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雲行きのあやしい歓迎会
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「君んちにお邪魔するのはこれで二度目だ」
総一郎は玄関で靴を脱ぎ、きちんと整えてから莉愛の部屋へと向かった。
「ね、ねぇ。今日は何するの」
「何って、莉愛さんの入部歓迎会だよ。
あとはそうだなぁ……オレの部長としてのゲームの腕前でも見せようかな」
本人の部屋で歓迎会とは斬新だ。それも十代の男女が部屋に二人きり……。
総一郎は可愛らしい外見をしているとはいえ、男だ。二人きりになって変な気をおこされたら?と莉愛は心配しているのだが、本人にそう切り出す勇気が出ない。
(吾妻屋くん、私の事どう思ってるんだろう)
本当はすごく気になる。女子と距離が近いのは元々なのか?
教室で女子と話しているのは見たことがあるが、適切な距離感をもっと保っていたよう気がするけれど、と莉愛は悶々とした。
莉愛の部屋の中央に二人は座った。白地にミルキーピンクのウサギがプリントされた丸いクッションをお尻の下に敷き、総一郎はポケットをごそごそ漁り、中から何かを取りだした。
「はい、これ。君の部活用の名刺だよ」
「えっ? 名刺……?」
長方形の小さなクリアケースに収まっているのはどぎつい蛍光イエローの名刺で、『ゲーム代行クリア部 助手役 莉愛』と黒い太文字で印字されている。
「な、なにこれ。ドンキみたいな色だし、助手って」
「インパクトが大事だと思って思い切ってそのデザインにしたんだ。あ、助手のところはね、何か役職をつけた方がそれっぽいかなと思って。……どうかな?」
自分のセンスを信じて疑わない総一郎は、ニコニコと莉愛に褒められ待ちと言った様子だ。
良かれと思ってやったことでも、反応に困る。やはり総一郎はどこか感覚がずれているらしい。
「あ、ありがとう。大事にしまっておくね」
そもそも部活で名刺なんて使うかな、と疑問と共に受け取った名刺を部屋の棚へ置いた。
「もう、そんな場所に置いたら学校に持っていくの忘れちゃうかもしれないだろう。
しっかり持ち歩いてよ」
えぇ……。莉愛は嫌そうな顔をしたが、総一郎の綺麗な顔を見るとどうも断れない。
少年アイドルみたいな顔で微笑まれるとおのずと丸め込まれてしまう。これからの学校生活の行く先が不安だな、と己の行く先を案じていると部屋中央に設置した折り畳みテーブルの上に袋に入れて持ってきたあんみつを出して歓迎会の準備を進めた。
「我が部は現在三名。ユーレイ部員のぞき二名の超少数精鋭部隊だ。
オレと君で今後活動する事になる。あらためてよろしくね」
コホンと咳払いした後総一郎は表情を引き締めて言った。
白みがかった栗色の髪に蜂蜜色の瞳、艶やかな声。容姿でいえば間違いなくクラスで一番の美男子とお近づきになったわけだ。
趣味も合いそうだし、これから楽しくなる筈、と莉愛は前向きにとらえることにした。
「うん! こちらこそよろしく」
二人は並んで座り、視線を交わして笑いあった。
「テレビ借りていい?」と莉愛の許可をとった総一郎はテレビの電源を入れ、莉愛が苦戦しているファークライ3のゲーム画面をたちあげた。
「歓迎会といえば出し物だよね。ゲームにまつわる出し物といえばアレしかない」
「アレって?」
「オレ達が意気投合したきっかけはこのステルスゲームだ。だから今から、制限時間を設けてお互いプレイする。どっちが先に進めるか勝負だ」
そんなの吾妻屋くんが勝つに決まってるじゃん、と唇を尖らせる莉愛。
「じゃあハンデをつけようか。制限時間一〇分のところ、莉愛さんは二倍の二〇分にしてあげる」
丁度三〇分のイベントになるね、と和やかに笑う総一郎。
「わ、わかった。それなら吾妻屋くんに勝てるかも」
「ふふん、それはどうかな」
得意げに鼻を鳴らし余裕たっぷりな総一郎とテーブルを挟んで向かい合い、フルーツあんみつを食べる。
自分の家の商品だから食べ慣れているのか、さほど感動は無いと言った表情で黙々と口に黒蜜のかかったミカンや白玉を運ぶ彼を見ていると、莉愛は質問したくなった。
「吾妻屋くんって家が和菓子屋さんでしょ? いつも和菓子食べてるの?」
