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氷樹の森の大賢者
7.持つがゆえに思うこと
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翌日、ゼフィアが連れてきたカレンという女性は、色んな意味で私の想像からかけ離れていた。
肩口までのウェーブのがかった黒髪は随分とつややかで、その黒の中に瞳の銀色が浮いていて印象的な美人、そして何よりその胸にたわわに実っているメロンである。
なんだこれ、犯罪だろう、あとそのお腹の膨らみ具合からして妊娠からそこそこたってますよね、前線から退いてる理由ってそれか、おめでたか!
……女性らしい名前の響きだなとおもったら人妻だったとか、完全に予想を裏切られたわ!
そんな私の視線を彼女は気にした様子もなく、笑いながら手を振ってきた。
「キミが噂の神使いのリーシアちゃん? ノフィカが言ってたとおり可愛ね」
なんて言ってきたのである、貴方には負けるよきっと。
ていうか噂になってんの?
なりもするか、部外者だしな。
「初めまして、リーシアです」
「なんか普通だねぇ」
私のことを珍獣か何かと勘違いしてらっしゃいませんかね?
私はただの人間だぞ、たぶん。
「で、手合わせしてみればわかるんだっけか?」
「うん、でも一つ条件があるわ」
この条件をかけなくても多分私はゼフィアには勝てないか、木剣が折れてしまうだけだと思う、ていうか最悪撲殺になりかねない。
なのではっきり意識させるために条件として明示しておくことにした。
「全力での打ち合いはしないで、あくまで技による競い合いという形で行います」
「技?」
「うん、剣をいなしたり、受け流して返したり、力ずくの攻撃はなしで」
「普通稽古で力ずくとか無いけどな。わかった……。カレンさん、審判をお願いします」
「うむうむ、任せておきたまえー。ゼフィアくんの成長を楽しみにしておるよ」
「は、はい……」
おお、ゼフィアがなんかしおらしい。
ともあれ、そうして条件を決めて始めた手合わせはいとも容易く私が三本取られて負けるという結果になり、ゼフィアは勝ったにもかかわらず何が起きたのかわからず混乱している有様だった。
それもしかたがないだろう、コボルトとの戦闘の時に見せた私の戦闘能力を今の手合わせでは少しも発揮できていないのだから。
私がどれだけ能力値任せだったのかよくわかるというものだ。
「なるほどねぇ……」
「やはり流派の開祖ともなるような人なら見ればわかりますよね」
「開祖? ああ、もしかしてゼフィアから聞いたのかな」
「カレン流、ときいたので貴女のことかと」
「カレン流って言うよりは我流にちかいんだけどね……ほら、両手で剣一本持つと胸が邪魔でねー」
巨乳め。
そんな理由で二刀流を流派レベルまで高めたってのか、貧乳に謝れ。
私は別に貧乳じゃないけどさ、あれ?
「なんか、手加減されたんじゃないかって気しかしないんだけが……」
「それはないわね、技については間違いなくゼフィアのほうが上だわ。基礎に忠実で素直、ちゃんと身についてるから自信を持ちなさい、ぼちぼちお行儀の悪さを身につけたほうがいいかもだけどね。リーシアちゃんは体はしっかり動いてるんだけど、なんていうか教科書通りというか、あくまで基礎的に動けるっていう段階どまりね、剣を学んで実践したことがなさそうというか、それであの動きができるなら大したものというか……」
それは多分剣術適正のおかげだろうねぇ。
カレンさんの言葉をそのままに受け取る限り、剣術適正のスキルは最初から持って生まれてくると言うよりは剣を学んだ結果身につくスキルのような気がする。
ゼフィアだって持っているスキルなわけだけど、その彼に対しての評価とだいぶ違うからそういう推測になるんだけど。
「実戦経験が全く足りてないとでも言えばいいのかな。それでコボルトをなぎ倒したっていうのなら、多分それは身体能力で蹂躙したようなものでしょうね。ぱっと見た感じ、ゼフィアの剣に対応するときの速度が異常だし、技の競い合いでない斬り合いだったらゼフィアじゃ厳しいかな」
「よくわかんないけど、俺は体を鍛えないとダメってことか?」
「そうねぇ、多少訓練メニューを見直したほうがいいかもね」
ゲーム時代の名残であるレベル126と比べられても困るんだけどね。
さてさて、どうやって私のしたい話に持ち込もうかな。
「とりあえず訓練メニューは新しく考えておくから、お勤め行っておいで。無理はするんじゃないわよ?」
「え、あ、あー……はい」
まるで厄介なのを追い払うかのようにカレンさんは有無を言わさずゼフィアをお勤めへと向かわせた。
