~ファンタジーアラカルト~お好み選びの短編集

イマノキ・スギロウ

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男の俺が転生させられたら女勇者になってた件

第1話「転生」

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 【作品紹介】

 はい、毎度おなじみ異世界転生で勇者しちゃう系ストーリーです。生前男の主人公が転生すると、なんとその身体は女の子!
 周囲の視線や自分の身体との問題になんやかんや苦労しつつ、魔王を討伐しようと意気込んで頑張るのですが、
彼の背後をこっそりと付いてくる小さな影が一つ。さあ、その結末はどうなるのか? どうぞお楽しみください。

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 事故死した俺、鈴木すずき 太郎たろうがいかにもに神って雰囲気の後光を背負った長ヒゲのじーさんに「魔王に脅かされた儂の世界を救ってくれ」と頼まれて、よっしゃ第2人生ゲット! とかその時は思ってたわけよ。

 神のじーさんから勇者として色々力も授けるとか言われて七つの魔法属性全部が使える虹色の魔眼とか武術の才能を最高レベルで得られる加護とかとりあえず世界を救うのに不自由しないだけの力をもらった。うん、そこまでは良いんだ。

 だがなじーさん、一つだけアンタは間違えた。
 俺は一言も『女』に転生させろとは言ってねーぞぉーーーーーーーー!!!!!!

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 ~ロナス王国の王城 謁見の間~

「面を上げよ」

「は」

「よく来た勇者ディアーユよ、この国に巣食う多数の魔物を倒したお主の力があればかならずや魔王も仕留めることが出来るだろう。我々はお主を歓迎するぞ」

 女に生まれてしまった事はともかくとして、自分から引き受けた上に一応力も授かった手前、鈴木太郎ことディアーユ・レミタは魔王を討伐する勇者として成人したと同時に行動を開始した。そして手始めに多数の魔物を倒していくつかの村を救ったディアーユは自分の住んでいるロナス王国の国王に勇者として認められ、謁見する運びとなっていた。

「……ありがとうございます」

 しかし勇者の登場に喜びの表情を見せる国王に対して、当の勇者ディアーユはというと、顔こそ平静を保っていたが、言葉にはどこか投げやりな感情が見え隠れしていた。

「魔王討伐の旅に出るお主には我が国の騎士団から選りすぐりの猛者を供に…」

「いえ結構です。一人で充分ですので」

「な、なんじゃと?」

 勇者ディアーユの言葉に国王は驚きの表情を見せる。 

「はっは、勇者殿は魔王軍の強さをご存知ないと見える。いかに強力な魔法や剣技を修めていても一人であの軍勢と戦うのは無理というものですよ」

 そこに国王の横に控えていた騎士団長が経験不足の新人を諭すようにそう話す。

「なら証明しましょうか?」

「どのようにしてですか?」

「騎士団との模擬試合を、軍勢と戦える所を御見せしましょう」

「……我が騎士団全員と一度に戦うと?」

「そう言っています」

「ふむ……、陛下、模擬試合の御許可をいただけますでしょうか?」

 少しだけ騎士団長が考える素振りを見せたあと、国王に模擬試合をの許可を貰おうとする。

「構わんが、騎士団全員が相手ではいくら勇者といえど厳しいのではないか?」

「大丈夫です」

「陛下、むしろ勇者殿の力を持ってしても成し遂げる事が困難な事はあると知って貰う良い経験となるかと、なんでしたら模擬戦の後、しばらく勇者殿にご滞在して集団戦の手解きをして差し上げるのも有益かと愚考します」

「わかった許可しよう」

「ありがとうございます。では勇者殿、鍛錬場にお越しください」

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 ~鍛錬場~

 城の裏手にある屋外の鍛錬場で一方の側には模擬試合用の木剣や槍を携えた騎士達が鍛錬場に整列し、その反対側ではただ一人、恩納勇者のディアーユが木剣と盾を持って立っていた。

