おお魔王よ、死んでしまうとはお疲れ様です。

イマノキ・スギロウ

文字の大きさ
5 / 21
第一章 ~新人研修~ヴィーギナウス編

第04話 「魔物作りいってみよ~」

しおりを挟む
 想定していたよりも時間こそかかったがようやく魔王城が完成し、メアリーベルは次の段階として魔物作りを開始するべくデスフレアを連れて城の広間で説明をしていた。

「ところでデスフレアは生物創造系の魔法はなにか使えるの?」

「植物や溶岩なんかに魔力を注ぎ込んで魔物にするのは得意です!」

「植物系と物質系の魔物か、それ以外のタイプで作るのは苦手?」

「ちょっと時間が掛かったりうまく形に出来ない時もありますが完全に出来ないわけじゃありません」

「なら、植物メインで他も適当に数だけ揃えればいけるかな?」

「魔物作りって全部自分でやるんですか?」

「そりゃ最初はそうよ。繁殖できるやつは交配させて増やすやり方もあるけど、それだって最初のつがいをつくるのは私たち魔王の仕事よ。あと作るときには強弱も付けないとだけど」

「強弱?」

「魔物を作るのにも強さに段階を設けないといけないの、もし人間が束になっても勝てないような魔物ばっかり作っちゃったら神の代行者……勇者が戦闘で成長しづらくなっちゃうでしょ」

「先輩私にはきびしいのに勇者さんには甘いんですね」

「ちがうわ、仕事をスムーズに終わらせる為にも徐々にレべリングしてサクッと魔王城攻略に来てもらった方が都合が良いのよ。この仕事いくら時間がかかっても派遣一回分の固定給以外はサービス残業扱いなのよ? おまけに何年どころか数世代掛かりでようやく魔王城攻略した軟弱勇者のせいで帰ってきたときには軽く浦島状態になった同僚も居るけどそうなりたい?」

「手取り足取りしっかり勇者くんを成長させて定時で帰りましょうそうしましょう!」

「よろしい。それじゃさっそく魔物作りいってみよ~」


 ー2週間後ー


「せんぱーい、新しい魔物作りました~」

「……見せて御覧」

「バラの妖精ちゃんです! 可愛いでしょ!」

「夢の国でも作る気かあんたは」

「え~ダメですか~?」

「花ベースで作るならせめてクリーチャーっぽくしなさいって何度も言ってるでしょ!」

「でもそれだと可愛くないし、」

「あのねぇ~、こんな小人に羽生やしたいかにも妖精風なのがモンスターとして襲ってきたら現地住民の人族が他種族すべてに疑心暗鬼になるでしょうが!」

「え~でも魔王なんですからそのくらいは別に気にしなくても~」

「派遣業舐めんな! 依頼人である神の要求が無い限り、勝手なことしたらその分は私たちの給与から差し引かれるのよ!?」

「え、そんなに厳しいんですか?」

「正直私が新人時代に一回ミスった時はごにょごにょごにょっ」

「うえ!? そんなにもってかれるんですか?」

「邪神様の方針は『自分の失敗は身を持って反省する』だからね~。ヘタしたらもっといくかも」

「今すぐ作りなおしてきます!!」

 足早に部屋を後にしたデスフレアの姿を見送りながらメアリーベルは本当にあの子は魔王としてやっていけるのだろうか、今ならまだあきらめさせた方が本人の為になるのでは?と真剣に考え始めていた。



 ―――なんだかんでこの世界に転移してきて半年の月日が過ぎた。その間デスフレアがやることなすこといちいち修正してきたが、どうにもあの子実力はあっても性格はいまいち魔王に向いてない気がする。社の医療部にこの件話といた方がいいかなぁ? 適性検査に性格診断入れろって。

「せんぱ~い、今日の魔物の繁殖作業終了で~す」

「ごくろうさま、使い魔の魔法覚えてから大分効率よくなったでしょ?」

「はい、魔法で分身の術が出来るなんて知りませんでした」

「分身って言うか魔力で操り人形を作ってるだけだけどね」

「そういえば今日最初に作った魔物達が規定の頭数に達しました~」

「へぇ、もうそんなに増えたのね」

「はい~、植物ベースにしたおかげが、生命力が強くてどんどん増えてくれました」

「ならそろそろ次の段階に行った方がいいかな?」

「次の段階はなんですか?」

「次は中ボス作りよ」

「中ボス、ですか」

「いままで魔物作りをしてきて大体の要領は分かってきたでしょ? 今度は繁殖させた個体を使ってもいいし、新しく作ってもいいから、他の魔物達よりも一段階か二段階くらい上の強さを持たせる事を重点に作ってみなさい」

「はい、やってみます」

 メアリーベルから説明を受けたデスフレアはさっそく魔物の創造を開始し、それから数日後に試作として作った四体の魔物を連れてメアリーベルの元にやってきた。

「どうですか先輩?」

「ん~、実力見るなら戦うのが一番ね、デスフレア一体ずつかかってくるようそいつらに指示出して」

「は、はい、じゃあまずは、ローズプラントゴーレム! 先輩に攻撃!」

「ゴオォ!」

 デスフレアの指示で全身にバラの花と茨の刺が生い茂った巨大なゴーレムがその巨腕を振りかぶり、メアリーベルへと振り下ろした。
 衝撃が周囲に広がり、デスフレアはインパクトの瞬間目を閉じてしまったが、数瞬後に薄目を開けるとそこにはゴーレムの巨腕を片手で受け止めているメアリーベルの姿があった。