「うーん、別にいつもではないなぁ。売れ残ったのがあれば親父がくれるから定期的に口に入るけどね」
現実的な回答に、ふうん、と相槌をうつ。
吾妻屋の店のフルーツあんみつは、豪勢だ。蜜柑やさくらんぼ、キウイなどなど、色とりどりのフルーツが白玉と口当たりのいいサイコロ状の寒天と共に盛り付けられ、上にあんこと黒蜜がたっぷりかかっている。
莉愛は目を輝かせ「いただきますっ」と手を合わせてから口をつける。
品のよい甘さが口の中いっぱいに広がり、黒蜜ときな粉の香ばしい風味がフルーツの酸味と打ち消して調和がとれている。
あまりの美味しさに食べながら顔をほころばせる莉愛に、総一郎は「莉愛さんみたいに喜んで食べてくれる人がうちにいればなぁ」と苦笑した。
「え、吾妻屋くんのご家族はそうじゃないの?」
ここだけの話、と総一郎は声を落として小さく囁いた。
「オレは正直和菓子がそこまで好きじゃないし、妹も体型を気にして甘いものはほとんど食べないから」
「そうだったんだ……。なんだか意外」
和菓子屋の息子だから必ず和菓子好きとは限らないもんね、と莉愛の中で凝り固まっていた固定観念を取り払おうとするが、なかなかむつかしい。
「小さい頃から飽きるほど食べさせられたからかなぁ、和菓子より洋菓子派なんだよね、オレ」
まあ将来家業を継げって言われてるから和菓子作りの修行はしてるけどね、とどこか思いつめたような顔をする総一郎。
すぐにハッとした顔になって「今のハナシは内緒にしてね」と人差し指を唇に当てて悪戯っぽく笑う彼に莉愛も神妙に頷いた。
「う、うん。誰にも言わないよ」
少しだけ重くなった場の空気を感じ、黙々とスプーンであんみつを食べすすめた。
二人とも食べ終えてから、勝負の幕は開いた。
ルールは先ほどの内容に加え、イベントムービーは飛ばしてよいという事になった。
じゃんけんで勝った方が先にプレイするを二人で決め、総一郎が勝つ。
「オッケー、オレが先ね」
コントローラーを持ち、スタートを切ろうとした直後思い出したように呟いた。
「あ、そうそう。負けた方は勝った方の言う事を聞く罰ゲームね」
「えぇっ⁉ そんなぁ」
嫌だよ、と首を縦に振る莉愛を横目に「君にはハンデをあげたじゃないか、嫌ならオレに勝つことだね」ととりあってくれない。
今まで総一郎がゲームしている姿をしっかり見たことは無かったので、本当に部長の座に座るのにふさわしい手腕の持ち主なのか確かめ類いい機会である。
莉愛はテレビのゲーム画面を食い入るように見つめた。
総一郎の操作する主人公は動きにそつがない。ステルスを駆使して敵を倒す鮮やかな手つきを披露し、敵の本拠地を攻め落としてしまった。
(す、すごい。私とはまるでレベルが違う)
制限時間のうちに本編ミッションを三つもこなした総一郎に莉愛が勝つ術があるのだろうか……。
「次は君の番だよ。オレと比べなくていい。君の破天荒なプレイスタイルを見せておくれ」
今回も火炎放射器使うの?とニコニコしながら聞いてくる総一郎。
「もうあれは使わないよ。これからはグレネードの時代だから」
莉愛の頭の中にある戦法は、所持できる最大数までグレネードや火炎瓶を持ちつつショットガンで地道に敵と交戦するという風だ。
ゲームが始まった。莉愛は慎重に主人公を操作し敵の拠点を制圧するため隠れながら敵を狙撃していく。
だが。遮蔽物に隠れ銃身だけ出して撃つ、というのがどうしてもまだ不慣れで敵の海賊に見つかってしまった。
『下手くそだなあ!』とAIの敵の台詞が耳に痛い。
「うわぁ、どうしよ……」
莉愛は敵に見つかったショックでさらに手元がぶれ、かすりもしない銃弾をあらぬ方向に発砲した。
テレビ画面に表示される主人公の体力ゲージが赤く点滅し、大ダメージを喰らっている事を警告する。
回復、回復しなきゃ……! 回復アイテムをすぐ使わなければと頭では理解しているのだが、敵から逃げ回るのを手元は優先してしまいこんがらがってしまう。
「もう、しょうがないな」
後ろから伸びてきた総一郎の手がコントローラーを握る莉愛の上にのる。
「三角ボタンを押して回復して」と背後にぴったり寄り添われる体勢で耳元で囁かれ、びくりと莉愛は震えた。まるでバックハグされているような姿勢である。
(ち、近い……!)
