クレオパトラの椅子

みゆきじゅん

文字の大きさ
上 下
2 / 5

1-2

しおりを挟む
 由香里に思い切り手を引かれて、高層ビルの入口までやって来た。このビルの5階で性同一性障害者緩和会が開かれていた。性同一性障害の会の会員だけが参加出来るイベントである。もちろん僕も会員である。由香里は躊躇なくビル内に入ってエレベーターに乗り、5階のボタンを押して5階まで行く。
「いらっしゃいませ、同意なされた方々ですね、お待ちしてました」
会場入口の受付嬢が言う。
「はい、そうです」
由香里が率直にこたえる。圧倒される僕。

 申し込み用紙に住所と氏名など記入後、僕たちは違う人に会場内へと案内される。
「うあーっ」
2人思わず声を上げてしまう程の広さの会場。
案内人とは別にビシッとタキシードを着た年老いた白髪の男性が僕たちを待っていた。
「お待ちしてました、本日は私たち性同一性障害の会が開催する一大イベント、性同一性障害緩和会にご参加いただき誠にありがとうございます」
白髪の男性が丁寧にお辞してくれる。
「それでは性同一性障害を解決する糸口になる大発見のお品のお披露目です」
白髪の男性が天井から下がってる紐を引くと、正面の高級そうな赤いカーテンが″カタカタカタ″と左右にゆっくりと開きだした。
「お2人には今回、我グループがエジプトの遺跡から発掘した、クレオパトラの対の椅子でお2人の精神すなわち魂と肉体を入れ替えさせていただきます、それによってお2人方の性と心が一致して必ずや幸せになってもらえると信じております、お手持ちのお荷物はこちらでお預かりしときます」
カーテンが開くと一段高い豪華な赤い絨毯が轢かれた場所に煌びやかな彫刻が施された対の椅子が置かれていた。椅子は横向きに2つ並べられている。
しおりを挟む

処理中です...