村周辺を回って魔物を狩ることで村に魔物を近づけさせないという、割と攻撃的な防衛手段らしい。
ゼフィアの姿が見えなくなるまで見送り続けたカレンさんは、その後何も言わずに私の隣へと腰を下ろす。
「何か話すならいないところで話しておきたくてね」
「それは、ゼフィアのためですか?」
「わかる? まぁ、結構無理やりに送り出しちゃったからなぁ……あの子は良くも悪くも平凡な子だからさ、あなたみたいなのが下手に踏み込むと落ち込ませちゃいそうでねぇ、折れはしないだろうけど」
私も平凡……とは言えないんだろうなぁ。
「折れないだけたいしたものかと」
「そうかもね、本当はあなたにゼフィアの稽古の相手させようかと思ったんだけど、ことと次第によっちゃあっさり置き去りにしかねないから。 で、剣を習いたいとかそんなところ?」
「話が早いですね、よければ教えていただけませんか?」
双剣術と知った時から私の興味は結構ひかれていた。
一つは単純に自分が好きな型だから。
もう一つはゲームシステムの誓約から解き放たれているのなら私にはそちらのスタンスの方が絶対にあっているということ。
ゲーム時代は特定の職以外は二刀流がつかえず、剣を持つと反対側に盾を持つか何も持たないか程度しか選択肢がなかったのが、今ならその制限がないか、学べば解除できると思われる。
そうすると、私の上位スキルが開放できた時に受ける恩恵はそれこそ計り知れない。
そして最後に、剣を学ぶことでスキルの制限が解除されないかの確認。
「教えるか……現状の私でどこまで教えられるかなぁ。一番は実際に打ち合ってみることなんだろうけど、今はユナさんとノフィカから激しい運動はするなって言い含められてるのよねぇ」
むむ、さすがに身重の人に何かあっては大変だし、その判断は正しい。
うーん、となるともう王都までいってみるしかないのかなぁ?
「簡単な型の指導と、動きを見てアドバイスするぐらいならできるけど、それでも構わなければいまみてあげるわよ。多分あなた、いきなり二刀流で動いても最低限の形にはなると思う、私の見立てではあなたに足りないのは実戦経験だろうから」
「うーん……わかりました、ではそれでお願いします」
「ん、それじゃあ好きなの組み合わせで選んで構えてみようー」
訓練用の木剣、いろんな武器を想定した訓練もするためか短剣から大剣まで一通り揃っているなかから、どのような組み合わせを選ぶべきだろうか。
自分に向いている組み合わせがわからない以上、自分が好きな形にしておくべきか……。
いろいろなサイズの木剣を順手逆手で入れ替えてみながら持ち替えて行った結果、右手に短剣を順手持ち、左手に長剣を逆手持ちにするという自分でもいまいちよくわからない持ち方に落ち着いた。
「なかなか独特な持ち方になったわね」
「あはは……」
カレンさんみたいなおおらかな人じゃなかったら「なんだその持ち方は!」とか言われてたかもしれんね。
そこから二時間ぐらい、カレンさんのアドバイスのもと剣の振り方や体捌きといった動きをくりかえす。
自分でも信じられないような動き方ができるのだが、カレンさんに言わせると硬いらしく、剣だけを武器と思うなとかいろいろな言われている。
カレンさんが一番驚いていたのは、私がローブという裾の長い服を着ているにもかかわらず縦横無尽に動けていることだったが。
だいたい幻惑の舞姫のせい。
更に二時間ぐらいあれこれと教えてもらった結果、流石にそろそろ家に戻るということでお開きとなった。
「だいぶ硬さは無くなったわね。あとは自分が思うような動きができるように毎日剣振るといいわ。それと、剣を持っているからって斬ることしかできないわけじゃない。突くも払うも叩くも、極論を言ってしまえば投げてしまったっていい、死なないことを第一に考えなさい。剣に縛られてはダメよ? それは貴方と貴方の周りの人を生かすものであって、殺すものではないんだから」
「……多分、今はその言葉の意味全部はわからないんでしょうけど、心に留めておきます。カレンさん、今日はありがとうございました」
「貴方の剣が切り開くものが、良いものであることを祈ってるわ」
最後だけまるで違う雰囲気を纏って彼女は言う。
その言葉には不思議な重さがあった。
そんな彼女の後ろ姿を見送りながら、そういえば彼女のステータスを見ていないことを思い出した。
参考までに見ておきたいのでルータスノーツを起動する。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:カレン・ラキウス
職業:主婦
称号:千人魅刀
年齢:29
性別:女性
レベル:86
スキル
カレン流双剣術(開祖)
剣術適正
剣術補正+
流剣
