紋章が舌に浮かび上がるとか聞いてない

ぽんちゃん

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特別編 ガリレオ×レイド

4 私の恋人は威勢が良い ガリレオ

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 薄暗い部屋でも、林檎のように真っ赤になった顔で涙を浮かべている私の可愛い恋人は、未来ある美しい青年だ。

 喜怒哀楽が激しくて、すぐに怒るんだけど、私の行動が彼をそうさせているようだ。

 息子に似て口が悪いけど、心根が優しい子。

 意思が強くて、リーダーシップもあるし、騎士団長の座を手にする日も近いだろう。

 普段は小言ばかり言っているのに、今は『好き』って言いながら、私に抱きついてくるギャップがたまらなく可愛い……。

 「愛してるよ、レイド」
 「っ………………」
 「あれ? レイドは言ってくれないの?」
 「っ、恥ずかしいことばかり言う大人だッ。……言わなくてもわかるだろうがッ!!」

 眉間に皺を寄せているけど、嬉しそうに頬を赤らめているところもすごく可愛い。
 
 だからついつい、いじめるようなことを言ってしまうんだけど、ぎゃーぎゃー言いながらもレイドは喜んでいる。

 彼のことは昔から知っていたけど、まさか恋仲になるとは思いもしなかった。







 稽古をつけて欲しいと頼まれて、初めて会ったのは、レイドがまだ十歳くらいの時だったと思う。

 長男のロミオがガンガン来る子だったから、レイドは常に兄の後ろに隠れていた。

 私に話しかけたいのに話しかけられず、半泣きになっていたことだけは覚えている。

 でも、他はあまり印象に残っていない。

 なにせ、彼の兄が強烈な性格をした二人なんだ。

 ロミオとは良好な関係を築いていたが、団長のレイヴァンが関わると人が変わるので要注意。

 普段は乙女な口調なんだが、私がレイヴァンと少しでも仲良くすると威嚇されてしまうのだ。
 
 『美しいからって調子に乗るなよ、オジサン』と、低い声で悪口を言ってくる、本当に失礼な子。

 そして一番の問題児は、次男のリアムだ。

 私の行くところに必ず変装をして現れる、神出鬼没な私の熱狂的な信者だ。

 目立たない格好をしても、高貴な雰囲気が体から滲み出ているし、熱心に私を見つめる空色の瞳は、隠すことが出来ない。

 魔物が出現した際に、近隣国で活動をしていた私の元に現れた時は、さすがに肝が冷えた。

 なにせ彼は、生まれつき体が弱くて、剣も握れない青年なんだ。

 それに、王家と深い関係にあるクライン公爵家の次男になにかあれば、私が陛下に叱られてしまう。

 いつもは気付かないふりをしていたけど、この時ばかりは母国に帰るようにと話しかけたものだ。

 『ガッ、ガガガ、ガリレオ殿が、私に気付いてッ、しかも話しかけてッ……い、る……』

 目立つ金髪を隠すように、頭にちょこんと乗せていた茶色の毛がズレて、白目を剥いて気絶するリアムを、彼のお供に託す。

 何度も頭を下げる彼らも、目がキラッキラに輝いているのだから、クライン家は私の信者集団だ。



 そして息子の同級生のレイドもまた、私に憧れていることは知っていたけど、彼はイヴとは良好な関係ではない。

 レイドがイヴに嫉妬していることに気付いてはいたけど、親がでしゃばる問題でもない。

 私のせいではあるが、いつかイヴと仲良くなってくれたら良いなと思っていたけど、いつのまにか息子に恋をしているとは思わなかった。

 ただ……。
 恋敵がエリオットとセオドアなんだ。
 どう考えても厳しい戦いだろう?