「ゴ!」

 ゴーレムは受け止められた腕を再度振り上げて叩きつけようとしたが、メアリーベルはその前にゴーレムの眼前にジャンプし、回し蹴りを叩き込んだ。頭に蹴りを食らったゴーレムは上下が入れ替わるように半回転して地面にたたきつけられ、さらにそこからメアリーベルの追撃を受けて、地面にめり込んだゴーレムは完全に身動きがとれなくなった。
 
「うん、こんなもんか、パワーはなかなかね。けどこれ最初の方の中ボスにするにはちょ~っと強すぎ。デスフレア次」

「はい、ヤマタノウルフ! 先輩に噛みつけ!」

「「「「「「「「ガゥ!」」」」」」」」
 
 八つの頭を持つ巨大な狼がその口を広げて飛びかかったが、メアリーベルはそのことごとくを避けて、しっぽをつかむとぶんぶん振り回して投げ飛ばした。壁に激突したヤマタノウルフはなおも戦闘を続けようとしたが、メアリーベルの姿を見失い、周囲を見回しているうちに真下に潜ったメアリーベルの一撃を腹に食らって戦闘不能になった。

「これもちょっと強過ぎね、せめてこの半分の頭数なら人間でもなんとかなるかもしんないけど、生まれたばかりでこれじゃ成長後はヘタなラスボスくらいの強さがあるわよこの子」

「はい、なんとか強さの調整してみます。次は、ボルケーノナーガ! 先輩に…、」

「しゃ~!」

 言うが早いか動くのが早いか、ボルケーノナーガと呼ばれた巨大蛇、否、巨大溶岩蛇はデスフレアが攻撃を指示する前に行動に出ていた。

「へぇ、主人の命令が待てないなんていけない子ね」

 とはいえ、メアリーベルも魔王してその程度の不意打ちには慣れっこであり、ボルケーノナーガの噛みつきやしっぽの横薙ぎは一つとしてかすりもしなかった。

「しゃぁあ~!」

 どれだけ攻撃しても当たらないことにイラ立ったのか、ボルケーノナーガはメアリーベルの周囲を自身の身体でぐるりと囲むと燃えさかる自分の身体でメアリーベルを締め上げようとした。

「熱いの苦手だからこないで」

 パキィィン!

 ボルケーノナーガの身体がまさに触れるその瞬間、メアリーベルの発動した氷魔法によって一瞬のうちにボルケーノナーガは氷漬けになった。

「デスフレア~、魔物の躾けくらい私が居なくてもしっかりやんなさいよ」

「すいません先輩! もうこんなことは無いようにしますので、許してください!」

「別に血気盛んな魔物自体は良いんだけど、命令無視を常態化させると後で業務に支障がでることもあるから躾けだけはきちんとね」

「はい! じゃ最後は、あれ? 私のイチオシのピンクベアーちゃんが……?」

「……それってあそこの柱の陰で震えてる赤いリボン付けた熊型の魔物?」

「あ! はい、そうなんですけど、どうしちゃったんだろ?」

「たぶん私の魔法見て自分も氷漬けにされるとかビビってるんじゃないの?」

「あ~なるほど、大丈夫だよ~、氷漬けになっても死なないよ~」

「フォローになっとらん! というかデスフレア、今日来た時から気になってたけどあれも中ボス候補の魔物なの?」

「そうですよ? どこか変なとこあります?」

「ありまくりだわ! どこの世界に赤いリボンを首につけたピンクの熊と命懸けの死闘をする勇者がいるってのよ!?」

「でもファンタジーな世界なんですからこれくらい…、」

「限度があるわ! 異世界ファンタジー舐めんな!!」

「じゃあ外の世界に出したらダメですか?」

「ダメに決まってるでしょ!」

「わかりました~、新しいの作ってきます(悲)」



 それからさらに二週間後、デスフレアは何度かメアリーベルに中ボスの実力を見てもらい、その意見を参考にしてそこそこの数の中ボスを揃えることができた。そんなある日…、

「では、中ボスの数も大分揃ったことだし今日から外回りよデスフレア」

「え? 外回りってどこに行くんですか?」

「決まってるでしょ? 中ボスたちの拠点作りよ」

「も、もしかしてまた魔王城作りの時みたいに……」

「別に城作りがしたいなら止めないけど、普通は手頃な洞窟とか森に手を加えて迷宮ダンジョン化して最奥に生活空間と中ボスを配置するのがセオリーね。やりたいの?お城」

「普通に迷宮ダンジョンがいいです」

 そうしてデスフレアは行く先々で条件に合う物件を探すべくヴィーキナウス中の大陸と言う大陸、島と言う島を探索し、長い長い外回りを終えて魔王城に帰ってきた。それはちょうど彼女がこの世界に来てから一年が経過したくらいの頃だった。

「おかえり~デスフレア」

「疲れましたぁ~。中ボスの子達も拠点での新生活は問題ないみたいです」

「それは結構。じゃあ明日から次の段階としてすこし魔物の放流と様子見に行くわよ」

「ってことは、いよいよ始めるんですか?」

「そうよ。神への連絡はあたしが付けといたから、明日からいよいよ対魔王に備えた事前訓練開始よ!」

「一週間くらいゆっくりしたいですぅ~」(泣)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

処理中です...