刻印魔術(初級)
▽
刻印
【風】
ステータス
ヒットポイント:6780(8950)/6780(8950)
マナ収束力:360(480)
体内マナ:65/91
▽
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
万物の叡智で見えた彼女のレベルはゼフィアやノフィカとは比べ物にならない程に高かった。
流派の開祖みたいに表示されるだけあるなら相当高いだろうとは思ったが、なんというか予想を大きく上回っている。
──良くも悪くも平凡。
彼女の言葉が頭をよぎる。
そんな彼がなぜ守護剣士などという職に就いたのだろうか、そしてそれを考えるなら、ノフィカも巫女という位置についたのに何か理由がある気がする。
今の所私には関係ないかもしれないが、少し気になるところではあった。
暖炉の火を明かりにして、手元の木材を慎重に削り出していく。
あの後、乾燥させた木材が欲しくてどうしようかと考えていたら村の人に声をかけられた。
近場の森から切り出した木材を運ぶから少し人手が欲しいとのことで手伝いに行き、その代わりに程よい大きさの木材を幾つかいただいてきたのだ。
そんなわけで私は今その木材を切り出して練習用の木剣に加工しようとしているわけである。
実際は重心の問題とかがあるからちゃんと鍛治師か木工師の人が作ったものを使うべきなんだろうけども、今は手持ちも……下手にゲーム時代のお金を出して何かトラブルがあると厄介だから出せず、所持金は無いに等しいためとりあえず自作だ。
ヤスリがないので持ち手のところに布か紐でも巻きたい。
今後は王都の方に行った時などに活動資金が必要になることもあるだろうから何かしらの収入源は欲しい、王都の方に行けば冒険者組合などもあるらしくそこでとりあえず登録をするあたりが第一ステップだろうか。
暖炉の火が弱くなり始めたところでようやく削り出す作業が終わり、硬くなった体を伸ばしながらあくびを一つ。
月はすっかり傾き始めて、反対側の空が白んで朝がそう遠くないことを知らせてくれる。
ちょっと時間をかけすぎたかもしれないと思いつつわたしは寝所へと潜り込むのだった。
肩口までのウェーブのがかった黒髪は随分とつややかで、その黒の中に瞳の銀色が浮いていて印象的な美人、そして何よりその胸にたわわに実っているメロンである。
なんだこれ、犯罪だろう、あとそのお腹の膨らみ具合からして妊娠からそこそこたってますよね、前線から退いてる理由ってそれか、おめでたか!
……女性らしい名前の響きだなとおもったら人妻だったとか、完全に予想を裏切られたわ!
そんな私の視線を彼女は気にした様子もなく、笑いながら手を振ってきた。
「キミが噂の神使いのリーシアちゃん? ノフィカが言ってたとおり可愛ね」
なんて言ってきたのである、貴方には負けるよきっと。
ていうか噂になってんの?
なりもするか、部外者だしな。
「初めまして、リーシアです」
「なんか普通だねぇ」
私のことを珍獣か何かと勘違いしてらっしゃいませんかね?
私はただの人間だぞ、たぶん。
「で、手合わせしてみればわかるんだっけか?」
「うん、でも一つ条件があるわ」
この条件をかけなくても多分私はゼフィアには勝てないか、木剣が折れてしまうだけだと思う、ていうか最悪撲殺になりかねない。
なのではっきり意識させるために条件として明示しておくことにした。
「全力での打ち合いはしないで、あくまで技による競い合いという形で行います」
「技?」
「うん、剣をいなしたり、受け流して返したり、力ずくの攻撃はなしで」
「普通稽古で力ずくとか無いけどな。わかった……。カレンさん、審判をお願いします」
「うむうむ、任せておきたまえー。ゼフィアくんの成長を楽しみにしておるよ」
「は、はい……」
おお、ゼフィアがなんかしおらしい。
ともあれ、そうして条件を決めて始めた手合わせはいとも容易く私が三本取られて負けるという結果になり、ゼフィアは勝ったにもかかわらず何が起きたのかわからず混乱している有様だった。
それもしかたがないだろう、コボルトとの戦闘の時に見せた私の戦闘能力を今の手合わせでは少しも発揮できていないのだから。
私がどれだけ能力値任せだったのかよくわかるというものだ。
「なるほどねぇ……」
「やはり流派の開祖ともなるような人なら見ればわかりますよね」
「開祖? ああ、もしかしてゼフィアから聞いたのかな」
「カレン流、ときいたので貴女のことかと」
「カレン流って言うよりは我流にちかいんだけどね……ほら、両手で剣一本持つと胸が邪魔でねー」
巨乳め。
そんな理由で二刀流を流派レベルまで高めたってのか、貧乳に謝れ。
私は別に貧乳じゃないけどさ、あれ?
