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特別編 イヴ×アデルバート
2 やっぱり世界で一番 アデルバート
しおりを挟む落ち着いてきた頃にちらりと視線を上げると、優しく微笑む私の王子様がいた。
格好良すぎて、元々熱かった頬が更に熱を持つ。
美の暴力に耐えきれなくて、ぎゅっと目を瞑ると、優しい口付けが降ってきた。
「んっ……」
いつものように、癒しの力を使ってくれるんだと思っていたのに、すぐに熱が離れる。
咄嗟に目を開けると、私の肩に腕を乗せるイヴが、ゆるりと首を傾げる。
魅惑的な表情のまま、私の返答を待っていた。
「っ……う、嬉しいっ。私は、イヴの恋人にはなれない、って思ってたから……」
「なんで?」
「な、なんでって……。癒しの聖女様として、覚醒したなら、もう私は、必要ないでしょう?」
自分で言って、泣きそうになりながら本心を伝えると、イヴは困ったように眉を下げた。
「やっぱりアデルは、癒しの力のために協力したいんだよな?」
「え? それは、そうだよ。イヴのためだもん」
「…………そうか」
深刻そうに溜息を吐いたイヴは、私から離れる。
「それなら薬は返してきてくれ」
「……え? なんで?」
「ん? だって、癒しの力のためなら、俺は抱かれる側にならなきゃいけないだろ? アデルを抱くことは想像できても、正直なところ抱かれることは全くもって想像出来ない。でも、アデルが俺を抱きたいなら、まあ……それでも良いか……? いや、本当は全然良くないけど」
結局、私のために我慢すると告げたイヴに、呆気に取られた。
「ま、待って。ちょっと待って! この薬は……イヴが使うんじゃないの?!」
「…………ん?」
暫く見つめ合っていると、イヴが私の手を取る。
とりあえず座って話そうと、手を引かれてソファーに並んで腰掛けた。
なにか考え込んでいるような、美しい横顔を眺めていると、視線が交わる。
「アデルは、いずれバーデン伯爵家の当主になるだろ?」
「うん。多分……」
「だよな? その時は、俺との子を産んで欲しいと思って」
私の家の跡取りのことまで考えてくれていたことに、驚きすぎてまた涙が溢れる。
私はイヴの恋人になりたいと、目先のことばかり考えていたのに、イヴは私とのもっと先の未来を考えてくれていた……。
視界が歪む中、努力が感じられる硬い掌が、私の頬をそっと撫でる。
「だから、一番体に負担のかからない薬を頼んだんだ。もし俺が使うなら、鍛えてるし、体は丈夫だから、強力な薬でも平気だろ?」
優しい声色を聞きながら、胸が高鳴る。
だから副作用がなくて、三年かけてゆっくりと子を孕む器官を形成する薬を選んだのだとわかって、勘違いしていたことが急に恥ずかしくなった。
「でも、アデルの気持ちを聞いていないのに、薬を頼んだのは悪かった。ごめんな?」
「っ、大好きッ!!」
たまらず飛びつくと、一瞬驚いたイヴだったけど、強く抱き締めてくれた。
俺も大好きだ、って言いながら……。
私がずっと恋焦がれていた人は、ちょっと鈍感だけど思いやりの塊で……、やっぱり世界で一番格好良かった。
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