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第一章 ~新人研修~ヴィーギナウス編
第03話 「魔王城ですね!」
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異世界ヴィーギナウスに転移したメアリーベルとデスフレアが最初に降り立った場所は険しくも雄大な大自然の景色が眼下に広がる山脈の頂上だった。
「ふわぁ~、異世界だ~!」
「そうね」
「そうねって異世界ですよ先輩! こんなすごい景色見て感動しないんですか!?」
「あのね、私がどれだけこの仕事してると思ってるのよ、初めて転移した先の世界の景色に感動するほどもう子供じゃないわよ」
「…旅行の醍醐味全否定ですね先輩」
「別に景色そのものを嫌ってるわけじゃないわよ。たしかに綺麗であることは認めるけど、あんた忘れてない? 私たちはこれからこの景色を含めた世界すべてにケンカを売るのが仕事なのよ? いちいち綺麗だとか思って仕事の手を鈍らせるような事だけはないようにね?」
「あーはい、気を付けます」
「あと資料を読んだから知ってると思うけど、今回の仕事はさっき話したうちの一つ、『事前訓練』に該当するから、くれぐれもやり過ぎたり、必要以上に世界をぶっ壊さないように」
「了解です。悪の魔王が来てもいいようにこの世界のみんなを鍛えてあげます」
「じゃまずは手始めに拠点作りから始めましょうか」
「あ、魔王城ですね!」
「そう、どこか手頃な場所がすぐ見つかると良いんだけど……」
「先輩の作る魔王城ってどんなすごいのなんですか~? いまから楽しみです~!」
「なに言ってんの、作るのはあんたよデスフレア?」
「えぇ~~~!? む、無理ですよ~、私魔王免許は持ってますけど建築士の資格は持ってませんよぉ~」
「アホか! だれが素手で作れっつった! 魔法で作るに決まってるでしょうが!!」
「で、でも私、魔法でもお家作りってしたことありませんよ?」
「はあ~、ちゃんと私が説明しながら作らせるから安心しなさい。ただし、手順はしっかり覚えて一人でも出来るように練習するのよ?」
「は~い、ありがとうございます先輩」
そうして二人は山頂部から移動を開始し、魔王城を作るのに適した土地を探して方々を飛び回りながら行く先々で見つけた集落や大きな街にも足を運んだ。
ーとある街の酒場ー
いつもの荒くれ者の客に飯と酒の注文、酒場を開いてから今日まで変わらない店主の日常にその日だけはちょっとした変化があった。
見慣れたいつもの客に交じって明らかによそから来たと思わしき恰好の女二人。金髪と赤髪の色も相まってなかなかの美人だ。
「おっちゃん、私とこの子になんか適当に軽い酒とつまみ頂戴。あと情報もほしいんだけど、」
カウンターに着くなり酒と情報の注文を慣れた様子でする金髪美人に店主は間を置かずに答える。
「はいよ、酒とつまみ二人前だな、女の二人旅とは珍しいな。何が聞きたい?」
「このあたりで良い岩が取れる採掘場ってないかしら?」
「岩の採掘場? 岩ってそこらの道端に転がってる様なのじゃなくてか?」
「建材に使えるようなのを探してるのよ」
「建材か、う~ん、それだったらこの街から大分北に行った先にかなり大きな岩場があるんだが、そこだったら使えるのがあるかもな、この街を含めたハジメーナ王国の王城の城壁にもそこの岩が使われたって話だし」
「ふ~ん、ありがとおっちゃん、これ情報料」
金髪の女性はそう言うと情報料として銅貨を十枚出して来た。
「まいど、また知りたい事があったらいつでも来な」
「ありがと」
「うぇ~、ここのお酒苦いですせんぱーい」
「フレア黙って飲みなさい」
二人はその後も周りの男連中の誘いを全て断りながら、酒とつまみを平らげると酒場を出て行った。いつもは酔っぱらったバカどもとの会話くらいしか楽しみがないが、たまにはああいう美人を拝める眼福の日があってもいいだろう。店主はそう思いながら二人のジョッキと皿を片付けてまたあたらしい注文に手を動かすのだった。
