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最恐ドラゴンが、最強賢者に出会う時。(1)
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「今日は何をしようかな~」
自分で磨き上げた岩肌に身体を映しながら、ぐるりと回る。
「うん!苔ひとつ付いてない!良い感じ!」
だいぶ前にひとりだからいいや~って思ってお風呂をサボったら身体に苔が生えていた。灼熱色の俺の身体に緑の苔はとても目立った。以来、この鏡(?)を見るのを日課にしている。
「昨日は確か小説を読んで……」
俺の趣味は恋愛小説読むことだ。昨日は最近人気急上昇中の小説【婚約破棄された公爵令嬢は、大根サラダが好物の辺境伯に溺愛される】を読んでいた。『辺境伯は公爵令嬢の口に大根サラダを……』と言う下りで恥ずかしくなって、読めなくなってしまった。少し……いやかなり興奮してしまったので、活火山をどがんと一発噴火させてしまったくらいだ。地域の方はきっと怖かった事だろう。今日はお詫びに恵の雨でも降らせようかな?
自慢の翼をバサっと広げて、薄いベージュの皮膜が今日も綺麗だなぁ、なんて自画自賛していると、その先に人間が見えた。
人間?なんで?そう思いながら体をぐるっと向ける。
視線の先には確かに人間がいる。着ている服は白い法衣だ。フードをすっぽり被っているから顔は見えない。
法衣を着るのは神職者の証。この世界には驚くほど多くの神々がいる。肩にかかったストラに信仰する神の神紋が入るのだけど、それは見えない。
『神職者は神を信仰する人たちだから、無闇に攻撃してはいけないよ』
お父さんが言っていた。
『でもかわいいファニーちゃんを傷つける人間だったら迷わずKILLしちゃいなさい』
お母さんが言っていた。
つまり無闇に攻撃してはいけないってことだ。
この溶岩がグツグツ沸る岩山にどうやって来れたんだろう、とか、一応最恐ドラゴンと言われる俺の背後を取れるってどう言うこと?とか、いっぱい疑問はあるけれど、そこは無視しておこう。
昔から俺の元には人間がやってくる。大概は俺の討伐だったり、討伐だったり、討伐だったりする。それは仕方ないことだ。俺は人類の天敵【最恐ドラゴン】なのだから。
そんな事情があるから、俺は威厳を持って話かけることにしている。
「お前……なぜここに?」
ほら俺格好いい!でもさっき鏡見ていた姿を見られていないと良いなぁ。身支度してる姿ってかっこ悪いし。
「最恐ドラゴン、ファフニールか?」
地面を揺らすような低い声だ。女性の声だけど、言葉に魔力を乗せているのだろう。弱い生き物だと、この声を聞いただけで気絶してしまう。なんだか乱暴そうな人だなぁ。
「そうだと言ったら……どうする?」
相手を真似して俺も低い声にしてやったぞ!空気を読むことって大事だよね?雰囲気を合わせてあげなきゃ可哀想だしね。
「フッ……貴様の首には高額な懸賞金がかかっている。討伐させて頂こう!」
女の人がフードをバサっとし、法衣をググッと翻す。
紫がかった黒い髪は腰までウェーブしながら伸びている。瞳は春の空の色だ。けぶった水色の瞳はきれいだ。キリッとした目と、バランスの取れた目鼻立ち。ドラゴンの俺には分からないけど、人間基準だと綺麗な人だと思う。
と言うかその前にさ。どうして俺を討伐に来る人って『フッ』って笑うんだろう。小説とか漫画では良く読むけどさ。『フッ』ってなんか格好つけてるみたいで言ってて恥ずかしくないのかな?俺はちょっと言えない。
随分と余裕があるのには理由がある。俺は温和になったとは言えど、【最恐ドラゴン】だ!人間如きは一撃だ!だから大きく見せるように身体を伸ばす。
「人間如きが我を討伐しようとは愚かだな。だが矮小な存在でありながら一人で来た勇気を認め、今なら引き返すことを認めてやるぞ?」
本音を隠すことはとても大事!人間はすぐに死ぬから見逃してあげなきゃね。
「さすが最恐ドラゴン・ファフニールだな。それでこそ倒し甲斐があるというものだ!」
女の人はポニーテールにいっぱい刺さっている櫛のひとつを取り出す。くるくる回すと――なんと大きくなって、杖になった!
初めて見た魔法だ!すごい!これは便利そうだ。この魔法があればどこにでも小説を持っていける!漫画も読み放題だ!
なんて思ってる場合じゃない。ここまで言っても、俺の命を狙うなら仕方ない。お母さんの言う通りにKlLLしちゃおう。俺のこと、恨まないでね?
俺の口の中には炎を貯める袋がある。これは俺が炎系のドラゴンだから持っているものだ。他のドラゴンにもあると思う。他のドラゴンから、聞いたことはないけれど……。
だから俺はその炎袋に魔力を送り込む。すると口から炎が出る仕組みだ。痛いのはかわいそうだから、さっと焼いて終わらせてあげよう。
俺は口から炎を吐き出す。威力は俺の中では中位だ。あまり強い炎を吐いたら、活火山に影響が出て、周囲の住民に迷惑かけちゃうからね。
ボウっと音を立てて、吐き出す炎の色は黄色だ。黄色の炎は女性に一気に襲いかかる。俺の炎は早くて的確だ。
「ふむ――さすがファフニール。他のドラゴンとは違うな」
女の人は余裕だ。あれ?今まで人間とは反応が違うぞ?と思ったのが悪かった。
俺の体はカチンと凍る。
俺、氷柱の中。
俺、動けない。
俺……なんでこうなった?
