最恐ドラゴンの恋愛指導〜美人で冷酷で常識のない最強賢者に愛を教えるのは、俺には荷が重いです!〜

清水柚木

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最強ドラゴンがのんびりする時。

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「では、行ってくる」

アストリッド様が足早に出かけて行った。お日様が昇る前に出かけていったのは初めてだ。

俺の討伐パーティーの翌日、幸いなことに俺は殺されなかった。家に帰ったら殺されるかと思ったけれど、アストリッド様はお風呂にも入らず部屋に行き、そのまま寝てしまった。

そして朝早く起きて、ご飯食べて出かけてしまった。目的地も言わずに。

「どうしたんだろう?まぁ、殺されなかったし、怒られなかったから良いか」

俺の尻尾が剥製になったのはショックだったけど、人間の皆さんが「すごい立派だ」と言ってくれたから、それで良いにしよう。なんだかんだで褒められると嬉しい。

テーブルの上の食器を片付けて、そしたら洗濯物を干そう。今日は良い天気だから洗濯物が良く乾く。

「お布団も干そうかな?」

アストリッド様の布団は一昨日干したから、今日は俺の布団を干そう。

「その前に、アストリッド様がいないから魔物新聞を読もう!」

魔物新聞は魔物だけしか買えない新聞だ。人間に見せることはできない。だから俺はいつもはコソコソと隠れて読んでいた。

魔物新聞はいつも俺の部屋にベッドの下に隠してある。部屋から持ってきて、椅子に座り、砂糖とミルクたっぷりのカフェオレを片手に、ゆったりとくつろぎながら読むことにする。

アストリッド様と一緒に過ごして、ご飯を作って掃除洗濯をして、それも悪くはないけれどやっぱりひとりの時間って欲しいものだ。一応俺とアストリッド様の部屋は別々だけど、やっぱり気疲れしてしまう。アストリッド様は何一つ気疲れなんてしていないだろうけど。

「さて、今日の第一面は……あ……」

俺が載っている。それは少し前にも載っていた。俺がアストリッド様に討伐されたという内容だった。俺は死んではないけれど、正直、人間が討伐だと言ってくるのも面倒だったし、魔物が力比べにくるのも、共闘しようと誘いにくるのも面倒だったから、そう思われているならそれで良いかと黙っておくことにした。

「だけどまさかこんな事になるなんて……」

新聞の第一面には俺の両親を名乗るドラゴンが載っている。アストリッドが憎いと言って泣いている雌の黒いドラゴンは、俺の知らないドラゴンだ。怒りを露わにしている赤い雄ドラゴンも知らないドラゴンだ。そして更に……。

「婚約者?俺に婚約者なんていないのに」

俺の婚約者を名乗る赤いドラゴンも一緒に魔物新聞の第一面を賑やかしている。

「ファフニールの遺産を継ぐのは両親と婚約者……」

俺の遺産は漫画と小説しかないけれど、それを持っていくつもりなのだろうか?本当にそれをしたら、怒ってKILLしちゃうけど、俺の家はそんじゃそこらの家じゃない。あれは神々ですら入れないほど、強力な魔法を施して封印している。

「バカだなぁ、嘘ついたら天罰があたっちゃうのに」

この世界の神様はとても怖い。このドラゴンたちは酷い罰を受けるだろう。


「まぁ、良いか。他には……あ!やっぱりこれを読まなきゃね。『透明人間ガルアによるクルクリ国潜入日誌』!確か今はクルクリ国の王都に潜入してるんだよね。すごいなぁ、怖いなぁ」

俺が呑気に新聞を読む耽っている間、アストリッド様はひとりで奮闘していた。
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