ユニオン・マギカ

ユリア・ソレイユ(紫月紫織)

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氷樹の森の大賢者

21.山の主足りうる者

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 私達が山の麓に降り立った頃には月が天頂に達して、満月に近づいた鈍色の月が薄気味悪い色をして浮かんでいた。
 満月に近いというのは、あんまり良い予兆ではない。
 鈍色の月は魔物の月とも言われていて、満月に近いほど魔物の力が増すと言われている。
 それを詳しく確かめた人が居るのかは知らないが、そうした話があるというだけで警戒するには十分だった。

 クロウとエリアルを側仕えとしてゲーム時代はできなかった同時召喚をし、御鏡を憑依させて準備を整える。
 武装はしっかりしておいたほうがいいだろうが、元々の戦闘スタイルの関係で鎧などは持ち合わせていない。
 防具は今のままハウリングローブにするとして武器をどうするか。
 当時のゲーム知識で行くならミノタウロス相手には水属性系が有効なんだけども……この世界で有効かわからないことを考えると攻撃力が一番高くて自動回復のついてる聖剣ホーリエルがいいか?
 しまったな、"ユーテリア"の人たちをある程度万物の叡智ルータスノーツで見ておくべきだった……。
 どうにも人の情報を丸ごと見ることに抵抗感が出ている気がする。

 確か槍が折れて剣がなくなってて、一人は腕ごと持って行かれてたな。
 柄が木製とは言え、武器に使うなら相応の強度があることを考えると折れるような無茶な運用をしたか、それだけの力が加わったか。

「多少重いかもだけど、3本かしらね」

 インベントリから一本の太刀を取り出す。
 漆黒の鞘に舞う藍色の蝶が彫金された飾りを持つ、長さ七十センチほどの刀、"禍津太刀・藍染胡蝶まがつたち・あいぜんこちょう"。
 攻撃速度増加、防御値一部無効という強力な付与がかけられている反面──

「……持ってるとだるいわね、やっぱ呪いデバフも有効か」

 装備中一定間隔でHPを消費するという呪いじみた効果を持つ魔剣は、持っているだけでマナとは別のものが吸い取られていく感覚があった。
 これ系の裝備はなかなか使いづらくなっているようだ。

 合わせてスペル・キャストと聖剣ホーリエルを取り出し左右の腰に下げる。
 準備は整った、あとは目的となるミノタウロスを狩ってさっさと帰ればいい。

『お嬢様、おそらくですがここから南西の方角です』
「ありがとう。それじゃあ……ミノタウロス狩りと行きましょうか、新進気鋭の冒険者パーティ"ユーテリア"を壊滅に追い込んだ個体を倒す必要はないわ。適当に見つけたら狩ってさっさと帰るわよ」
『意外ですな、例のものを探すかと思いましたが』
「……目的を履き違えるつもりはないわ。今の目的は薬の入手、それが手に入るならどれでもかまやしないわよ」

 いつ遭遇しても構わないようにスペル・キャストに初級の水魔法、"氷結針アイシクルニードル"をキャストしてから、私たちは山の中へと踏み込んだ。



 耳に響く暴風を背後に私は森のなかから飛び出した。
 直後に背後の樹木がきしみ、木の葉が引きちぎられて舞い散る音が聞こえる。
 やがて土砂まみれの暴風に飲まれて木々が無残に砕け散るまでそう時間はかからなかった。

 背後からやってくるその影を相手に正直逃げ出したい気持ちで一杯になる。
 いくらなんでもあれは規格外ってやつだろう。

『姫! いかが致します!?』
「散開して! まとまってるといい的になるわ!」

 直後エリアルが空に飛びクロウが木々を次々と飛び移り距離を取る。
 やっぱりこういう運動能力はさすがね、と言うかこの場合狙われるのって……私だよね。

 背後に向き直り刻印魔術を発動する、使う刻印は"遮断"。
 だいぶ早くなった刻印の展開もあり、すぐさまそれは魔術として機能する。
 0.5秒ぐらいだろうか、即時展開には程遠い。
 "遮断"の最もシンプルな、対象からの影響──この場合あの馬鹿げた攻撃を防ぐために使う。
 なにせ相手は今こちらを完全に獲物としてしか見ていない、そのため一切躊躇することなく突撃してきているのだ。
 多少なりとも警戒させて、少なくとも認識を獲物から敵に変えさせなければこのまま逃走劇を続けるハメになる。

