鑑定士×ヒトこの小咄置き場

港瀬つかさ

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ミューちゃん×最強の鑑定士

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2023年エイプリルフールネタ

「ねぇミューちゃん。あたくし、一つ聞きたいことがあるのだけれど」
「はい?何ですか、レオーネさん」

 こてんと首を傾げたワタシに、美貌のオネェ様はその見事な顔立ちを生かす素晴らしく素敵な微笑みを向けてくれた。眼福過ぎる……。美女とも美青年とも違う、オネェだからこそ持ち得る美貌がそこにあると思うんだ。マジで美人過ぎるわー、レオーネさん。
 ちなみにこちら、ワタシの雇い主である。
 何か知らないけど突然異世界に転移しちゃったワタシ、榎島未結。単なるオタクな女子大生のワタシが異世界のダンジョンでサバイバルなんぞ出来るわけもなく、たまたま鉢合わせたアリーさんに助けられて今に至る。……冒険者は向いてないので、今はレオーネさんの元で記録係である。

「貴方の職業のニートって、何なのかしら?」
「何でワタシの職業がニートなのかは、ワタシが誰より聞きたいことなんですよ、レオーネさん!!」

 思わず絶叫した。ぱちくりと瞬きをするオネェ様には申し訳ないのだけれど、こればっかりは本当に、何でそうなった!って全力で叫びたいのだ。そこは学生で良かったやん!と。
 この異世界、誰もが職業を持っているらしいのですよ。一般人は町人とか村人とか農民とかもあるらしいんだけど。そして、そんな世界へ突然転移したワタシの職業は、何でかニートだった。何でだ。確かに引きこもり系のゲーオタ腐女子だけども!
 ただ、このニートという意味不明な職業、それなりに利点はありました。ようは、デスクワーク的な仕事をする場合の能力向上みたいな感じらしい。だったらせめてもうちょっと違う名前にしてほしかった。

「ニートって、ワタシの国では引きこもって仕事もしてないダメ人間って感じの認識なんですよぉー。何でそれがワタシの職業なのかさっぱりです」
「あら、そんな感じだったの?でも、ミューちゃん、補正があるって言ってたわよねぇ?」
「ニートらしく、お外に出ない場合は能力向上っぽいです。大人しく記録係やってます」
「それはとても助かってるのよ?」
「頑張りまーす」

 そう、ワタシは記録係としてとても活躍している。転移補正か何かなのか、記憶力の向上というものが見られるのです。一度見たもの聞いたものは忘れない上に、脳内に検索エンジンみたいなのが搭載されている。そのお陰で、香水屋さんのデータバンクみたいなお仕事を紹介して貰えた。
 本当に、アリーさんには感謝してもしたりない。へっぽこなワタシが冒険者なんぞ出来るわけもなく、その育成を担うクランで出来るお仕事もあるわけがなく……。記憶力が特殊能力っぽくなってるのを知って、レオーネさんを紹介してくれたのだ。
 ちなみにこのレオーネさん、今でこそ穏やかに香水屋を営む凄腕調香師で通ってるけど、元々は薬師としてアリーさんと一緒に旅をしていた冒険者らしい。今も結構お強いのだとか。ワタシの身の安全は保証されていた!いえい!

「そうそう、来週ぐらいに素材の採取に行くから、準備しておいて頂戴ね」
「はーい!怪我しないように気をつけますー」
「回復薬はたんまり持っていくから安心して頂戴」
「お世話かけます……」

 この世界での身分証が存在しないワタシは、一応冒険者ギルドに登録している。一定期間依頼を受けないと登録抹消になるらしいので、レオーネさんが仕事に使う素材の採取に同行させて貰うことで、何とかしているのである。おんぶに抱っこですみません、オネェ様。

「あら、膨大な情報をきちんと覚えていてくれるなんて、とても助かっているのよ」
「それなら良いんですが」
「それに、ミューちゃんが来てくれてとても楽しいもの」
「わーん、レオーネさん優しいー!大好きー!」
「あたくしもミューちゃん大好きよ」

 うふふと、上品に笑う美貌のオネェ様に、ワタシは思わず飛びついた。危なげなく抱き留められて、あやすようにぽんぽんと背中を撫でられる。……流石は元冒険者。あと、オネェなので身体は成人男性だもんな。しっかり鍛えられた胸板、凄いと思いました。



 そんなわけで、何だかんだとワタシは異世界で生きている。平穏な生活、とても大事ですね!



FIN
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