おまけに総一郎はボディミスか何かをつけているのか、微かに甘い香りが鼻孔をくすぐる。
「あ、吾妻屋くん、近すぎるよっ!」
「え~? 莉愛さん、照れてるの? 教えてあげてるだけなのに顔が真っ赤」
膝立ちになって莉愛の顔をのぞきこんでくる顔は精巧な人形のように美しい。ニヤニヤと莉愛の反応をうかがうような人の悪い笑みも、あどけなさを残したイケメンの免罪符で押し切ってしまう。
驚きとイケメンにくっつかれているという状況に心臓が早鐘をうつ。
ごく、と喉を鳴らした莉愛を彼の澄んだ目が貫いた。
「あ、死んじゃったね」
くっ付いてきた総一郎に気を取られせいだ。
敵から集中砲火を受けた主人公がバッタリ倒れ、テレビ画面にゲームオーバーの血文字が表示される。
「ちょ、ちょっと! 吾妻屋くんのせいだよっ」
「オレのせい? ふーん。オレは操作を教えてあげただけなのになぁ」
スタート地点に戻り最初からミッションをすすめることになってしまった。
総一郎は玄関で靴を脱ぎ、きちんと整えてから莉愛の部屋へと向かった。
「ね、ねぇ。今日は何するの」
「何って、莉愛さんの入部歓迎会だよ。
あとはそうだなぁ……オレの部長としてのゲームの腕前でも見せようかな」
本人の部屋で歓迎会とは斬新だ。それも十代の男女が部屋に二人きり……。
総一郎は可愛らしい外見をしているとはいえ、男だ。二人きりになって変な気をおこされたら?と莉愛は心配しているのだが、本人にそう切り出す勇気が出ない。
(吾妻屋くん、私の事どう思ってるんだろう)
本当はすごく気になる。女子と距離が近いのは元々なのか?
