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最恐ドラゴンがパーティーに出席する時(3)
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一通り嘆いた俺は壁際に立ってパーティー会場を見渡す。
アストリッド様は優雅に踊っている。あの傍若無人で笑顔で人を脅すアストリッド様が、美しい微笑みを向けて男性と手を組んで踊っている。しかもあの微笑みは、俺の呪術のせいではない気がする。あれは俺の嘆きを見て満足した顔だ。やっぱりアストリッド様はSだ、しかも生粋の‼︎一刻も早く縁を切った方が良い。
「今日で最後になるかも知れないから、しっかり目に焼き付けよう……」
俺の悪いところは後先考えないところだと、父さんが言っていた。どうして、頭に来てアストリッド様の魔力を封印してしまったのだろう。今更言っても仕方ないけれど。
急遽、催された割には、賓客も多く、食事の種類も豊富だ。給仕係も十分にいる。こういう所で人間は愛を紡ぐのだと思い周囲を観察する。
どうせ今日で終わる命なら、恋愛小説の様な場面を見てみたい。
今一番見たいのは壁ドン。ちょっと、いや、かなり古いとか言われてるけど、それでときめく女子がみたい。頬とか染めて、キュンとかする姿はきっとかわいいはずだ。その後の顎クイ。キュンからのドキドキ?それでもって徐々に近づく唇とか?
なんて妄想に耽っていたら、右頬を何かが、かすった。と同時に壁から音が聞こえた。音はまさにドン!まさか自分が壁ドンされるとは……。
壁についた手から伸びる腕を見る。その腕の主をそっと目で追いかける。
相手は青筋立てたアストリッド様。
初めてされた壁ドンに顔は青くなり、心臓は恐怖でドキドキした。キュンなんて1ミリもしない。
「……アストリッド様?」
壁からメリメリって音が聞こえる。壁ドンって、ドンの後はメリメリって音なんだ~、なんて現実逃避したくなる。
「疲れた!お前の呪縛を解くのは大変だった!だが、踊りきったぞ!」
さっきまでの柔らかな笑みは一瞬で消えた。これが本来のS顔だと思うと、なんだか懐かしい気がしてくるから不思議だ、
「お、お、お疲れ様です。恋愛にはなりませんでしたか?」
アストリッド様の背後にはこちらを注視する男たちがいる。さっき、王様が紹介した男の人たちだ。第二王子もいる。王様の親戚関係のイケメンさんも、みんな残念そうな顔でこちらを見てる。
そうだよね、さっきまでのアストリッド様が相手ならそうなるよね?今のアストリッド様の怒り顔を見ると、多分逃げ出すと思うけど。
「ダメだ!自慢話ばかりで疲れる。手を握り潰さないように加減するのが精一杯だった!」
「ダンスはお上手でした……よ?」
いつまでもやめてくれない壁ドンに恐怖を感じながら、頑張って褒める事にした。
怖い。このまま壁を突き破ってしまうのではないだろうか。そのまま床ドン。からの圧死が脳裏に浮かぶ。恐怖のあまり寿命が縮みそうだ。まさか、ここで死んでしまうとは!
アストリッド様も褒められて、悪い気はしてなさそうだ。少し嬉しそうな笑みを浮かべた。
「これでも貴族の端くれだからな。淑女の嗜みだ」
単純で良かった!生き残れた!……気がする!
気を良くした俺は、周囲を見回し男性を物色する事にした。アストリッド様の男の好みを事前に聞いておけば良かった。
「他にも男性はいっぱいいますよ。アストリッド様が強そうな男性が好みなら、あちらに筋肉隆々の方がいますが?」
俺は(多分)騎士団員だろうと思われる人間を目で示す。アストリッド様は軽く振り返り、嫌だと首を振る。
「ではかわいらしい感じは?」
逆をいってみるかと、ショタっぽい男の子を指してみる。すると睨まれた。やっぱりダメか。
「気分転換に飲み物でも?」
それには頷き、やっと壁ドンを外してくれた。俺の横に並び、ため息を思いっきりつき、周りを睨み、軽く威圧を飛ばす。その結果、蜘蛛の子を散らす様に、皆が背を向け離れて行った。
どうしようと思いつつ、目があったウエイターに合図を送る。さすが王城に務めるプロだ。この威圧の中、気にも止めずにやってくる。
黒髪黒目の珍しい顔立ちのウエイターが、様々な飲み物が載ったトレーを差し出す。
「アストリッド様は何にしますか?」
聞くが、アストリッド様は答えない。よっぽどイライラしてるのだろう。
適当に渡して怒られるのが嫌だから、ウエイターに責任をなすり付ける為に聞いてみよう!