 ミノタウロスが斧を振り上げる、それだけで吹き荒れる暴風が大地をはがしながら駆け巡るのだから、そこから生み出されるものは超大型の竜巻とすら比較になるまい。
 引き絞られた弓のような勢いで振り下ろされた斧は、濁流のような風と衝撃波を発生させ地面をえぐりながら襲い掛かってくる。
 "遮断"の刻印を広げその暴風に正面から対抗するが、ギシギシと刻印はきしみ、吹き荒れる石が礫となって激突するたびにマナが急激に削られる感覚が襲う。

 暴風が収まった時、ようやっとそれは私に対して警戒心を抱いたのか斧を構え直し足を止めた。

 目算で体長4mほど、鎧みたいに体中を覆う筋肉が盛り上がっていて例えるなら重戦車だろうか。
 先ほどの一撃が砲撃なら──

 ──グルウウウゥゥゥアアァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!

 爆音のような雄叫びが衝撃波となり周囲を震撼させる。
 軽く吹き飛ばされそうになるのを必死に堪え、スペル・キャストに込めておいた"氷結針アイシクルニードル"を開放した。
 同時、周囲に現れる十本の氷の針が私が狙い定めた所へと殺到する。
 狙ったのはミノタウロスの左足だったのだが……あろうことか斧をその前に振り下ろすことで魔法を強引に叩き潰して防ぐというとんでもない真似をしてきた。
 強烈な冷気が吹き荒れるものの、これではとても決定打にはならない。

 下級とはいえ魔法を物理攻撃で砕いた挙句、周囲に冷気を撒き散らす程度に収めてしまうなど冗談じゃない。

 万物の叡智で情報を読み取ろうにも、敵性存在であるために殆どのデータは見えないため気休めにしかならないか。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:-
種族:ミノタウロス
個体称号:知性・屈強・豪腕
ヒットポイント:??????/??????
マナ収束力:????
体内マナ:???/???
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 
 個体称号、少なくとも私が聞いたことはない要素であるけれど、今までそんなものがついた個体は見たことがない。
 ヒットポイントも表示の桁数を信用するならば最低で十万、マナ収束力も高いことから何らかの魔術を使える可能性は考慮しておくべき、あの風を纏った斧の一撃がそれかもしれない。
 これはゲーム的に考えるならどう考えてもボス級だな。

「スキル解放が終わってない状態で会いたくは無かったわね……クロウ!」
『おまかせを!』

 私に気を取られていたミノタウロスの死角から飛び出したクロウが、全身のバネを使っての懇親の一撃をその背中に見舞う、だがそれは浅く肉をえぐり、多少の跡を残しすぐに塞がってしまう。
 信じられない程の高速治癒だ。

 クロウ自身も目の前で起きたことが信じられないのか、その場にとどまってしまった。
 その隙を見逃さずにミノタウロスは斧を振り上げる。

「クロウ避けて!」

 私の声に反応して振り向きざまに振るわれた大斧をかろうじて避けて再び森のなかへと隠れるクロウの背後を地面をえぐるほどの暴風が襲う。
 流石に捉えることはできなかったようだがまた一つ山肌に傷跡が増えた。

『馬鹿な……クロウの爪がほとんど通らぬだと?』
「これは逃げたほうが得策かしらね」

 最悪クロウの召喚を解除してエリアルに乗って逃げれば離脱はおそらくどうとでもなる。
 そう思ってなんとか距離をしようとした矢先──

「娘、お前の匂いはもう覚えた。どこへ逃げようと追い詰めて新たな腹として使ってやろう」

 目の前の化け物が口を開いたのだった。
 というか、腹として使うって……何?
 いや、もしかして……そういう?

