初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように

ぽんちゃん

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46 答えを求めて 《ロミオside》




――もう二度と、僕やルキナ様たちとは関わらない。


 そう明記した誓約書に署名させ、僕はブリトニーとの関係に終止符を打った。

 あのとき彼女を受け入れたせいで、僕は多くのものを失った。
 信頼も、立場も、大切な人の心も……。

 もちろん、自分にも非があったとわかっている。
 ただ、ブリトニーのせいだと恨み続ける気持ちが消えなかったのも事実だ。

 ――けれど今は、もう違う。

 恨みを抱き続ける自分こそ、何よりも醜い存在だったと気づいたのだ。

 僕は今回の働きによって、ルキナ様より新たな領地を任されることになった。
 リヴィエール公爵領とネグレア領――今後エデン領と呼ばれるそのふたつを支えるため、多忙となるジークレイン様の代わりに、子爵領の管理を仰せつかったのだ。

 子爵領の管理という大役。
 それは、過ちを悔い改めた僕への最後の機会なのだと思った。


「あなたなら、きっと領民に愛される領主になれるわ」


 そう微笑むルキナ様の言葉に、胸の奥が熱くなる。


「ありがとうございます、ルキナ様。精一杯、務めさせていただきます」


 最後に、彼女と固く握手を交わした。
 その温もりにすがりたい衝動に駆られたけれど、僕は堪えた。

 本当は、この手を引いて、彼女を抱きしめてしまいたかった。

 けれどそれは、僕のわがままに過ぎない。

 過去を語ったところで、彼女にとってはただ傷を抉るだけだ。
 今さら想いを告げても、困らせるだけだろう。

 それでも、どうしても謝りたい気持ちが溢れてしまった。


「……もしも、あの時に戻れるなら。僕は決して、あなたを傷つけるようなことはしない」


 吐き出した瞬間、空気が凍りついたように感じた。

 溢れた言葉は、悔恨の吐露にすぎない。
 けれどルキナ様は、すぐには言葉を返さず、ただ静かに僕を見つめていた。
 その瞳には、責める色も、嘲る影もない。

 長い沈黙の末、ようやく彼女の唇が開かれる。


「もう過去は変えられないわ。でも、未来なら――いくらでも変えられる」

「っ!!」


 その優しい声が、胸の奥を深く貫いた。

 過ちを重ねた僕のことを、彼女は許そうとしてくれている。

(いや、もしかしたら、もう許してくれているのかもしれない……)

 熱い雫が、僕の頬を伝った。

(やっぱり……僕は今でも、ルキナ様が好きだ)

 頑張って諦めようとしても、彼女の優しさに触れるたび、心は惹かれてしまう。

 だからこそ、この想いを告げることはできない。
 彼女が与えてくれた未来を汚さないように。
 胸の奥に仕舞い込み、歩き出すことが、せめてもの償いだから――。


「ロミオがどこにいても、私はあなたの幸せを願っているわ」

「っ…………は、い」


 彼女のその願いが、痛いほどに嬉しくて、同時に苦しい。
 僕は、返事をするだけで精一杯だった。

 他の誰かと幸せになる彼女を、僕はまだ受け入れられそうにない。
 祝福の言葉を、心から伝えるには遠すぎた。

 それでも――歩くしかない。
 赦しを与えてくれた彼女の言葉を裏切らないように。
 たとえ孤独でも、悔いを抱えたままでも。

(いつの日か、あなたの幸せを祝福できる時が来るだろうか……)

 その答えを求めて、僕は今日も歩き続ける。

















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