尽くすことに疲れた結果

ぽんちゃん

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 ずっと憧れていた魔法列車の到着を、今か今かと待っている僕の肩に、ふわりと雪が落ちて来る。
 通り過ぎて行く人は見知らぬ者ばかりだけど、僕の隣には恋人のエドワードがいる。
 だから、全然寂しくなんてないんだ。


 「降ってきたな……。ノエル、寒くないか?」
 「うんっ。これくらいへっちゃらだよ」
 

 ついさっき、恋人から上等な外套をプレゼントしてもらった僕は、にっこりと微笑んだ。
 僕が四年前まで住んでいた田舎町に比べたら、王都は比較的暖かい。
 それでも風邪をひかないようにと、僕に帽子を被せてマフラーを巻き付けたエドワードは、手袋も用意してくれていたみたいだ。

 あと小一時間で、僕は十九歳の誕生日を迎える。

 最近は仕事が忙しくて、なかなかエドワードと顔を合わせることが出来なかったけど、最高の誕生日になるはずだ。
 そんなことを考えていると、巨大な真っ黒の塊が駅に到着した。
 間近で見た魔法列車に興奮を抑えきれない僕は、凛とした恋人に抱きついた。

 年に一度、二人で出かける旅行が楽しみで、魔法列車に憧れていた僕のために、半年も前から特等席のチケットを購入してくれていたエドワード。
 でも今は、目の前の魔法列車より、僕が過去にプレゼントした、実用的な時計をチラチラと確認していた。
 

 「エディー、どうかした? 忘れ物?」
 「ん? いや……」


 心ここにあらずの様子に、僕はエドワードの顔を覗き込む。
 惚れ惚れするような笑みを浮かべているけど、海のような綺麗な瞳はゆらゆらと揺れている。
 なにか隠し事をしている時の顔だ。
 なんでも話してと告げると、エドワードはおずおずと口を開いた。


 「実は……。今日、後援者になってくれそうな人が大勢集まるパーティーがあって……。先輩に誘われてたんだけど、俺はノエルと一緒にいたいから断ったんだ」
 「そうだったんだ……」
 「ああ。でも、さっき先輩から連絡があって、俺に会いたいって言ってくれてる人がいるらしくて……」


 そこまで言って肩を竦めたエドワードは、僕の気分を害していないかと、顔色を窺っているように見えた。
 エドワードが僕と一緒にいても気になる相手──つまり、かなりのお金持ちなのだと察した僕は、頬を膨らませて腕組みをした。


 「ごめん、ノエルがずっと楽しみにしていたのに……。今日だけはこんな話するつもりじゃ──」
 「なんでそんな大切なことを早く言わないの?」 
 「…………えっ?」


 素っ頓狂な声を出したエドワードは、目を白黒とさせている。
 そんな可愛らしい反応をする恋人にくすりと笑った僕は、いつものように言葉を紡いだ。


 「今すぐ行かないと!」


 
 




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