爽やかな匂いを嗅いだ。

「さあ、いっておいで」

「…………はい、兄様。でも、もうちょっと――」

 甘えるミゲルだが、ふたり分の黒い双眸から突き刺さるような視線を背に受け、渋々体を離していた――。



 投げやりになっているミゲルは、兄と同じように青い花畑の中心でキャンドルに囲まれている。
 誰もが羨む幻想的な場だが、今目の前にいるのはミゲルの最愛の兄ではない。

「これからよろしくな? ミゲルくん」

「…………ッ、」


 ファーストキスを大切に取っていたミゲルは、愛する人が見守る中、悪魔のような男に噛みつかれ、地獄の結婚式を終えていた――。





















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