 意味を理解した瞬間全身が総毛立った、冗談勘弁願いたい。

 しかし、匂いを覚えたとか言われると下手に逃げられなくなったのも事実だ。
 動物系の嗅覚の追跡可能距離がどれぐらいかは想像も付かないが、万が一あんなものを街に連れ込んだらそれこそ大災害になる。

 クロウの攻撃力は相当高いハズで、エウリュアレから首都までの道中に現れた魔物を爪の一振りで軒並み斬殺している。
 その攻撃力がほとんど通らないとなると私の攻撃も通らない可能性が高い、と言うかほぼ通らないだろう。

『姫、撤退なさったほうが良いのでは?』
(微妙なところね、奴の匂いで追うっていうのがどの程度かわからないけど、クロウ並かそれ以上だった場合の最悪のケースとして街に連れ帰ってしまう可能性がある。それは流石に避けたいわ……エリアル、そこから風属性の攻撃できる?)
『……承知いたしました』

 多少思う所はあったようだが、指示を予想していたのかすぐさま翼をはためかせたエリアルから幾つもの真空波が放たれる。
 確認できるだけで十数発、それらが上空からミノタウロスめがけて降り注ぐ。
 そのうちの半数ほどがミノタウロスの体に傷跡を残した。
 先程よりも深く傷の治癒も遅いようで、万物の叡智で確認すればHPが5桁に減っている様子だ。

 どうやら風のほうが有効らしい。

『幾らかマシなようですな』
(……どれ)

 簡単な詠唱を済ませ私が習得するもう一つの系統の属性魔法を起動する。
 "雷影閃ピアースライトニング"、帯電デバフを付与する風系の基礎魔法。
 刻印もなしに起動された魔法は私の周囲から突如として発生しミノタウロスへと収束する。
 一瞬の電光と炸裂音、小規模の爆発により煙が上がったあとに確かな手応えを感じる、煙が晴れたあとには所々にやけどを負ったミノタウロスの姿が見えた。
 ついでにちょっと香ばしい匂いが漂ってくる、やっぱり牛肉なのか。

「刻印無しで魔術を使うとは……素晴らしい腹だ、良い子が残せるに違いない」
「さっきから人の事を腹だのなんだの、不愉快極まるわね」
「貴様ら人間は家畜にそのような感情を抱くのか?」

 いいながらミノタウロスが斧をすくい上げるように振るう。
 地面をえぐるよう側面を向けて振りぬかれた斧、えぐられた土が弾丸のように飛来するのくぐるように回避し、距離をおいてスペル・キャストに再び雷影閃をキャストする。

(クロウ、遠距離からブレスで牽制して。気を逸らす程度で無理に近づかないでいいわ。エリアルは遠隔から攻撃、貴方は空中にいるんだから落とされないように気をつけて)
『それは分かりましたが、姫は大丈夫なのですか?』
(ちょっと切り込んでみるわ……)

 試してみたいこともありスペル・キャストを鞘へ収めて即座に禍津太刀・藍染胡蝶を抜刀する。
 刃が月明かりを反射してキラリと怪しく輝きを放った。
 藍染胡蝶の能力が有効でないならそれこそ別のアイテムを探す必要が出てくるだろう。

「無傷で捉えるのはやはり無理か、少々本気を出させてもらおう。腕の一本や二本は覚悟するのだな」
「最初から無傷で捉える気なんて無いくせによく言うわ」

 ミノタウロスから吹き上がるマナ、周囲に展開される刻印を見やり覚悟を決めて藍染胡蝶を構え踏み込む。
  太刀の扱い方は剣術適正ソードシンクが自然と理解させてくれて、あとはその通りに体を動かすだけだ。
 狙うべきは足、機動力さえ削げばあとは遠隔からの攻撃で時間をかけて倒すという手段もある。

