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第13話 お坊ちゃんの決意
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今日もお坊ちゃんの登城日だ。私はお坊ちゃんと馬を並べ、またもや道ゆく女性に手を振る。するとさくらんぼのように女性が頬を染める。これはこれで癖になりそうだ。
「オーヴェ、恥ずかしいマネはやめてください!」
「恥ずかしい?私には何が恥ずかしいのか分かりませんね」
男らしく口を開けて笑うと、お坊ちゃんがムムムっと眉根を寄せる。
昨日と違ってリラックスしている表情だ。ちょっと荒療治だったかなと後から反省したけれど、問題なかったようだ。
帰城の際には、お坊ちゃんは近衛騎士団全員から敬礼で見送られていたし。
「明日はデートですね、アウグスティン様?」
「うーー、そうやって揶揄うのはやめてください。ただでさえ父上にヒルデガルド嬢と湖に行くと報告したら怒られたんですから」
「ああ、昨夜の夕食時に怒られていましたね」
「びっくりしました。あんなに怒る父を初めて見ました。しかも湖のレストランを貸切にしろとか無茶を言い出すし、僕は湖畔をゆっくり散策しようと思っていたのに」
お坊ちゃんはお人形さんの事情を知らないが、さすがに父親は知っていたようだ。
私も昨日、王妃と王太子とマリア嬢の会話を聞いておおよそ推測できている。だけどお坊ちゃんにはその話はしていない。なぜならまだ推測の段階だ。もっと確実性を得てから話そうと思っている。
だが、現在のところ不安があるのも確かだ。
なぜならこの推測が確かならば、お坊ちゃんの願いのひとつ『ヒルデガルド嬢を相思相愛の相手と結ばせる』を実行させることができないからだ。おかしいなあ、一番楽勝だと思っていたのに。なぜなら魔女は……。
「オーヴェ!あの馬車!」
もう~、お坊ちゃんが思考の途中で邪魔したから途切れたじゃない!
「大きな声で何ですか⁉︎ああ、ヒルデガルド・クリングヴァル公爵令嬢の馬車ですね」
「オーヴェは知っていたんですか?」
「昨日そんな噂を聞きました。何でもマリア嬢のマナーレッスンを引き受けたとか」
「そんな、王太子は何を考えているんですか!婚約破棄された相手と新しい婚約者を並べるなんて!悪趣味です。嫌な思いをするのはヒルデガルド嬢だけじゃない。マリア嬢だって、自分を傷つけた相手からマナーを習うなんて嫌でしょう!いや、ヒルデガルド嬢はそんなことしていないと信じています。けれど、あまりにも思いやりがない行為です!」
「マナーレッスンを乞うにはヒルデガルド嬢ほど素晴らしい方はいないでしょう?アウグスティン様が一番良くご存知のはずです。それにマリア嬢は半分平民の血が混じっているから貴族の礼儀がなってないと、マナーレッスンを断る教師が多いと聞きましたよ」
「それでも……ヒルデガルド嬢がお可哀想です。あの方はいつも僕を嗜めた後に辛そうなお顔をされます。僕は……いつもそれが申し訳なく思っているのに……」
「つ……辛そうな顔?」
そんな表情したことあったかしら?いつも凛とした表情しかしていない気がするけど、お坊ちゃんの妄想?お人形さんに心酔してるからにはありそうなことね。
「きっと入城してからも沢山の人が話しかけて口さがない連中に色々言われるはずです。それがお可哀想です。僕……あ、私が一緒に行ければ良いのですが……」
「……では私がヒルデガルド嬢に付き添いましょうか?私であれば城付きの侍女としてお守りできますよ?」
「良いの……ですか?」
「あら?期待してお話ししていたのでは?」
えへへと笑うお坊ちゃんの可愛さに免じてお人形さんを守ってあげましょう。実はそうするつもりだったけどね。
「アウグスティン様はおひとりで大丈夫ですか?昨日の今日ですが……」
「大丈夫です!昨日、何人かと話をしました。ひとり、ひとり話せば良い人です。僕は成人前ですが、婚約者もいるので大人にならなければいけません!だから頑張ります!」
「あら?王太子と結婚させるんじゃなかったの?」
「ヒルデガルド嬢にこんなことをさせる王太子になんか渡せません。だったら僕と結婚した方が良いはずです!僕は――私はまだ子供ですが、これから大人になるんですから!」
「そうですね。この国は18歳から結婚できます。アウグスティン様が18才の時、ヒルデガルド嬢は24歳、少しお待たせするけれど良いかも知れませんね」
破顔するお坊ちゃんはお坊ちゃんではない。もう責任感を持つ男性と言っても差し支えないだろう。昨日の出来事で自信がついたのは良いことだ。仕方ない。これからはアウグスティン様と心の中でも呼んであげようかしら?いや、やっぱりかわいいからお坊ちゃんでいこう。
「では、行ってきますわ。今日はオーヴェがいませんが、アウグスティン様なら大丈夫ですわね?」