自分で磨き上げた岩肌に身体を映しながら、ぐるりと回る。
「うん!苔ひとつ付いてない!良い感じ!」
だいぶ前にひとりだからいいや~って思ってお風呂をサボったら身体に苔が生えていた。灼熱色の俺の身体に緑の苔はとても目立った。以来、この鏡(?)を見るのを日課にしている。
「昨日は確か小説を読んで……」
俺の趣味は恋愛小説読むことだ。昨日は最近人気急上昇中の小説【婚約破棄された公爵令嬢は、大根サラダが好物の辺境伯に溺愛される】を読んでいた。『辺境伯は公爵令嬢の口に大根サラダを……』と言う下りで恥ずかしくなって、読めなくなってしまった。少し……いやかなり興奮してしまったので、活火山をどがんと一発噴火させてしまったくらいだ。地域の方はきっと怖かった事だろう。今日はお詫びに恵の雨でも降らせようかな?
自慢の翼をバサっと広げて、薄いベージュの皮膜が今日も綺麗だなぁ、なんて自画自賛していると、その先に人間が見えた。
人間?なんで?そう思いながら体をぐるっと向ける。
視線の先には確かに人間がいる。着ている服は白い法衣だ。フードをすっぽり被っているから顔は見えない。
法衣を着るのは神職者の証。この世界には驚くほど多くの神々がいる。肩にかかったストラに信仰する神の神紋が入るのだけど、それは見えない。
『神職者は神を信仰する人たちだから、無闇に攻撃してはいけないよ』
お父さんが言っていた。
『でもかわいいファニーちゃんを傷つける人間だったら迷わずKILLしちゃいなさい』
お母さんが言っていた。
つまり無闇に攻撃してはいけないってことだ。
この溶岩がグツグツ沸る岩山にどうやって来れたんだろう、とか、一応最恐ドラゴンと言われる俺の背後を取れるってどう言うこと?とか、いっぱい疑問はあるけれど、そこは無視しておこう。
昔から俺の元には人間がやってくる。大概は俺の討伐だったり、討伐だったり、討伐だったりする。それは仕方ないことだ。俺は人類の天敵【最恐ドラゴン】なのだから。
そんな事情があるから、俺は威厳を持って話かけることにしている。
「お前……なぜここに?」
ほら俺格好いい!でもさっき鏡見ていた姿を見られていないと良いなぁ。身支度してる姿ってかっこ悪いし。
「最恐ドラゴン、ファフニールか?」
地面を揺らすような低い声だ。女性の声だけど、言葉に魔力を乗せているのだろう。弱い生き物だと、この声を聞いただけで気絶してしまう。なんだか乱暴そうな人だなぁ。
「そうだと言ったら……どうする?」
相手を真似して俺も低い声にしてやったぞ!空気を読むことって大事だよね?雰囲気を合わせてあげなきゃ可哀想だしね。
「フッ……貴様の首には高額な懸賞金がかかっている。討伐させて頂こう!」
女の人がフードをバサっとし、法衣をググッと翻す。
紫がかった黒い髪は腰までウェーブしながら伸びている。瞳は春の空の色だ。けぶった水色の瞳はきれいだ。キリッとした目と、バランスの取れた目鼻立ち。ドラゴンの俺には分からないけど、人間基準だと綺麗な人だと思う。
と言うかその前にさ。どうして俺を討伐に来る人って『フッ』って笑うんだろう。小説とか漫画では良く読むけどさ。『フッ』ってなんか格好つけてるみたいで言ってて恥ずかしくないのかな?俺はちょっと言えない。
随分と余裕があるのには理由がある。俺は温和になったとは言えど、【最恐ドラゴン】だ!人間如きは一撃だ!だから大きく見せるように身体を伸ばす。
「人間如きが我を討伐しようとは愚かだな。だが矮小な存在でありながら一人で来た勇気を認め、今なら引き返すことを認めてやるぞ?」
本音を隠すことはとても大事!人間はすぐに死ぬから見逃してあげなきゃね。
「さすが最恐ドラゴン・ファフニールだな。それでこそ倒し甲斐があるというものだ!」
女の人はポニーテールにいっぱい刺さっている櫛のひとつを取り出す。くるくる回すと――なんと大きくなって、杖になった!
初めて見た魔法だ!すごい!これは便利そうだ。この魔法があればどこにでも小説を持っていける!漫画も読み放題だ!
なんて思ってる場合じゃない。ここまで言っても、俺の命を狙うなら仕方ない。お母さんの言う通りにKlLLしちゃおう。俺のこと、恨まないでね?
俺の口の中には炎を貯める袋がある。これは俺が炎系のドラゴンだから持っているものだ。他のドラゴンにもあると思う。他のドラゴンから、聞いたことはないけれど……。
だから俺はその炎袋に魔力を送り込む。すると口から炎が出る仕組みだ。痛いのはかわいそうだから、さっと焼いて終わらせてあげよう。
俺は口から炎を吐き出す。威力は俺の中では中位だ。あまり強い炎を吐いたら、活火山に影響が出て、周囲の住民に迷惑かけちゃうからね。
ボウっと音を立てて、吐き出す炎の色は黄色だ。黄色の炎は女性に一気に襲いかかる。俺の炎は早くて的確だ。
「ふむ――さすがファフニール。他のドラゴンとは違うな」
女の人は余裕だ。あれ?今まで人間とは反応が違うぞ?と思ったのが悪かった。
俺の体はカチンと凍る。
俺、氷柱の中。
俺、動けない。
俺……なんでこうなった?
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