「オススメは?」
「おすすめは、赤ワインです。今年の出来は良いそうですよ」
ウェイターの言葉を聞き、赤ワインを二つ取る。お辞儀をして、ウエイターは帰っていく。さすがプロ。この雰囲気で大人な対応だった。顔は幼かったが……。
「アストリッド様、どうぞ……」
俺が差し出したグラスは一気に飲まれた。そして、俺のワインも奪われ、飲まれる。あげく空のグラスを渡された。
ため息混じりに、グラスの返却に向かう。だから気付かなかった。アストリッド様の顔がワインの様に赤くなっている事に……。
アストリッド様は優雅に踊っている。あの傍若無人で笑顔で人を脅すアストリッド様が、美しい微笑みを向けて男性と手を組んで踊っている。しかもあの微笑みは、俺の呪術のせいではない気がする。あれは俺の嘆きを見て満足した顔だ。やっぱりアストリッド様はSだ、しかも生粋の‼︎一刻も早く縁を切った方が良い。
「今日で最後になるかも知れないから、しっかり目に焼き付けよう……」
俺の悪いところは後先考えないところだと、父さんが言っていた。どうして、頭に来てアストリッド様の魔力を封印してしまったのだろう。今更言っても仕方ないけれど。
急遽、催された割には、賓客も多く、食事の種類も豊富だ。給仕係も十分にいる。こういう所で人間は愛を紡ぐのだと思い周囲を観察する。
どうせ今日で終わる命なら、恋愛小説の様な場面を見てみたい。
今一番見たいのは壁ドン。ちょっと、いや、かなり古いとか言われてるけど、それでときめく女子がみたい。頬とか染めて、キュンとかする姿はきっとかわいいはずだ。その後の顎クイ。キュンからのドキドキ?それでもって徐々に近づく唇とか?
なんて妄想に耽っていたら、右頬を何かが、かすった。と同時に壁から音が聞こえた。音はまさにドン!まさか自分が壁ドンされるとは……。
壁についた手から伸びる腕を見る。その腕の主をそっと目で追いかける。
相手は青筋立てたアストリッド様。
初めてされた壁ドンに顔は青くなり、心臓は恐怖でドキドキした。キュンなんて1ミリもしない。
「……アストリッド様?」
壁からメリメリって音が聞こえる。壁ドンって、ドンの後はメリメリって音なんだ~、なんて現実逃避したくなる。
「疲れた!お前の呪縛を解くのは大変だった!だが、踊りきったぞ!」
さっきまでの柔らかな笑みは一瞬で消えた。これが本来のS顔だと思うと、なんだか懐かしい気がしてくるから不思議だ、
「お、お、お疲れ様です。恋愛にはなりませんでしたか?」
アストリッド様の背後にはこちらを注視する男たちがいる。さっき、王様が紹介した男の人たちだ。第二王子もいる。王様の親戚関係のイケメンさんも、みんな残念そうな顔でこちらを見てる。
そうだよね、さっきまでのアストリッド様が相手ならそうなるよね?今のアストリッド様の怒り顔を見ると、多分逃げ出すと思うけど。
「ダメだ!自慢話ばかりで疲れる。手を握り潰さないように加減するのが精一杯だった!」
「ダンスはお上手でした……よ?」
いつまでもやめてくれない壁ドンに恐怖を感じながら、頑張って褒める事にした。
怖い。このまま壁を突き破ってしまうのではないだろうか。そのまま床ドン。からの圧死が脳裏に浮かぶ。恐怖のあまり寿命が縮みそうだ。まさか、ここで死んでしまうとは!
アストリッド様も褒められて、悪い気はしてなさそうだ。少し嬉しそうな笑みを浮かべた。
「これでも貴族の端くれだからな。淑女の嗜みだ」
単純で良かった!生き残れた!……気がする!
気を良くした俺は、周囲を見回し男性を物色する事にした。アストリッド様の男の好みを事前に聞いておけば良かった。
「他にも男性はいっぱいいますよ。アストリッド様が強そうな男性が好みなら、あちらに筋肉隆々の方がいますが?」
俺は(多分)騎士団員だろうと思われる人間を目で示す。アストリッド様は軽く振り返り、嫌だと首を振る。
「ではかわいらしい感じは?」
逆をいってみるかと、ショタっぽい男の子を指してみる。すると睨まれた。やっぱりダメか。
「気分転換に飲み物でも?」
それには頷き、やっと壁ドンを外してくれた。俺の横に並び、ため息を思いっきりつき、周りを睨み、軽く威圧を飛ばす。その結果、蜘蛛の子を散らす様に、皆が背を向け離れて行った。
どうしようと思いつつ、目があったウエイターに合図を送る。さすが王城に務めるプロだ。この威圧の中、気にも止めずにやってくる。
黒髪黒目の珍しい顔立ちのウエイターが、様々な飲み物が載ったトレーを差し出す。
「アストリッド様は何にしますか?」
聞くが、アストリッド様は答えない。よっぽどイライラしてるのだろう。
適当に渡して怒られるのが嫌だから、ウエイターに責任をなすり付ける為に聞いてみよう!
「オススメは?」
「おすすめは、赤ワインです。今年の出来は良いそうですよ」
ウェイターの言葉を聞き、赤ワインを二つ取る。お辞儀をして、ウエイターは帰っていく。さすがプロ。この雰囲気で大人な対応だった。顔は幼かったが……。
「アストリッド様、どうぞ……」
俺が差し出したグラスは一気に飲まれた。そして、俺のワインも奪われ、飲まれる。あげく空のグラスを渡された。
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