 冒険者としての身体能力が生み出す踏み込みは彼我の距離を一瞬で埋めて余りある。
 身を固くし斧を眼前に構えたミノタウロスは明らかな防御姿勢であり、私の一撃を警戒しているのが見て取れた。
 およそ十メートルの距離は一瞬でゼロになり、刹那の交錯に刃を走らせる。

 並の魔物であれば軽く屠れるその一撃は、それでも骨を断ち切ることはかなわず肉を切り裂くにとどまった。
 だが刃が通ることは確認できた。
 
 距離をおいて振り返り再び構え直す。

「人の雌ごときに遅れはとらん」

 先程まで生まれていた刻印は消え、ミノタウロスの周囲を風が舞っている。
 強化系の魔術だったのだろうか、まだそこまで刻印魔術を把握していない私には推測するぐらいしかできないが、風の防御系だとしたらエリアルの攻撃が防がれるようになってしまうかもしれない。

 そう思った次の瞬間、ミノタウロスの姿が目前へと迫っていたのだ。
 とっさに体を捻り右へ飛ぶ。
 先程までの大ぶりとはまるで異なる小さく鋭い竜巻のような動き、ギリギリのところで斧の一撃を避けるものの、砕けた地面の破片が吹き飛び顔をかすめた。
 今のは見覚えがある……それがなかったら避けるまもなく殺られていたかもしれない。

 スプリントボアの突進とそっくりだった、だが相手の手札は一つ見えた。
 このまま丸裸にしていけば……。
 そう思って刀を構えなおそうとして──

「まずは腕一本」

 右手で持っていた刀に左手を添えようとして、ようやっと私はそれに気づいた。
 左腕の肘から先が見当たらない。
 それに気づいた瞬間になってやっと痛覚が到達した。

 クロウ達が叫ぶ声が聞こえる、あまりの激痛に意識が遠のきかけるがその痛みによって引き戻される、正常な判断力を失った私は──

 ────全力で刻印魔術を発動した・・・・・・・・・・・・



 御鏡の治癒魔法で痛みを抑えてもらい、なんとか自分で"再生"の刻印を使用して腕をつなげたのが三十分ほど前のことだ。
 腕が動くようになってから、いろいろと落ち着くまでにこれだけ時間がかかってしまった。
 ローブは腕のあたりで引き裂かれてしまっており、修理でもしないことには流石に着ているのははばかられるような有様である。

「ありがとう、御鏡」
『ううん、いいの。姉様もう大丈夫?』

 心配そうに擦り寄ってくる御鏡を撫でつつ、私が起こしてしまった惨状を改めて確認する。

 ミノタウロスに左腕を切り落とされた私は、あろうことかマナ収束力の全てを"風"の刻印魔術につぎ込んだ。
 結果として当のミノタウロスは生み出された風の刃によってバラバラの肉に切り刻まれて、サイコロステーキみたいな有様となっている。
 挙句ミノタウロスを刻むだけではすまなかった風の刃は背後にある山肌や岩、木々をまるごと切り刻んでおり、バラバラになった木材石材、地面によって非常にファンキーな感じにたがやされてしまっている。
 シュルレアリズムの絵画のようだ……。
 範囲は目算で数百メートル四方ぐらいだろうか、遠目から見てもたぶん異常事態だとわかるのではないだろうか。

 幸いだったのはミノタウロスを跡形もなく消し飛ばしたりしなかったこと、素材の回収は行える状態ということだろうか。
 結構な量のマナの霧散も発生しており、周囲は淡い光に包まれていた。
 やはり特殊なモンスターだけあって霧散の量も相応に大きなものになっている。
 名実ともに強敵だったということだろう。

 しかし今回のことで幾つかの仮説が浮かんだ。
 一つは、体内マナを一定量消費して発動するゲーム時代の魔法と比べて、マナ収束力を存分につぎ込める刻印魔術のほうが威力の上限が高いのではないかということ。
 規定のマナを消費した"魔法"である"氷結針アイシクルニードル"や"雷影閃ピアースライトニング"でたいしたダメージが通らなかったミノタウロス。
 三万五千近い私のマナ収束力全開放によって生み出した"風"の刻印魔術によって屠れたことを考えると、刻印魔術のほうが威力が高かったことになる。
 もっとも、これはゲームシステムの範囲内での使い方しかしていないからそうなっているだけかも知れないので、そのうち確認する事柄にリストアップしておくべきだろう。

