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19 性格が良すぎる天使 ユーリ
しおりを挟む俺がヴィヴィアンを好きになるまでに、そう時間はかからなかった。
元々一目惚れのようなものだし、なにせ性格がピュアすぎるんだ。
よくヴィヴィアンが熱っぽくなるときに、俺の手を額に当ててあげるのだが、そのときに俺の掌にある血豆に触れて「良い手だね」って褒めるんだ。
「ヴィーの方がもちもちだし綺麗だよ。すごく羨ましい」
「それは何の努力もしていないから。ユーリの手は、努力ができる人の手だよ。僕は……大好きっ」
きゅるんとした瞳で見つめられて、こんな可愛いことを言われたら、もうたまらないだろう。
歓喜の雄叫びを上げそうになるのをよく堪えたと、自分を褒めたい。
そして、君は本当に六歳か? やはり本物の天使なんだな? とは言わずに飲み込んだ。
俺の努力を、唯一認めてくれた天使様だ。
それからふと気付いたが、朗読会の時のお菓子がパウンドケーキばかりが出るようになった。
甘いものが大好きな俺に、父は将来騎士になるのだから甘い食べ物は必要ない、むしろ無駄な脂肪が増えるから、と家では禁止されている。
だが腹の立つことに、弟は普通に食べている。
苛立つ俺に見かねた母が、こっそりパウンドケーキを焼いてくれて、その気持ちが嬉しくて今でも大好物だ。
もしかしたら、ヴィヴィアンは俺がパウンドケーキが好きだと気づいて、使用人にお願いしてくれたのかもしれない。
もしそうなら嬉しいと、少しだけ泣き言を言ってみる。
「父親に、私だけ甘い物を禁止されているんだ。弟は食べて良いのに、騎士になる予定の私には厳しい」
「そうなんだ……。本当は食べちゃダメなの?」
「いや、他の騎士達は普通に食べてるし、適度な量なら大丈夫だよ」
危ない、せっかく用意してくれたであろうヴィヴィアンを悲しませてしまいそうになった。
少し申し訳なさそうにしていたヴィヴィアンは、俺の頬を小さなふわふわの両手で包み込んだ。
「お父様がユーリに厳しいなら、僕がユーリを甘やかすね」
にっこりと微笑み、可愛いえくぼを見せてくれたヴィヴィアンに、そのまま口付けそうになった。
涙腺が崩壊しそうなくらい感動した。
もう好き! 本当に好き! 大好きだ!
そして、俺の喉を心配してくれる優しい天使は、一緒に本を読むと提案してくれた。
「じゃあ、台詞のところをお願いしようかな」
「うん! 王子様の名前を……ユーリにしたい」
「っ……それはいいな。じゃあ、お姫様はヴィーにしよう」
立場上、王子はヴィヴィアンなのに、俺を王子様の名前で呼ぶ天使は最高に可愛すぎる。
恥ずかしがりながらも、こういう可愛いことを言うヴィヴィアンに、もうメロメロだ。
どうしよう、キスしたい……。
うちの両親は、良い歳して所構わずキスしまくる恥ずかしい二人なんだが、今は二人の気持ちがよーくわかる。
家に帰って本を読みながらぼーっとしていると、母が俺の隣に座ってにっこりと笑う。
ヴィヴィアンにキスしたい。
でも、ヴィヴィアンは性的な悪戯をされていたから、そういうことはしたくないと思う。
そのことを素直に相談してみると、母は笑顔で「キスしたら良いじゃない」と答える。
「でもっ、」
「ヴィヴィアン殿下のことが好きなのね?」
「っ…………はい。おかしいですよね、弟より歳下の子を好きだなんて。私もヴィーに悪戯した変態野郎と同じ……」
「あら。それは違うわ? 恋をするのに年齢なんて関係ないのよ?」
私だって、と幼い頃に好きだった従兄弟に「子供だからいいでしょ?」と言って、たくさんキスをしていたと暴露し始める。
「それに、話を聞いている限りでは、ヴィヴィアン殿下もユーリのことが気になっていると思うわ」
「……そうでしょうか」
「それを決定付けさせるためにも、キスは必要ね。気になる相手にキスされたら、ヴィヴィアン殿下も貴方にメロメロになるわよ?」
「っ、そんな理由でしたくない、です。これ以上、ヴィーを、傷つけたくない……」
「ふふ。融通が利かないというか、本当に真面目なんだから。……傷ついたヴィヴィアン殿下を、貴方の優しいキスで癒してあげるの」
俯いて考え込んでいた俺は、その言葉にハッとして顔を上げた。
「好きだよ、愛してるよ、って想いを込めて、優しく口付けるの。ほんの一瞬、触れるだけよ? そして、優しく抱きしめてあげて? 触れ合うことは怖いことじゃない、幸せな気持ちになることを、貴方が教えてあげるのよ」
心を込めて優しく触れ合うことで、ヴィヴィアンを幸せな気持ちにしてあげる。
正直言って驚いた。
いつも俺は、なるべくヴィヴィアンに触らないように気を配ってばかりいた。
でも母の言葉で、それは間違いだったのかもしれないと気付かされた。
母のことは普通に好きだったが、より尊敬した俺は心から感謝してお礼を告げた。
そして湯浴みを終えた父が戻ってくると、すぐに抱きついて、俺に見せつけるようにキスをする。
嫌がらせかよ、と思ったが、普段は厳しい表情の父がすごく嬉しそうに目を細めていたことに気づいたのだった。
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