クレオパトラの椅子

みゆきじゅん

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「クレオパトラはこの不思議な椅子を使って若い女性や王、王子の肉体を得て長年権力を握り続けたそうです」
白髪の男性が淡々と語った。
「それではお2人方椅子の前にお立ちください、あ、まだ座らないでくださいね」
白髪の男性が言った。僕と由香里さんは互いにクレオパトラの椅子の前に立った。僕が向かって左の椅子、由香里さんが右の椅子の前に立っていた。
「私が″はい″と合図しましたらお2人共同時にお座りください、同時ではないと効果を出しませんので注意してくださいませ」
白髪の男性がそこを強調して言った。

僕はなんだか″ドキドキ″してきた。僕の左手に立つ由香里さんも肩で呼吸して緊張してる様子だった。

数分、鎮静な時が過ぎた。

「はいっ、お2人方椅子にお座りください」
白髪の男性が″はい″と言い1拍手する。僕は合図と共にクレオパトラの椅子に腰かけた。
「(思う)ううっ、なんか頭がクラクラする」
僕の目の前がボヤけて頭がクラクラしだした。

「う、ううんっ」
僕の視界が晴れると、左にあった筈のクレオパトラの椅子と由香里さんが消えていた。
「(思う)あ、あれ、僕、向かって左の椅子に座った筈だよな」
反対に右手の方にクレオパトラの椅子があった。
「成功したようね」
僕の右手に座る紫色のシャツを着た男性が椅子から起き上がり言った。喉に手をあてて咳払いしている。声が上手く出せない様だ。
「え!?僕っ」
僕はそう思った。右のクレオパトラの椅子から起き上がったのは間違いなく僕だったのだ。
「こ、この声っ」
僕の声がヤケに甲高く女みたいになっているのがわかった、僕も慣れない声で上手く喋れない。
「あー、あー、うー、うー」
思わず発声練習をする僕。完全に女声だ。僕も椅子から起き上がろうと肘掛けを必死に掴む。黒い袖からちんまりとした白い手が視線に入る。
「この手」
僕の手に中々力が入らない。なんとか椅子から起き上がることは出来た。僕の履いた短パンから剥き出しになった白い脚が見える。
「お2人方の肉体交換は成功した様ですな、各自別室をご用意しておりますので、そちらでお体をご確認ください」
白髪の男性が成功して嬉しいらしく笑顔で言った。
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