「そう言えば先輩、こっちのお金どうやって調達したんですか?」
「簡単よ、派遣の依頼が来るときにその世界の神が人間たちが使ってる通貨を一通り送ってくるのよ。あとはそれを活動資金として適量コピーして転移する時に持ってくるだけ」
「それってもしかしなくても偽通貨なんじゃ」
「成分も形状もほぼ100%同じだから中世から産業革命くらいまでだったらまずばれないわよ。まぁさすがに透かしとか複雑な形状とか魔法術式が掛かってるのとか無駄に凝った通貨・紙幣だったら手間だけどね」
「おそるべし、邪神人材派遣会社」
ー翌日ー
メアリーベルとデスフレアは北の地にある岩場に降り立ち、周囲に人がいない事を確認すると、魔法で岩の切り出し作業を始めた。
「デスフレア~、そっちはどう?」
「たくさん取れました~」
家一軒分ほどありそうなサイズの岩を何個も魔法でふわふわと浮かせながらデスフレアは褒めてほしい小犬のような顔でメアリーベルの元に駆け寄ってきた。
「お~、おっちゃんの情報通り結構良い岩が多いわね」
「先輩、これどうします?」
「ん? 運ぶにきまってるでしょ?」
「あ~やっぱりそうですよね」
「この間見つけた山間部の盆地に持ってくわよ」
「了解で~す」
二人はそれぞれに切り出した岩を魔法で持ち上げると岩場を後にし、目的の場所に向かって飛び去って行った。
ーとある山間部ー
ずぅぅんっ
巨石が山ほど盆地に積まれ、デスフレアは魔王城作りの材料を一つ揃えた事に一仕事終えた満足感を感じていた。
「ふー、とりあえず一息」
「ついてるヒマなんてないわよ」
「えぇ~、」
「文句言わない」
「また材料集めですか~」
「いや、ひとまず材料はもう周囲にあるものでどうにかなるから、岩で基礎部分や城壁を作りながら周囲の木材で骨組みを組むわよ。そこまでやったらまた次の説明をするから」
「や、やってみます」
「ちなみに新人研修の一環だから私は基本口は出せても手は出せないから頑張ってね~」
「そんな~」
「まずはデスフレア、これ魔法で粉にして」
「なんですこれ、小石?」
「軽石よ、最初にこの世界を回った時に集めといたの」
「これをどうするんですか?」
「岩だけ積み重ねてもすぐ崩れちゃうでしょ、これがコンクリの代わりになるの」
「軽石が、ですか?」
「いいから言われた通りにしなさい」
「は~い」
メアリーベルの指示に従ってデスフレアは風魔法を駆使して軽石を小麦粉並みにさらさらの粉にした。
「終わりました~」
「じゃ次はこれと混ぜ合わせて」
「これは?」
「樹脂と砂利」
「じゅし?」
「それと魔法で粘着力の強い液体を出して一緒に混ぜなさい」
「は、は~い」
いまいち指示の内容を理解できないながらもデスフレアはメアリーベルの言うとおりに粉と樹脂、そして粘着力のある液体を混ぜ合わせどろっとした物体ができあがった。
「先輩、ほんとにこれがコンクリになるんですか?」
「正確にはモドキね。魔法建築は当然として、モノホンのコンクリートや鉄筋建築ですら使っちゃうとこの時代にとってはオーバーテクノロジーになるからね。できるだけ彼らの建築レベルに合わせてそれっぽいのにする必要があるの」
「ふえ~派遣業ってめんどうなんですね」
「これからその面倒なのを何度もやらなくちゃいけなくなるんだからしっかり覚えときなさい」
「了解で~す」
「さ、じゃあこのコンクリモドキは私が時間停止の魔法掛けとくから、じっくり時間かけてあんたなりの魔王城を作りなさい」
「……ほんとに私が全部やるんですか? ちょっとだけお手本とか、」
「甘えるな、岩の積み方はこの土地を探す道中で何度もやってみせたでしょうが、基本はあれの繰り返しで城の形にするだけよ。あ、一つ積むごとにコンクリモドキを塗っていくのを忘れないように」
「は~い」
初めての築城作業におっかびっくりの手つきながらもデスフレアは魔法を駆使して岩をちょうどいい大きさにカットしたり、積み重ねたりしながら城作りを進めていき、数日後、ようやく城の原型が完成した。
