尽くすことに疲れた結果

ぽんちゃん

文字の大きさ
17 / 137

17 エドワード

しおりを挟む

 恋人と幸せな未来を語り合った翌日。
 ヴァイオレット様の豪邸に招かれた俺は、開いた口が塞がらなかった。


 「ここは、城か……?」
 

 彼女の親しい友人として紹介され、使用人たちから恭しい態度を取られる。
 まるでこの城の主人のような対応に、戸惑いを隠せない。

 俺を応援すると言ってくれた彼女は、俺が快適に過ごせるようにと部屋を用意してくださっていた。
 いつでも遊びに来ていいと言ってもらったのだが、正直なところ寛げない。

 俺とノエルが王都で借りている家は、築年数が古くて、冬には絶え間なく隙間風が流れ込む。
 ノエルが掃除をしてくれているから清潔に保たれてはいるが、居心地の良い二人の愛の巣は、ヴァイオレット様からしてみたら、犬小屋だと思われそうだ……。

 目にするもの全てに衝撃を受けていると、俺よりも美しい顔立ちの使用人たちが部屋を訪れる。
 見目麗しい男性の使用人たちがずらりと整列し、今日から俺の世話をすると説明を受けた。


 「エドワード様、お召し物です」
 「………は、はぁ。ありがとうございます」


 これからパーティーにでも行くのかと思ってしまうような高価な衣装は、部屋着らしい。
 しかも、当たり前のように服を脱がせてくる。
 淡々と仕事をしている彼らにされるがままの俺は、着せ替え人形と化していた。
 田舎者の俺が知らない世界だ……。

 一応お礼を告げたのだが、感謝の言葉は不要だと言われ、逆に叱咤されるからやめて欲しいとまで言われてしまった。
 なにをするにも近くに人の気配がして、俺のためだけに働いてくれている。
 驚く程の好待遇は不快ではないが、気を遣う。
 


 ノエルの誕生日のやり直しをした日を思い出す俺は、やはり小さな家でも、恋人と二人でくっついて過ごす方が幸せだと思っていた。







 その後は、ヴァイオレット様が開いたお茶会に参加し、顔を覚えてもらう。
 テーブルには宝石のような菓子が並べられ、華やかな女性陣に囲まれる。
 慣れないことに緊張してしまうが、俺はこのチャンスを逃すような馬鹿ではない。
 話し上手な方ばかりだったおかげもあって、会話は弾んだように思う。


 「私たちも貴方を応援するわ」
 「っ、あ、ありがとうございますっ!!」
 「ふふふっ。可愛らしいわね?」

 
 思わず声を張り上げてしまい、参加している女性陣に微笑ましい顔をされてしまった。
 咳払いをして誤魔化していると、ヴァイオレット様が席を立つ。
 なにかあったのかと俺も席を立ったのだが、楽しみなさいと耳打ちをされた。
 お手洗いだったことを察して、静かに腰を下ろすと、顔を見合わせた女性陣がコロコロと笑い始めた。
 馬鹿にした様子ではなく、可愛らしいと子供扱いされている。
 

 「誰かさんとは大違いだわ?」
 「あの恩知らずは、今頃なにをしているのかしらね?」
 「……恩知らず、ですか?」
 「ええ。貴方は知らなくてもいいのよ? ヴァイオレット様についていてあげてね。ああ見えて、あのお方は、寂しがりやなのよ」
 

 くれぐれもよろしく頼むと言われて、俺の方が世話になっているのだがと思いつつ、笑顔で頷いた。











しおりを挟む
感想 190

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

ネガティブなΩがスパダリαから逃げる

ミカン
BL
オメガバース

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、 ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。 だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。 今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

処理中です...