教室で女子と話しているのは見たことがあるが、適切な距離感をもっと保っていたよう気がするけれど、と莉愛は悶々とした。
莉愛の部屋の中央に二人は座った。白地にミルキーピンクのウサギがプリントされた丸いクッションをお尻の下に敷き、総一郎はポケットをごそごそ漁り、中から何かを取りだした。
「はい、これ。君の部活用の名刺だよ」
「えっ? 名刺……?」
長方形の小さなクリアケースに収まっているのはどぎつい蛍光イエローの名刺で、『ゲーム代行クリア部 助手役 莉愛』と黒い太文字で印字されている。
「な、なにこれ。ドンキみたいな色だし、助手って」
「インパクトが大事だと思って思い切ってそのデザインにしたんだ。あ、助手のところはね、何か役職をつけた方がそれっぽいかなと思って。……どうかな?」
自分のセンスを信じて疑わない総一郎は、ニコニコと莉愛に褒められ待ちと言った様子だ。
良かれと思ってやったことでも、反応に困る。やはり総一郎はどこか感覚がずれているらしい。
「あ、ありがとう。大事にしまっておくね」
そもそも部活で名刺なんて使うかな、と疑問と共に受け取った名刺を部屋の棚へ置いた。
「もう、そんな場所に置いたら学校に持っていくの忘れちゃうかもしれないだろう。
しっかり持ち歩いてよ」
えぇ……。莉愛は嫌そうな顔をしたが、総一郎の綺麗な顔を見るとどうも断れない。
少年アイドルみたいな顔で微笑まれるとおのずと丸め込まれてしまう。これからの学校生活の行く先が不安だな、と己の行く先を案じていると部屋中央に設置した折り畳みテーブルの上に袋に入れて持ってきたあんみつを出して歓迎会の準備を進めた。
「我が部は現在三名。ユーレイ部員のぞき二名の超少数精鋭部隊だ。
オレと君で今後活動する事になる。あらためてよろしくね」
コホンと咳払いした後総一郎は表情を引き締めて言った。
白みがかった栗色の髪に蜂蜜色の瞳、艶やかな声。容姿でいえば間違いなくクラスで一番の美男子とお近づきになったわけだ。
趣味も合いそうだし、これから楽しくなる筈、と莉愛は前向きにとらえることにした。
「うん! こちらこそよろしく」
二人は並んで座り、視線を交わして笑いあった。
「テレビ借りていい?」と莉愛の許可をとった総一郎はテレビの電源を入れ、莉愛が苦戦しているファークライ3のゲーム画面をたちあげた。
「歓迎会といえば出し物だよね。ゲームにまつわる出し物といえばアレしかない」
「アレって?」
「オレ達が意気投合したきっかけはこのステルスゲームだ。だから今から、制限時間を設けてお互いプレイする。どっちが先に進めるか勝負だ」
そんなの吾妻屋くんが勝つに決まってるじゃん、と唇を尖らせる莉愛。
「じゃあハンデをつけようか。制限時間一〇分のところ、莉愛さんは二倍の二〇分にしてあげる」
丁度三〇分のイベントになるね、と和やかに笑う総一郎。
「わ、わかった。それなら吾妻屋くんに勝てるかも」
「ふふん、それはどうかな」
得意げに鼻を鳴らし余裕たっぷりな総一郎とテーブルを挟んで向かい合い、フルーツあんみつを食べる。
自分の家の商品だから食べ慣れているのか、さほど感動は無いと言った表情で黙々と口に黒蜜のかかったミカンや白玉を運ぶ彼を見ていると、莉愛は質問したくなった。
「吾妻屋くんって家が和菓子屋さんでしょ? いつも和菓子食べてるの?」
「うーん、別にいつもではないなぁ。売れ残ったのがあれば親父がくれるから定期的に口に入るけどね」
現実的な回答に、ふうん、と相槌をうつ。
吾妻屋の店のフルーツあんみつは、豪勢だ。蜜柑やさくらんぼ、キウイなどなど、色とりどりのフルーツが白玉と口当たりのいいサイコロ状の寒天と共に盛り付けられ、上にあんこと黒蜜がたっぷりかかっている。
莉愛は目を輝かせ「いただきますっ」と手を合わせてから口をつける。
品のよい甘さが口の中いっぱいに広がり、黒蜜ときな粉の香ばしい風味がフルーツの酸味と打ち消して調和がとれている。
あまりの美味しさに食べながら顔をほころばせる莉愛に、総一郎は「莉愛さんみたいに喜んで食べてくれる人がうちにいればなぁ」と苦笑した。
「え、吾妻屋くんのご家族はそうじゃないの?」
ここだけの話、と総一郎は声を落として小さく囁いた。
「オレは正直和菓子がそこまで好きじゃないし、妹も体型を気にして甘いものはほとんど食べないから」