「だいぶそれらしくなったじゃない。あとは魔王城としての装飾だけど、なにかアイデアはあるの?」
「えっと、私なりの装飾でいいなら魔法ですぐできますけど、」
「じゃあとりあえずそれでやってごらんなさい」
「分かりました」
それから半日後、デスフレアは魔法で城をカラフルに彩色し、植物を各所に纏わせてみるからに幻想的な花のお城を…、
「ってアホかあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ひぃ!」
「あんた自分の仕事なにか言ってごらん!? ん?」
「え、えっと、魔王です」
「魔王がこんなお花一杯のかわいいお城に住んでると本気で思ってんの!?」
「だ、だめですかぁ?」
「当然でしょ!!」
「す、すいません。やり直します」
さらに次の日、外観は黒を基調にした魔王城らしい趣の城が立ちその周囲には色とりどりの花々が咲き乱れる庭園が広がり……、
「今すぐ燃やそう」
両手に炎を出現させて花を焼却しようとするメアリーベルにデスフレアが必死に縋り付く。
「待ってくださ~い! これだけのお花育てるの時間加速と植物を操る魔法駆使しても大変だったんですよ~?」
「その情熱をもっと別の方向で役立てなさい!」
「せめて、せめてお花さんたちにはなにとぞお慈悲を~」
「たく、だったらこの花全部どこか別の場所に移植するなりなんなりしてきなさい。間違っても魔王城から見える範囲で花畑なんて作るんじゃないわよ?」
「りょ、了解で~す」
「……はぁ~、なんで本格的な業務開始前からこんな疲れる思いしなきゃなんないのよ」
「過労ですか? 先輩」
「誰のせいよ!?」
それから結局ほとんどメアリーベルが指示を出し、ようやく魔王城らしい魔王城が完成した。周辺には毒の沼や茨に包まれた森が広がり、城の周りは掘りで囲んで水を張り一般的な攻城戦も可能な防備を備えていた。
「で、魔王城が完成したわけだけど、次はなにをやるか分かる? デスフレア」
「えっと、落成式ですか?」
「ちがう! 魔王として最も重要な業務があるでしょう?」
「なんですか?」
「魔物の創造よ!」
「ふわぁ~、異世界だ~!」
「そうね」
「そうねって異世界ですよ先輩! こんなすごい景色見て感動しないんですか!?」
「あのね、私がどれだけこの仕事してると思ってるのよ、初めて転移した先の世界の景色に感動するほどもう子供じゃないわよ」
「…旅行の醍醐味全否定ですね先輩」
「別に景色そのものを嫌ってるわけじゃないわよ。たしかに綺麗であることは認めるけど、あんた忘れてない? 私たちはこれからこの景色を含めた世界すべてにケンカを売るのが仕事なのよ? いちいち綺麗だとか思って仕事の手を鈍らせるような事だけはないようにね?」
「あーはい、気を付けます」
「あと資料を読んだから知ってると思うけど、今回の仕事はさっき話したうちの一つ、『事前訓練』に該当するから、くれぐれもやり過ぎたり、必要以上に世界をぶっ壊さないように」
「了解です。悪の魔王が来てもいいようにこの世界のみんなを鍛えてあげます」
「じゃまずは手始めに拠点作りから始めましょうか」
「あ、魔王城ですね!」
「そう、どこか手頃な場所がすぐ見つかると良いんだけど……」
「先輩の作る魔王城ってどんなすごいのなんですか~? いまから楽しみです~!」
「なに言ってんの、作るのはあんたよデスフレア?」
「えぇ~~~!? む、無理ですよ~、私魔王免許は持ってますけど建築士の資格は持ってませんよぉ~」
「アホか! だれが素手で作れっつった! 魔法で作るに決まってるでしょうが!!」
「で、でも私、魔法でもお家作りってしたことありませんよ?」
「はあ~、ちゃんと私が説明しながら作らせるから安心しなさい。ただし、手順はしっかり覚えて一人でも出来るように練習するのよ?」
「は~い、ありがとうございます先輩」
そうして二人は山頂部から移動を開始し、魔王城を作るのに適した土地を探して方々を飛び回りながら行く先々で見つけた集落や大きな街にも足を運んだ。
