100回目の口付けを

ぽんちゃん

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その後

33 お友達と仲直り

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 僕は今、ユーリと共に、ユーリの学園で出来たお友達の元に向かっている。


 誤解が解けてユーリと両思いになり、この五年の間に何があったのかを話してくれた。

 朗読会を始めたときは、僕に読書が好きだと話してくれていたユーリは、実は本を読んだことがなかったらしい。

 出歩くことが怖かった僕に気を遣ってくれていたのだ。

 そして、学友達に朗読会でのお勧めの本を借りていたこと。

 僕に嫌いだと言われた日から、優しくしてくれた彼らを無視し続けたこと。

 騎士団でも一言も会話せずに、稽古中にも「助けて」と叫ぶ仲間達を情け容赦なくただぶちのめしていたこと。

 そのせいで、僕のために頑張ってきたユーリの評判はガタ落ちだということも。

 「ヴィーと両思いになれて死ぬほど嬉しい。けど、俺のせいでヴィーまで周囲から嫌な目を向けられるかもしれない。でも、俺はヴィーと片時も離れたくない。すごく自分勝手だろ?」
 「そんなことないよ! ユーリが僕のために頑張ってくれていたことが知れて嬉しい。だから、みんなにごめんなさいしに行こうよ! 僕も一緒に謝る。元々は僕のせいだもん」
 
 ね? と項垂れるユーリの手を握ると、黄金色の瞳をキラキラとさせた美青年は、僕に襲いかかる。

 「ヴィーっ!」
 「あっ、ちょ、ユーリっ! んんっ、」

 話し合い中も、ユーリはこうして僕にちゅっちゅしまくるんだ。

 さっきから全然話が進まない。
 
 困っているフリをしながらも、めちゃくちゃ嬉しい僕は、もうキスの回数を数えることをやめた。
 
 だって数えても意味がないくらい、たくさんキスをしてくれるから。

 朗読会をしなくても、こうしてユーリと触れ合えることが出来て、幸せすぎてたまらない。



 そして、ユーリに本を貸してくれていた友人の中で、まずはリーダー格のユメルさんに会いに行くことになった。

 文官になったユメルさんは、ユーリに無視をされても、机の中にお勧めの本を入れてくれたりと、卒業まで気遣ってくれていたそうだ。

 本好きなら僕とも気が合いそうだ、と話すと、あからさまにユーリの機嫌が悪くなる。

 僕は、ユーリの友達だから仲良くしたいのに。
 
 会いに行きたくない、と拗ねているユーリは、これから謝罪に行く人とは思えないほどの仏頂面だ。

 ユーリの新たな一面が見れて嬉しい僕は、僕の腰に手を回してぴったりと寄り添うユーリがすごく可愛くてたまらない。

 そしてユメルさんの休憩時間を待つ間も、行き交う人々に鋭い視線を送り続けるユーリ。

 そんな怖い顔してたら誤解されちゃうよ、とユーリの顔を見ていると、僕の視線に気づいたのか、目元を和らげてにっこりと笑顔を見せてくれる。

 そんな時、緑色の長い髪に眼鏡をかけた美青年が、ユーリを前にして目を丸くしていた。

 「っ、グレンジャー様……」
 「久しぶり。今まで無視してごめん。ずっと謝りたくて……」
 「いえ、気にしていませんよ。私達は、お話ししていなくても、グレンジャー様の友人ですから」

 大きな目を細めて、穏やかに笑うユメルさんに、ユーリはすごく驚いていた。

 そして僕のことをチラチラと見て、白い頬を染めている。

 そのことがユーリの気に触ったのか、僕を抱きしめて、顔を見せないように胸元に閉じ込められる。

 「ユメル。ヴィーを見るな」
 「っ、ユーリ!」
 「もしかして……、ヴィヴィアン殿下……」
 「そうだ、俺の恋人兼婚約者。両思いだ。十年前からな! ヴィーの初恋の相手は俺だ!」
 
 恥ずかしいことをペラペラと話しだしたユーリは、僕の髪にキスをしまくる。

 「や、やめてよ、ユーリ。恥ずかしいょ……」
 「いや、やめない。ユメルがいやらしい目でヴィーを見ていた」
 「っ、そんなわけないでしょ?! 謝罪に来たのにおかしなこと言わないで?!」

 無理矢理ユーリから離れた僕は、ユメルさんにぺこぺこと謝罪する。

 「僕の勘違いのせいで、ユーリを傷つけてしまって。さらにはご友人方にまで悲しい思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
 「そんなっ! 頭を上げてくださいっ!」
 「ヴィーは素直で可愛い」

 誠心誠意謝罪する僕を後ろから抱きしめるユーリは、すりすりと頬擦りをしている。

 二人きりならまだしも、人前でされるのは恥ずかしすぎて、僕は顔から火が出そうだ。

 「っ、なんて可愛らしいお方……っ」
 「だから見るな!」
 「ふふふ、グレンジャー様が夢中になるのも頷けます。あの頃は、恋愛小説ばかり読んでおられたので、もしかして。とは思っていましたが……。まさかお相手がヴィヴィアン殿下だったとは。萌えっ」
 「っ……気づいていたのか」
 「逆に誤魔化せると思っていたのはグレンジャー様お一人だけでは? ファンタジーをよく読むと言いながら、貸してもあらすじと結末しか知りませんでしたよね? それなのに恋愛小説の方は、丸暗記している勢いでしたから」

 くすくすと笑うユメルさんに、ユーリは罰の悪い顔をしてそっぽを向いていた。

 ユーリのことをよく見てくれていたんだな、と思うと、ユメルさんにすごく親近感が湧いた。

 「僕も本が大好きです。特に恋愛小説が。よかったら僕ともお友達になってもらえませんか?」
 「えぇっ?! 私なんかがお友達だなんて……宜しいのですか?」
 「はい! ユーリと仲良くしてくださってありがとうございます。これからは僕もお仲間に入れてもらえたら嬉しいです」

 そう言ってにっこり微笑むと、ユメルさんが「はうっ」と変な声を出して、壁にへばりついて何度も頭をぶつけていた。

 ユーリのお友達はすごく変わった人だった。

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