 だから自己主張の少ないレイドには、他の人に目を向けるように促そうと思っていたんだけど……。

 イヴを悲しませないために、必死に私を蘇生しようとしている姿に、私は感動していた。

 だって、魔物の王と私の息子が戦っている間、あのエリオットでさえ動けなくなっているのに、レイドだけは自分がやると決めたことを、全うしていたんだ。


 その時に、この子は大物になるなって確信した。


 大粒の涙を流して、ぐしゃぐしゃな顔をしてたけど、力強い瞳をしていたことを今でも覚えている。

 ここぞという時に、他人のために力を尽くすことが出来るレイドは、次世代に必要な存在となる。

 だから息子のことはエリオットに頼んで、レイドを鍛えることにした。

 第三騎士団副団長の弟、ではなく、レイド・クラインの名をローランド国に轟かせるために。

 私と行動を共にすれば、国民に顔を覚えてもらうことができるし、しっかり者で思いやりのある性格だから、すぐに受け入れられるだろう。

 我が子のようにレイドを可愛がっていたんだけど、おかしいな……。

 愛する息子たちとは、違った感情が芽生えてしまった。

 というより、生き返った瞬間に見た、私を助けようと我武者羅になっていた青年に、既に私の心は囚われていた。

 運命の相手だとか、両親に挨拶に行こうとか、冗談めかした発言をしていた時点で、私はレイドに気があったんだと思う。

 いつもの癖で自分の気持ちを後回しにしていたが、成長した息子たちが、そろそろ私の元を離れていくのだから、もう我慢する必要はないか。

 事前に周囲の人間に、レイドには手を出さないようにと牽制しておいて本当に良かった。







 「ハァ……。マジでかっこいい……」
 
 眠ったふりをしている私に、控えめに口付けてくる可愛い恋人は、やべぇだろッとぶっきらぼうに呟いた。

 初めて肌を重ねた時は、怖いって言いながら泣くもんだから、酷く優しくしたんだけど。

 夜になると、なぜか私を警戒し始めるレイド。
 ……獣だと思われてる?

 レイドを怖がらせないように、あれから一週間はなにもせずに添い寝をしている。

 それなのに、眠る私の体に跨っているのは、どういうつもりなんだろう?

 「一体、なにをしているのかな?」
 「っ…………起きていたんですか」
 「いや? でも、勇者の寝込みを襲うだなんて、いけない子だね?」
 「っ、襲っ!? ち、違うわッ! 勘違いしてんじゃねぇ!」
 「ふぅん? だったら早くおりて寝ようね?」
 
 真っ赤な顔でぷるぷると震えているレイドが可愛くて、つい意地悪を言ってしまう。

 体を起こして抱き寄せると、珍しく抵抗せずに私にしがみついた。

 「…………良くなかったのかよ? だから、抱かないのか?」

 小さな小さな声が、私の耳を擽る。
 
 ……うん。どうしよう、この子。

 全力で守らないといけないなぁと思いながら、半泣きになっている可愛い恋人を押し倒す。

 「責任とってね」
 「っ……なんのっ」
 「今日は優しく出来ないと思う」
 「…………望むところだッ!」
 
 威勢の良いところも、たまらなく可愛い。

 結局レイドはすぐに音を上げていたけど、期待には応えないとね?



 翌朝、もの凄い剣幕で怒られることになるけど、レイドは一日中私から離れなかった。

 「レイドが昼間も甘えてるっ!」
 「っ、オイ。その言い方だと、俺が夜だけは甘えてるみたいじゃ……」
 「可愛いなぁ~。でも、声が掠れてるけど大丈夫? 風邪でも引いた?」
 「誰のせいだとっ……」
 「もう。素っ裸で寝てるからだよ~」
 「っ、寝てたんじゃねぇ!! 誰かさんが元気すぎて、こちとら気絶してたんだよッ!!」

 人の話を聞け! と叫ぶ可愛い恋人を揶揄って、ぎゅうぎゅうと抱き締める。

 「ククッ。しあわせ~」
 「……あっそ!」

 ちらりと胸元を見れば、さっきまで怒っていたレイドは、至極嬉しそうに頬を緩めていた。







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