ーとある街の酒場ー
いつもの荒くれ者の客に飯と酒の注文、酒場を開いてから今日まで変わらない店主の日常にその日だけはちょっとした変化があった。
見慣れたいつもの客に交じって明らかによそから来たと思わしき恰好の女二人。金髪と赤髪の色も相まってなかなかの美人だ。
「おっちゃん、私とこの子になんか適当に軽い酒とつまみ頂戴。あと情報もほしいんだけど、」
カウンターに着くなり酒と情報の注文を慣れた様子でする金髪美人に店主は間を置かずに答える。
「はいよ、酒とつまみ二人前だな、女の二人旅とは珍しいな。何が聞きたい?」
「このあたりで良い岩が取れる採掘場ってないかしら?」
「岩の採掘場? 岩ってそこらの道端に転がってる様なのじゃなくてか?」
「建材に使えるようなのを探してるのよ」
「建材か、う~ん、それだったらこの街から大分北に行った先にかなり大きな岩場があるんだが、そこだったら使えるのがあるかもな、この街を含めたハジメーナ王国の王城の城壁にもそこの岩が使われたって話だし」
「ふ~ん、ありがとおっちゃん、これ情報料」
金髪の女性はそう言うと情報料として銅貨を十枚出して来た。
「まいど、また知りたい事があったらいつでも来な」
「ありがと」
「うぇ~、ここのお酒苦いですせんぱーい」
「フレア黙って飲みなさい」
二人はその後も周りの男連中の誘いを全て断りながら、酒とつまみを平らげると酒場を出て行った。いつもは酔っぱらったバカどもとの会話くらいしか楽しみがないが、たまにはああいう美人を拝める眼福の日があってもいいだろう。店主はそう思いながら二人のジョッキと皿を片付けてまたあたらしい注文に手を動かすのだった。
「そう言えば先輩、こっちのお金どうやって調達したんですか?」
「簡単よ、派遣の依頼が来るときにその世界の神が人間たちが使ってる通貨を一通り送ってくるのよ。あとはそれを活動資金として適量コピーして転移する時に持ってくるだけ」
「それってもしかしなくても偽通貨なんじゃ」
「成分も形状もほぼ100%同じだから中世から産業革命くらいまでだったらまずばれないわよ。まぁさすがに透かしとか複雑な形状とか魔法術式が掛かってるのとか無駄に凝った通貨・紙幣だったら手間だけどね」
「おそるべし、邪神人材派遣会社」
ー翌日ー
メアリーベルとデスフレアは北の地にある岩場に降り立ち、周囲に人がいない事を確認すると、魔法で岩の切り出し作業を始めた。
「デスフレア~、そっちはどう?」
「たくさん取れました~」
家一軒分ほどありそうなサイズの岩を何個も魔法でふわふわと浮かせながらデスフレアは褒めてほしい小犬のような顔でメアリーベルの元に駆け寄ってきた。
「お~、おっちゃんの情報通り結構良い岩が多いわね」
「先輩、これどうします?」
「ん? 運ぶにきまってるでしょ?」
「あ~やっぱりそうですよね」
「この間見つけた山間部の盆地に持ってくわよ」
「了解で~す」
二人はそれぞれに切り出した岩を魔法で持ち上げると岩場を後にし、目的の場所に向かって飛び去って行った。
ーとある山間部ー
ずぅぅんっ
巨石が山ほど盆地に積まれ、デスフレアは魔王城作りの材料を一つ揃えた事に一仕事終えた満足感を感じていた。
「ふー、とりあえず一息」
「ついてるヒマなんてないわよ」
「えぇ~、」
「文句言わない」
「また材料集めですか~」
「いや、ひとまず材料はもう周囲にあるものでどうにかなるから、岩で基礎部分や城壁を作りながら周囲の木材で骨組みを組むわよ。そこまでやったらまた次の説明をするから」
「や、やってみます」
「ちなみに新人研修の一環だから私は基本口は出せても手は出せないから頑張ってね~」
「そんな~」
「まずはデスフレア、これ魔法で粉にして」
「なんですこれ、小石?」
「軽石よ、最初にこの世界を回った時に集めといたの」
「これをどうするんですか?」
「岩だけ積み重ねてもすぐ崩れちゃうでしょ、これがコンクリの代わりになるの」
