17 / 137
17 エドワード
しおりを挟む恋人と幸せな未来を語り合った翌日。
ヴァイオレット様の豪邸に招かれた俺は、開いた口が塞がらなかった。
「ここは、城か……?」
彼女の親しい友人として紹介され、使用人たちから恭しい態度を取られる。
まるでこの城の主人のような対応に、戸惑いを隠せない。
俺を応援すると言ってくれた彼女は、俺が快適に過ごせるようにと部屋を用意してくださっていた。
いつでも遊びに来ていいと言ってもらったのだが、正直なところ寛げない。
俺とノエルが王都で借りている家は、築年数が古くて、冬には絶え間なく隙間風が流れ込む。
ノエルが掃除をしてくれているから清潔に保たれてはいるが、居心地の良い二人の愛の巣は、ヴァイオレット様からしてみたら、犬小屋だと思われそうだ……。
目にするもの全てに衝撃を受けていると、俺よりも美しい顔立ちの使用人たちが部屋を訪れる。
見目麗しい男性の使用人たちがずらりと整列し、今日から俺の世話をすると説明を受けた。
「エドワード様、お召し物です」
「………は、はぁ。ありがとうございます」
これからパーティーにでも行くのかと思ってしまうような高価な衣装は、部屋着らしい。
しかも、当たり前のように服を脱がせてくる。
淡々と仕事をしている彼らにされるがままの俺は、着せ替え人形と化していた。
田舎者の俺が知らない世界だ……。
一応お礼を告げたのだが、感謝の言葉は不要だと言われ、逆に叱咤されるからやめて欲しいとまで言われてしまった。
なにをするにも近くに人の気配がして、俺のためだけに働いてくれている。
驚く程の好待遇は不快ではないが、気を遣う。
ノエルの誕生日のやり直しをした日を思い出す俺は、やはり小さな家でも、恋人と二人でくっついて過ごす方が幸せだと思っていた。
◆
その後は、ヴァイオレット様が開いたお茶会に参加し、顔を覚えてもらう。
テーブルには宝石のような菓子が並べられ、華やかな女性陣に囲まれる。
慣れないことに緊張してしまうが、俺はこのチャンスを逃すような馬鹿ではない。
話し上手な方ばかりだったおかげもあって、会話は弾んだように思う。
「私たちも貴方を応援するわ」
「っ、あ、ありがとうございますっ!!」
「ふふふっ。可愛らしいわね?」
思わず声を張り上げてしまい、参加している女性陣に微笑ましい顔をされてしまった。
咳払いをして誤魔化していると、ヴァイオレット様が席を立つ。
なにかあったのかと俺も席を立ったのだが、楽しみなさいと耳打ちをされた。
お手洗いだったことを察して、静かに腰を下ろすと、顔を見合わせた女性陣がコロコロと笑い始めた。
馬鹿にした様子ではなく、可愛らしいと子供扱いされている。
「誰かさんとは大違いだわ?」
「あの恩知らずは、今頃なにをしているのかしらね?」
「……恩知らず、ですか?」
「ええ。貴方は知らなくてもいいのよ? ヴァイオレット様についていてあげてね。ああ見えて、あのお方は、寂しがりやなのよ」
くれぐれもよろしく頼むと言われて、俺の方が世話になっているのだがと思いつつ、笑顔で頷いた。
185
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる