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47 たった一度の過ち
ロミオが、私との約束を破ったあの日――。
ロミオとブリトニーの間に、いったい何があったのか。
ずっと目を背けてきたその事実を、ついに知る日が訪れた。
ペレアス様との婚約を拒みたかったブリトニーが、ロミオと一線を越えた。
そこに愛や恋など、ひとかけらもなかった。
そしてロミオは、ただ彼女が不幸になってほしくなくて、協力したにすぎなかったのだ。
――『たった一度の過ち』。
ロミオが深く後悔していることは、言葉にしなくても伝わってきた。
けれど、その事実を知った今でも、私はロミオと未来を歩まなくてよかったと思った。
一度失った信頼を回復するには、とてつもない歳月がかかる。
もしかしたら、死ぬまで許せないかもしれない。
そんな生活の中で、私はロミオと本当に幸せになれるだろうか――。
いいえ、きっとなれなかった。
でも、胸の奥で小さな声が囁く。
「私はロミオの幸せを願いながら、自分が傷つくことを恐れて、最初から諦めていたのかもしれない……」
ロミオとブリトニーは結ばれる運命。
だから選ばれなくても仕方がない――。
そうやって、無意識のうちに予防線を張っていたのだと思う。
もっと彼に、私の気持ちを伝えていればよかった。
「ブリトニーを見ないで」
「彼女と会わないで」
――その一言が言えていたら、結果は変わっていたのかしら……?
何度も何度も考えた。
けれど、どんな選択をしても、いずれロミオはブリトニーと向き合う日が来たはずだ。
その時、きっとロミオは彼女を助けただろう。
だってロミオは、根っから優しい人だから……。
――どんなに違う道を選んでも、私たちは結ばれない運命だったのだ。
「なにを考えてるの? ルキナ」
そっと背後から包み込む腕の感触。
ロミオと再会したあの日以来、少しでもぼんやりしていると、こうしてジークレイン様は私に甘えてくれるようになった。
そのことが嬉しくもあり、どこか不安でもあった。
優しいジークレイン様は、いつだって私の気持ちを優先してくれる。
だからこそ、もし私が迷いを見せれば、きっとこう言ってしまうに違いない。
――「ロミオとやり直したいなら、身を引くよ」と。
曖昧な態度を取れば、相手を不安にさせてしまう。
そのことを、私は痛いほど知っている。
だからこそ、頼もしい腕をぎゅっと掴んで、しっかりと伝えた。
「ジーク様、大好きです」
その一言に、ジークレイン様の体がぴくりと反応する。
今までだって「大好き」と伝えてきた。
けれど、それは兄妹のような愛情だった。
でも今の言葉は、ひとりの女性として、彼を愛しているという告白だった。
その違いを、彼も感じ取ったのだろう。
しばらくの沈黙ののち、耳元で掠れた声が囁かれる。
「……私も、好きだ」
そう言った瞬間、ジークレイン様の腕の力がぎゅっと強くなった。
それきり動かなくなって、まるで息まで詰めてしまったかのように、背後から私を抱きしめ続けている。
(もしかして、自分の言葉に照れて固まってしまったのかしら?)
「ジーク様? こっちを見て?」
「…………嫌だ」
肩に顔を埋めたまま、じっと身を硬くして動けないジークレイン様。
照れくさそうにする仕草に、思わず胸がきゅんとした。
(わっ、どうしよう。かわいい……っ)
いつも凛々しいジークレイン様の不意打ちの可愛らしさに、胸を撃ち抜かれる。
こんな穏やかな日々が、いつまでも続きますように――。
私は愛する人の腕の中で、噛みしめるように幸せを感じていた。
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