「はい、ヒルデガルド嬢をお願いします。僕も職務が終わったら行ってみます」
あら、頼もしい。
私はそこで転移する。やはり人の成長する瞬間が一番楽しいわ
「オーヴェ、恥ずかしいマネはやめてください!」
「恥ずかしい?私には何が恥ずかしいのか分かりませんね」
男らしく口を開けて笑うと、お坊ちゃんがムムムっと眉根を寄せる。
昨日と違ってリラックスしている表情だ。ちょっと荒療治だったかなと後から反省したけれど、問題なかったようだ。
帰城の際には、お坊ちゃんは近衛騎士団全員から敬礼で見送られていたし。
「明日はデートですね、アウグスティン様?」
「うーー、そうやって揶揄うのはやめてください。ただでさえ父上にヒルデガルド嬢と湖に行くと報告したら怒られたんですから」
「ああ、昨夜の夕食時に怒られていましたね」
「びっくりしました。あんなに怒る父を初めて見ました。しかも湖のレストランを貸切にしろとか無茶を言い出すし、僕は湖畔をゆっくり散策しようと思っていたのに」
お坊ちゃんはお人形さんの事情を知らないが、さすがに父親は知っていたようだ。
私も昨日、王妃と王太子とマリア嬢の会話を聞いておおよそ推測できている。だけどお坊ちゃんにはその話はしていない。なぜならまだ推測の段階だ。もっと確実性を得てから話そうと思っている。
だが、現在のところ不安があるのも確かだ。
なぜならこの推測が確かならば、お坊ちゃんの願いのひとつ『ヒルデガルド嬢を相思相愛の相手と結ばせる』を実行させることができないからだ。おかしいなあ、一番楽勝だと思っていたのに。なぜなら魔女は……。
「オーヴェ!あの馬車!」
もう~、お坊ちゃんが思考の途中で邪魔したから途切れたじゃない!
「大きな声で何ですか⁉︎ああ、ヒルデガルド・クリングヴァル公爵令嬢の馬車ですね」
「オーヴェは知っていたんですか?」
「昨日そんな噂を聞きました。何でもマリア嬢のマナーレッスンを引き受けたとか」
「そんな、王太子は何を考えているんですか!婚約破棄された相手と新しい婚約者を並べるなんて!悪趣味です。嫌な思いをするのはヒルデガルド嬢だけじゃない。マリア嬢だって、自分を傷つけた相手からマナーを習うなんて嫌でしょう!いや、ヒルデガルド嬢はそんなことしていないと信じています。けれど、あまりにも思いやりがない行為です!」
「マナーレッスンを乞うにはヒルデガルド嬢ほど素晴らしい方はいないでしょう?アウグスティン様が一番良くご存知のはずです。それにマリア嬢は半分平民の血が混じっているから貴族の礼儀がなってないと、マナーレッスンを断る教師が多いと聞きましたよ」
「それでも……ヒルデガルド嬢がお可哀想です。あの方はいつも僕を嗜めた後に辛そうなお顔をされます。僕は……いつもそれが申し訳なく思っているのに……」
「つ……辛そうな顔?」
そんな表情したことあったかしら?いつも凛とした表情しかしていない気がするけど、お坊ちゃんの妄想?お人形さんに心酔してるからにはありそうなことね。
「きっと入城してからも沢山の人が話しかけて口さがない連中に色々言われるはずです。それがお可哀想です。僕……あ、私が一緒に行ければ良いのですが……」
「……では私がヒルデガルド嬢に付き添いましょうか?私であれば城付きの侍女としてお守りできますよ?」
「良いの……ですか?」
「あら?期待してお話ししていたのでは?」
えへへと笑うお坊ちゃんの可愛さに免じてお人形さんを守ってあげましょう。実はそうするつもりだったけどね。
「アウグスティン様はおひとりで大丈夫ですか?昨日の今日ですが……」
「大丈夫です!昨日、何人かと話をしました。ひとり、ひとり話せば良い人です。僕は成人前ですが、婚約者もいるので大人にならなければいけません!だから頑張ります!」
「あら?王太子と結婚させるんじゃなかったの?」
「ヒルデガルド嬢にこんなことをさせる王太子になんか渡せません。だったら僕と結婚した方が良いはずです!僕は――私はまだ子供ですが、これから大人になるんですから!」
「そうですね。この国は18歳から結婚できます。アウグスティン様が18才の時、ヒルデガルド嬢は24歳、少しお待たせするけれど良いかも知れませんね」
破顔するお坊ちゃんはお坊ちゃんではない。もう責任感を持つ男性と言っても差し支えないだろう。昨日の出来事で自信がついたのは良いことだ。仕方ない。これからはアウグスティン様と心の中でも呼んであげようかしら?いや、やっぱりかわいいからお坊ちゃんでいこう。
「では、行ってきますわ。今日はオーヴェがいませんが、アウグスティン様なら大丈夫ですわね?」
「はい、ヒルデガルド嬢をお願いします。僕も職務が終わったら行ってみます」
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