「なんか、手加減されたんじゃないかって気しかしないんだけが……」
「それはないわね、技については間違いなくゼフィアのほうが上だわ。基礎に忠実で素直、ちゃんと身についてるから自信を持ちなさい、ぼちぼちお行儀の悪さを身につけたほうがいいかもだけどね。リーシアちゃんは体はしっかり動いてるんだけど、なんていうか教科書通りというか、あくまで基礎的に動けるっていう段階どまりね、剣を学んで実践したことがなさそうというか、それであの動きができるなら大したものというか……」
それは多分剣術適正のおかげだろうねぇ。
カレンさんの言葉をそのままに受け取る限り、剣術適正のスキルは最初から持って生まれてくると言うよりは剣を学んだ結果身につくスキルのような気がする。
ゼフィアだって持っているスキルなわけだけど、その彼に対しての評価とだいぶ違うからそういう推測になるんだけど。
「実戦経験が全く足りてないとでも言えばいいのかな。それでコボルトをなぎ倒したっていうのなら、多分それは身体能力で蹂躙したようなものでしょうね。ぱっと見た感じ、ゼフィアの剣に対応するときの速度が異常だし、技の競い合いでない斬り合いだったらゼフィアじゃ厳しいかな」
「よくわかんないけど、俺は体を鍛えないとダメってことか?」
「そうねぇ、多少訓練メニューを見直したほうがいいかもね」
ゲーム時代の名残であるレベル126と比べられても困るんだけどね。
さてさて、どうやって私のしたい話に持ち込もうかな。
「とりあえず訓練メニューは新しく考えておくから、お勤め行っておいで。無理はするんじゃないわよ?」
「え、あ、あー……はい」
まるで厄介なのを追い払うかのようにカレンさんは有無を言わさずゼフィアをお勤めへと向かわせた。
村周辺を回って魔物を狩ることで村に魔物を近づけさせないという、割と攻撃的な防衛手段らしい。
ゼフィアの姿が見えなくなるまで見送り続けたカレンさんは、その後何も言わずに私の隣へと腰を下ろす。
「何か話すならいないところで話しておきたくてね」
「それは、ゼフィアのためですか?」
「わかる? まぁ、結構無理やりに送り出しちゃったからなぁ……あの子は良くも悪くも平凡な子だからさ、あなたみたいなのが下手に踏み込むと落ち込ませちゃいそうでねぇ、折れはしないだろうけど」
私も平凡……とは言えないんだろうなぁ。
「折れないだけたいしたものかと」
「そうかもね、本当はあなたにゼフィアの稽古の相手させようかと思ったんだけど、ことと次第によっちゃあっさり置き去りにしかねないから。 で、剣を習いたいとかそんなところ?」
「話が早いですね、よければ教えていただけませんか?」
双剣術と知った時から私の興味は結構ひかれていた。
一つは単純に自分が好きな型だから。
もう一つはゲームシステムの誓約から解き放たれているのなら私にはそちらのスタンスの方が絶対にあっているということ。
ゲーム時代は特定の職以外は二刀流がつかえず、剣を持つと反対側に盾を持つか何も持たないか程度しか選択肢がなかったのが、今ならその制限がないか、学べば解除できると思われる。
そうすると、私の上位スキルが開放できた時に受ける恩恵はそれこそ計り知れない。
そして最後に、剣を学ぶことでスキルの制限が解除されないかの確認。
「教えるか……現状の私でどこまで教えられるかなぁ。一番は実際に打ち合ってみることなんだろうけど、今はユナさんとノフィカから激しい運動はするなって言い含められてるのよねぇ」
むむ、さすがに身重の人に何かあっては大変だし、その判断は正しい。
うーん、となるともう王都までいってみるしかないのかなぁ?