「軽石が、ですか?」
「いいから言われた通りにしなさい」
「は~い」
メアリーベルの指示に従ってデスフレアは風魔法を駆使して軽石を小麦粉並みにさらさらの粉にした。
「終わりました~」
「じゃ次はこれと混ぜ合わせて」
「これは?」
「樹脂と砂利」
「じゅし?」
「それと魔法で粘着力の強い液体を出して一緒に混ぜなさい」
「は、は~い」
いまいち指示の内容を理解できないながらもデスフレアはメアリーベルの言うとおりに粉と樹脂、そして粘着力のある液体を混ぜ合わせどろっとした物体ができあがった。
「先輩、ほんとにこれがコンクリになるんですか?」
「正確にはモドキね。魔法建築は当然として、モノホンのコンクリートや鉄筋建築ですら使っちゃうとこの時代にとってはオーバーテクノロジーになるからね。できるだけ彼らの建築レベルに合わせてそれっぽいのにする必要があるの」
「ふえ~派遣業ってめんどうなんですね」
「これからその面倒なのを何度もやらなくちゃいけなくなるんだからしっかり覚えときなさい」
「了解で~す」
「さ、じゃあこのコンクリモドキは私が時間停止の魔法掛けとくから、じっくり時間かけてあんたなりの魔王城を作りなさい」
「……ほんとに私が全部やるんですか? ちょっとだけお手本とか、」
「甘えるな、岩の積み方はこの土地を探す道中で何度もやってみせたでしょうが、基本はあれの繰り返しで城の形にするだけよ。あ、一つ積むごとにコンクリモドキを塗っていくのを忘れないように」
「は~い」
初めての築城作業におっかびっくりの手つきながらもデスフレアは魔法を駆使して岩をちょうどいい大きさにカットしたり、積み重ねたりしながら城作りを進めていき、数日後、ようやく城の原型が完成した。
「だいぶそれらしくなったじゃない。あとは魔王城としての装飾だけど、なにかアイデアはあるの?」
「えっと、私なりの装飾でいいなら魔法ですぐできますけど、」
「じゃあとりあえずそれでやってごらんなさい」
「分かりました」
それから半日後、デスフレアは魔法で城をカラフルに彩色し、植物を各所に纏わせてみるからに幻想的な花のお城を…、
「ってアホかあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ひぃ!」
「あんた自分の仕事なにか言ってごらん!? ん?」
「え、えっと、魔王です」
「魔王がこんなお花一杯のかわいいお城に住んでると本気で思ってんの!?」
「だ、だめですかぁ?」
「当然でしょ!!」
「す、すいません。やり直します」
さらに次の日、外観は黒を基調にした魔王城らしい趣の城が立ちその周囲には色とりどりの花々が咲き乱れる庭園が広がり……、
「今すぐ燃やそう」
両手に炎を出現させて花を焼却しようとするメアリーベルにデスフレアが必死に縋り付く。
「待ってくださ~い! これだけのお花育てるの時間加速と植物を操る魔法駆使しても大変だったんですよ~?」
「その情熱をもっと別の方向で役立てなさい!」
「せめて、せめてお花さんたちにはなにとぞお慈悲を~」
「たく、だったらこの花全部どこか別の場所に移植するなりなんなりしてきなさい。間違っても魔王城から見える範囲で花畑なんて作るんじゃないわよ?」
「りょ、了解で~す」
「……はぁ~、なんで本格的な業務開始前からこんな疲れる思いしなきゃなんないのよ」
「過労ですか? 先輩」
「誰のせいよ!?」
それから結局ほとんどメアリーベルが指示を出し、ようやく魔王城らしい魔王城が完成した。周辺には毒の沼や茨に包まれた森が広がり、城の周りは掘りで囲んで水を張り一般的な攻城戦も可能な防備を備えていた。
「で、魔王城が完成したわけだけど、次はなにをやるか分かる? デスフレア」
「えっと、落成式ですか?」
「ちがう! 魔王として最も重要な業務があるでしょう?」
「なんですか?」
「魔物の創造よ!」
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