「そうだったんだ……。なんだか意外」
和菓子屋の息子だから必ず和菓子好きとは限らないもんね、と莉愛の中で凝り固まっていた固定観念を取り払おうとするが、なかなかむつかしい。
「小さい頃から飽きるほど食べさせられたからかなぁ、和菓子より洋菓子派なんだよね、オレ」
まあ将来家業を継げって言われてるから和菓子作りの修行はしてるけどね、とどこか思いつめたような顔をする総一郎。
すぐにハッとした顔になって「今のハナシは内緒にしてね」と人差し指を唇に当てて悪戯っぽく笑う彼に莉愛も神妙に頷いた。
「う、うん。誰にも言わないよ」
少しだけ重くなった場の空気を感じ、黙々とスプーンであんみつを食べすすめた。
二人とも食べ終えてから、勝負の幕は開いた。
ルールは先ほどの内容に加え、イベントムービーは飛ばしてよいという事になった。
じゃんけんで勝った方が先にプレイするを二人で決め、総一郎が勝つ。
「オッケー、オレが先ね」
コントローラーを持ち、スタートを切ろうとした直後思い出したように呟いた。
「あ、そうそう。負けた方は勝った方の言う事を聞く罰ゲームね」
「えぇっ⁉ そんなぁ」
嫌だよ、と首を縦に振る莉愛を横目に「君にはハンデをあげたじゃないか、嫌ならオレに勝つことだね」ととりあってくれない。
今まで総一郎がゲームしている姿をしっかり見たことは無かったので、本当に部長の座に座るのにふさわしい手腕の持ち主なのか確かめ類いい機会である。
莉愛はテレビのゲーム画面を食い入るように見つめた。
総一郎の操作する主人公は動きにそつがない。ステルスを駆使して敵を倒す鮮やかな手つきを披露し、敵の本拠地を攻め落としてしまった。
(す、すごい。私とはまるでレベルが違う)
制限時間のうちに本編ミッションを三つもこなした総一郎に莉愛が勝つ術があるのだろうか……。
「次は君の番だよ。オレと比べなくていい。君の破天荒なプレイスタイルを見せておくれ」
今回も火炎放射器使うの?とニコニコしながら聞いてくる総一郎。
「もうあれは使わないよ。これからはグレネードの時代だから」
莉愛の頭の中にある戦法は、所持できる最大数までグレネードや火炎瓶を持ちつつショットガンで地道に敵と交戦するという風だ。
ゲームが始まった。莉愛は慎重に主人公を操作し敵の拠点を制圧するため隠れながら敵を狙撃していく。
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「うわぁ、どうしよ……」
莉愛は敵に見つかったショックでさらに手元がぶれ、かすりもしない銃弾をあらぬ方向に発砲した。
テレビ画面に表示される主人公の体力ゲージが赤く点滅し、大ダメージを喰らっている事を警告する。
回復、回復しなきゃ……! 回復アイテムをすぐ使わなければと頭では理解しているのだが、敵から逃げ回るのを手元は優先してしまいこんがらがってしまう。
「もう、しょうがないな」
後ろから伸びてきた総一郎の手がコントローラーを握る莉愛の上にのる。
「三角ボタンを押して回復して」と背後にぴったり寄り添われる体勢で耳元で囁かれ、びくりと莉愛は震えた。まるでバックハグされているような姿勢である。
(ち、近い……!)
おまけに総一郎はボディミスか何かをつけているのか、微かに甘い香りが鼻孔をくすぐる。
「あ、吾妻屋くん、近すぎるよっ!」
「え~? 莉愛さん、照れてるの? 教えてあげてるだけなのに顔が真っ赤」
膝立ちになって莉愛の顔をのぞきこんでくる顔は精巧な人形のように美しい。ニヤニヤと莉愛の反応をうかがうような人の悪い笑みも、あどけなさを残したイケメンの免罪符で押し切ってしまう。
驚きとイケメンにくっつかれているという状況に心臓が早鐘をうつ。
ごく、と喉を鳴らした莉愛を彼の澄んだ目が貫いた。
「あ、死んじゃったね」
くっ付いてきた総一郎に気を取られせいだ。
敵から集中砲火を受けた主人公がバッタリ倒れ、テレビ画面にゲームオーバーの血文字が表示される。
「ちょ、ちょっと! 吾妻屋くんのせいだよっ」
「オレのせい? ふーん。オレは操作を教えてあげただけなのになぁ」
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