 そして観戦者達の中から国王が一歩前に出ると、ルール説明をし始める。

「双方とも使う武器は訓練用の物のみ。魔法の使用は鍛錬場に張った結界が身を守るのでそうそう死にはしないが、毒や即死系の魔法は禁止とする。用意はよいか?」

「こちらは全員用意完了しました。いつでもよろしいですよ」

「……始めてください」

「それでは、模擬試合開始!」

 ……それからおよそ30分後、模擬試合の結果を一言で言うなら一方的な蹂躙だった。

 まず試合が始まって騎士団が最初に行った多様な魔法攻撃はディアーユの虹色の魔眼でことごとく相殺され、続いて突撃してきた槍兵隊は武術の加護と生まれてから鍛え続けた戦闘技術と筋力によってリーチ差をものともしない受け流しと当身で騎士たちを次々と気絶させていった。
 そうして半数程の騎士が倒された所で、業を煮やした騎士団長と実力者である部隊長3人がディアーユを取り囲んだかと思うと、一斉に斬りかかってきた。
 しかし、ディアーユは冷静に一人一人の剣の軌道を読み切って、躱し、受け流し、反撃を加え、最後に騎士団長のアゴに強烈なアッパーをかまして見せた。

 鍛錬所の空に自分たちのリーダーである騎士団長が舞う姿を見せられた騎士達はその時点で大半が戦意を喪失していたが、後ろに引っ込んでいるくせに負けを認めようとしない残った部隊長達のせいで部下である騎士達は結局最後まで戦う羽目となり、ディアーユはそのことごとくを気絶させて騎士団は全滅した。

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  ~謁見の間~

「それでは出立させてもらいます」

 試合が終わった数時間後、旅支度を整えたディアーユは再び謁見の間で国王に出発の挨拶をしていた。

「本当に良いのか? お主に勝てないまでも何人か実力のある騎士を引き連れて行けばそれだけ戦いが楽に…」

「そのお気持ちだけいただいておきます。それでは」

 謁見の間から勇者が出て行くと、国王は傍にいた包帯でぐるぐる巻きになった騎士団長の方を見てため息交じりに言葉をこぼす。
 
「今回は失敗だったな騎士団長、予定していたよりもうまい具合に事が運んだかと思ったが、あれでは」

「いえ、なればこそです。独力で騎士団を倒せる程のあの力、なんとしても我がロナス王国に取り込まねば」

「とはいえ、あの者に見合う相手などいるのか? ワシのボンクラ息子共では100年かかっても嫁にするどころか試合に勝つことも出来るとは思えんぞ?」

「無理をして王族に迎え入れようとする必要もありますまい。あれの夫になれるだけの男を探してそれなりの爵位と領地を与え、後は飼い殺しにしてしまえば充分です」

「武力としてのみ手元に置いておけばよい…か、なるほど、では次の手を考えるとしよう」

 国王と騎士団長は勇者がロナス王国に滞在している間にその力を持った子どもを王国の戦力として手に入れようとした計画が失敗したことで新しい取り込み計画について話を始めるのだった。

 そしてその二人の会話を音魔法で盗聴していたディアーユはというと、心底うんざりした顔をしながら城下町を歩いていた。

 ――くそ、勇者として行動を始めてからこっち、どいつもこいつも似たような目で見やがって。

 魔物に襲われた村を救ったらぜひ村長の息子と結婚してほしいだとか、
 
 街の魔物退治の仕事を冒険者と一緒に引き受けたら、仕事が終わったら俺と所帯を持たないか?だとか、
 
 貴族の屋敷の悪魔を倒しに行ったら何不自由ない暮らしをさせてやるから妾になれだとか、

 
 どこに行っても男どもの視線が俺のあちこちをなめる様に見回しやがる! ふざけんな! 身体は女になっても心まで女になった覚えはねぇ!! 野郎とくっつけられてたまるか!!!

 それにまだ俺には希望がある。魔王を倒した暁には長ヒゲのじーさんからなんでも一つだけ願いを叶えるという約束をしている。そうだ、魔王を倒して俺は晴れて男として英雄ライフを満喫してやる。

 そうして決意を新たに女勇者ディアーユはロナス王国から魔王討伐に向けて旅立つのだった。
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