 もう一つはHPについて。
 腕を切り落とされた時、私はとっさに自分のHPを確認していたのだ。
 結果、HPは0になっていた。
 にも関わらず私はこうして生存しているわけだ。
 流石に自分に刃物を向けて自傷行為をするのは抵抗感があるので試していないが、どうにもHPはそのまま命に直結しているのではなく、体への損壊ダメージを軽減する的なものなのではないかと考えている。
 そうであれば、やたら高い防御力を誇ったミノタウロスが一定以上のダメージでサイコロ状になったことも、HPというバリアが消耗しきったために起きた出来事と考えれば辻褄はたぶん、合う。

『姫……肝が冷えました』
「私も冷えたよ」

 うっかりマナ収束力もすべてつぎ込んでしまったためマナ収束力による刻印魔術の行使が行えず、体内マナを使って"再生"の刻印を発動させるまでに時間を要したのも拍車をかけた。
 今現在マナ収束はほぼできない感じだ。
 どれぐらいで回復するのか一応時間を測っておこう。

『ともあれ目標は達しました。奴の心臓を回収してさっさと帰るといたしましょう』
「いえ、ちょっと待って」
『……もう少し休んでゆかれますか?』
「いえ……クロウ、近くに人の匂いがないか探ってくれないかしら」

 三匹の空気が少しだけ固くなったのを感じる。
 あんなことがあった後だ、早く私を安全な場所まで連れ戻したいのかもしれない、けどこのまま帰るわけには行かなくなった理由が一つあるのだ。

「あのミノタウロス、新たなって言ったわ……ということは前の被害者が居るということよ」
『確かに』
「気づかなければこのまま帰っていたところだけど、まだ少し時間があるし貴方の鼻ならわかるかと思ってね。お願い」
『……承知いたしました』

 クロウが探ってくれている間にミノタウロスからの戦利品を回収する。
 心臓は、割りとグロいね……。
 角に骨に肉……肉かぁ、牛肉なんだろうけどあんまり食べたくないなぁこれ、人型だったもんねぇ。
 あんまり考えないようにしてインベントリにぽんぽん放り込んで行く頃にはマナの霧散も収まっていた。

 ──条件を達成しました、魔術系スキルをランク5まで開放します。最秘奥さいひおうの使用制限が解除されました。

「お、おお……やっとか」
『どうかなさいましたか?』
「魔術系スキルの制限解除されたわ」
『おお、ついにですか。ではもう今のようなものが現れても遅れを取ることはありませんな!』

 ……いや、それはわからんけど。
 なにせ中身が戦いとかしたこと無いからなぁ……剣の練習とかは続けないとダメだとさっき痛感したけど、魔術の勉強もしっかりしないと命がいくらあってもたりなさそう。
 ちょっと強い相手にはすぐ通用しなくなる、方向性のない大砲みたいなもんだ。
 ちゃんと使えるようにならないとね。

『お嬢様、見つけました……ですが』

 言いよどむクロウに頷くことで先を促す。
 おそらくだけど、あんまり良くない話なのだろう。
 私自身、ろくでもない結果であるだろうことは承知しているのだ。

『血の臭いが酷く強く、生存の見込みは無いかと……』
「ま、仕方ないわ。遺品の一つもあるかもしれない、とりあえず行ってみましょう。エリアルは戻って、水鏡は憑依を。クロウ、案内をお願い」
『かしこまりました』

 クロウの背に飛び乗り振り落とされないように捕まる、それを見計らって彼は走りだした。

 現地につくまでに数分森のなかを駆け抜ける。
 かなりの速さでちょっとしたジェットコースターのようだった。
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