「簡単な型の指導と、動きを見てアドバイスするぐらいならできるけど、それでも構わなければいまみてあげるわよ。多分あなた、いきなり二刀流で動いても最低限の形にはなると思う、私の見立てではあなたに足りないのは実戦経験だろうから」
「うーん……わかりました、ではそれでお願いします」
「ん、それじゃあ好きなの組み合わせで選んで構えてみようー」
訓練用の木剣、いろんな武器を想定した訓練もするためか短剣から大剣まで一通り揃っているなかから、どのような組み合わせを選ぶべきだろうか。
自分に向いている組み合わせがわからない以上、自分が好きな形にしておくべきか……。
いろいろなサイズの木剣を順手逆手で入れ替えてみながら持ち替えて行った結果、右手に短剣を順手持ち、左手に長剣を逆手持ちにするという自分でもいまいちよくわからない持ち方に落ち着いた。
「なかなか独特な持ち方になったわね」
「あはは……」
カレンさんみたいなおおらかな人じゃなかったら「なんだその持ち方は!」とか言われてたかもしれんね。
そこから二時間ぐらい、カレンさんのアドバイスのもと剣の振り方や体捌きといった動きをくりかえす。
自分でも信じられないような動き方ができるのだが、カレンさんに言わせると硬いらしく、剣だけを武器と思うなとかいろいろな言われている。
カレンさんが一番驚いていたのは、私がローブという裾の長い服を着ているにもかかわらず縦横無尽に動けていることだったが。
だいたい幻惑の舞姫のせい。
更に二時間ぐらいあれこれと教えてもらった結果、流石にそろそろ家に戻るということでお開きとなった。
「だいぶ硬さは無くなったわね。あとは自分が思うような動きができるように毎日剣振るといいわ。それと、剣を持っているからって斬ることしかできないわけじゃない。突くも払うも叩くも、極論を言ってしまえば投げてしまったっていい、死なないことを第一に考えなさい。剣に縛られてはダメよ? それは貴方と貴方の周りの人を生かすものであって、殺すものではないんだから」
「……多分、今はその言葉の意味全部はわからないんでしょうけど、心に留めておきます。カレンさん、今日はありがとうございました」
「貴方の剣が切り開くものが、良いものであることを祈ってるわ」
最後だけまるで違う雰囲気を纏って彼女は言う。
その言葉には不思議な重さがあった。
そんな彼女の後ろ姿を見送りながら、そういえば彼女のステータスを見ていないことを思い出した。
参考までに見ておきたいのでルータスノーツを起動する。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:カレン・ラキウス
職業:主婦
称号:千人魅刀
年齢:29
性別:女性
レベル:86
スキル
カレン流双剣術(開祖)
剣術適正
剣術補正+
流剣
刻印魔術(初級)
▽
刻印
【風】
ステータス
ヒットポイント:6780(8950)/6780(8950)
マナ収束力:360(480)
体内マナ:65/91
▽
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
万物の叡智で見えた彼女のレベルはゼフィアやノフィカとは比べ物にならない程に高かった。
流派の開祖みたいに表示されるだけあるなら相当高いだろうとは思ったが、なんというか予想を大きく上回っている。
──良くも悪くも平凡。
彼女の言葉が頭をよぎる。
そんな彼がなぜ守護剣士などという職に就いたのだろうか、そしてそれを考えるなら、ノフィカも巫女という位置についたのに何か理由がある気がする。
今の所私には関係ないかもしれないが、少し気になるところではあった。
暖炉の火を明かりにして、手元の木材を慎重に削り出していく。
あの後、乾燥させた木材が欲しくてどうしようかと考えていたら村の人に声をかけられた。
近場の森から切り出した木材を運ぶから少し人手が欲しいとのことで手伝いに行き、その代わりに程よい大きさの木材を幾つかいただいてきたのだ。
そんなわけで私は今その木材を切り出して練習用の木剣に加工しようとしているわけである。
実際は重心の問題とかがあるからちゃんと鍛治師か木工師の人が作ったものを使うべきなんだろうけども、今は手持ちも……下手にゲーム時代のお金を出して何かトラブルがあると厄介だから出せず、所持金は無いに等しいためとりあえず自作だ。
ヤスリがないので持ち手のところに布か紐でも巻きたい。
今後は王都の方に行った時などに活動資金が必要になることもあるだろうから何かしらの収入源は欲しい、王都の方に行けば冒険者組合などもあるらしくそこでとりあえず登録をするあたりが第一ステップだろうか。
暖炉の火が弱くなり始めたところでようやく削り出す作業が終わり、硬くなった体を伸ばしながらあくびを一つ。
月はすっかり傾き始めて、反対側の空が白んで朝がそう遠くないことを知らせてくれる。
ちょっと時間をかけすぎたかもしれないと思いつつわたしは寝所へと潜り込むのだった。
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