~ファンタジーアラカルト~お好み選びの短編集

イマノキ・スギロウ

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パーティーが全滅して俺も殺されると思ったら、なぜかVIP待遇でもてなされてるんだが?

最終話「魔王城の賢者様」

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 人と魔族の戦争が終結して双方の交流が始まってからおよそ10年の月日が流れ、世界は人と魔族がともに暮らす共存都市ができるまでになっていた。

「お~いメル、新しい共存都市の計画書とこれまでにわかった共存の際の問題点についての報告書持ってきたぞ」

 メルトーネの執務室にノックをしてラトスは人と魔族がともに生きるための計画に必要な資料を持って入って来た。

「あ、師匠、ありがとうございます」

「なぁ、何度も言うけどその呼び方もうやめしないか? もう結婚して5年も経つんだぞ?」

「けど、何と言いますか、その……恥ずかしくて」

「一回練習でいいから言ってみろよ、ほら魔法を教えた時みたいに繰り返しやらないと身に付かないぞ?」

「……あ、あなた」

「何かな? 愛しい妻よ」

「ひゃ!? う、うぅぅ~~~~///、し、刺激が強すぎますよ師匠~~」

「お前にはさんざん驚かされてるからな、これくらいの反撃は勘弁しろ」

「その言い方ずるいです~」

「何とでも言え、それより資料ここに置くぞ」

「あ、はい」

 共存都市の計画は和平会談に出席した王国の大臣とメルトーネが主導して行うことになり、魔王としての仕事と共存都市計画の両方に忙殺されることになった彼女は最初の数年間はろくにラトスと一緒にいる時間が取れなくなり、仕事の疲れというよりもラトスに会えないことで弱っている時すらあった。
 しかし、2年目、3年目と年を重ね計画が軌道に乗り始めると、彼女の仕事量も減少し、ようやくラトスとの時間ゆっくり持てるようになり、ちょうど計画開始から5年目に、二人は勇者達や親しい者を呼んで祝福されながら結婚した。

「よう、ラトス! 次の共存都市計画、隣の大陸に作ろうぜ!」

 執務室の扉をいきなり開けて入って来た勇者はそんなことを言い放つ。

「またお前はいきなり来るなりそんな無茶を……なんで隣の大陸なんだ?」

「いや~こないださぁ、発見されたばっかの隣の大陸行ってみたら向こうは人類の他に魔族じゃなくて人の姿に変身出来る竜族ってのが居たんだよ。話聞いたらまだあんまり人類と交流がないみたいだったから3つの種族が共存できる都市、作ってみたいなーと思ってな」

「思ってって、気軽に言うけどなぁ」

「面白そうですね」

「おいメル!?」

「だろ? メルトーネちゃんならきっとそう言うと思って都市作りに使えそうな土地と移動に必要な航路を調べた海図も持ってきたんだ」

「おいこら! 勝手に話を進めるんじゃない!」

「なんだよラトス、ちょっとくらいいいだろ? いくら夫婦だからって他の男と会話しただけで嫉妬するのはさすがに、」

「……頭を冷やしたいなら望み通り凍らせてやるぞ?」

 氷結魔法の冷気を手から放ちながらにじり寄ってくるラトスの目に本気の色を見た勇者は即座に撤退することを決めた。
 
「あ、すまんすまん! 少しからかっただけだろ? じゃあメルトーネちゃん、隣の大陸の資料そこに置いといたからちょっとだけでも考えといてね~」

「逃がすか! 一発食らっていけ!」

 置き土産の資料を残して勇者は空間魔法を発動させると、いずこかへ繋げた空間の穴に身体を飛び込ませ、ラトスの氷結魔法で出現した氷塊が入り込む直前に穴は消滅した。

「くそ、逃げられた」

「どれどれ~? なるほど、向こうは山岳地帯が多くて平地が少ないのか」
  
「ちょっと待てメル! まだこの大陸ですら完全に安定したとは言えないんだぞ? それなのに隣の大陸の面倒事まで抱え込む気か?」

「でももう私たちが付きっきりにならなくてもこれからは人々の力だけでも計画は進めていけます。なら次はその先を考えないと」

「…………その先、か」

 メルトーネの言葉でラトスはかつて魔法の研究の為に、次の相手を、次の研究対象を、と貪欲に今ある魔法の先を目指していた頃の自分を思い出し、都市計画の補佐でずいぶんとご無沙汰になっていた魔法の研究を久しぶりに再開しようか? と思うのだった。しかし、今はそれよりもまずこの一度言い出したら聞かない我が妻の願いをどうやって実現させてやろうかという考えが先に浮かんでくる。
 
「まったく、まだまだお前の起こす変化は大きく世界を変えそうだな」

「大きく変えなくてもいいんです。少しずつ、少しずつ変えていけばいいんです。いきなり大きく変えようとしてもそれは反発を生むだけで結局は起こせる変化も小さいものにしかなりません。だからちょっとずつでも理想の形に向けて頑張っていけば良いんです」

「なら俺はその理想に近づける手助けをすればいいのかな?」

「はい、ししょ…じゃなかった。あ、あなたと一緒ならどんなことだってできます!」

「そうだな、なら賢者として魔王様の理想を叶えるためにこの知恵をお貸しするとしましょう」

「はい! これからもよろしくお願いします! 私の賢者様♡」


 終わり。
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