一途彼女と誘惑の彼

山の端さっど

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∽2∽[笑顔]の裏側

§13[謝罪]

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 六月五日、ダイエット四日目、測定日。私は初めてお祈りスキャンのやり直しをすることになった。
 エラーが出たのは円居まどい先輩が乱入してきたときもだったけれど、あの時は一人になったらスキャン続行できた。今回は全くの測定エラー、最初から時間をかけてやり直しだ。
 何かあったのかと不安になったけれど、やり直しの結果は問題なかった。ただ、

『心配なこと、どんなささいなことでも、相談してみませんか?』

 保健室からのメッセージが出てきた。
 これは、全員に送ってるんだろうか、それともスキャン結果でメンタル面に不安がありそうな生徒に表示しているんだろうか? 考え込んでいたら、いつの間にか友達が迎えに来ていた。

「お嬢、時間ですぜ、なんちゃって」
「えっ、あ」
「スキャン長かったねー」
「うん、なんかエラー出ちゃって」
「へえ、珍しい」

 とはいえ、出てきた結果は良好だったから大丈夫だろう。

「そう、良好だよ!」
「体重か。良かったじゃん」
「うん。まだそんなに減ってないけど、計画通り」
「食べる量減らしたりとかしてたもんね。無理は駄目だよ」
「うん、無理はしてないよ」

 無理はしてないし、頑張ってもいない。
 昨日と今日の朝は、散歩に出てない。早くに目は覚めたけど、なんとなく、部屋でストレッチをして過ごした。
 ……雨だったから。理由は、それだけだ。

絵美里えみりは?」
「私の方も順調だよ」

 なんとなく、といえば、聞く機会を逃してしまって、絵美里が今頑張ってることというのも分からないままだ。たぶんスキャンで分かることなんだろうけど……。

「ま、行こうか」
「うん」

 今日は私と友達が二人で図書館の貸出当番だ。
 スキャン待ちの列はまだまだ長く、文句を言う声もちらほらと聞こえる。並んでる人のほとんどが精神性麻薬ドラッグなんてものには無関係だろうから、無理もない。

「……この中の誰も、ドラッグなんてやってないと良いな」

 思わず言っていた。

「ん?」
「無責任だけど、私は、目の前に危険な事してる人がいるなら止めたいって思うし、悩みを取り除きたいと思う。それが一時しのぎにしかならなくても。でも、全員になんて無理なんだよね」
「どうしたの、すみれ」
「ううん、何でもない。行こ」

 理想論で、ワガママなのは分かってる。

「そういえば今日って放送の日じゃなかった?」
「あ、本当だ。話し合ったの一週間前だったから忘れてた」

 たしか放送班の三人で「雨の日に読みたい本」の紹介をするはずだ。
 一週間、前……。



『……それとも、きみに盲目的に愛されてる戦場優馬に嫉妬しっとした、なんて言って、信じるのかい?』



「っ!」
「どうしたの、すみれ?」
「ん、な、何でもないよ! あの日は大変だったなぁ、と思って……」
「ああ、傘忘れて帰っちゃったんだっけ?」

 私はあの日と翌日の騒動のことを、友達に話していない。呼び捨てするくらいだから円居先輩の話をあまり聞きたくないだろうし、言ったら怒られる気がする。円居先輩の後輩、古町こまち 沙羅さらという三つ編みっ子の話もして良いのか悩ましい。そもそもあの子は、どうなったんだろう? 円居先輩は確実に暴力を振るっていた気がするけど、そこについても、大丈夫なんだろうか?
 ちなみにあの日消えていた私の傘は、騒動の直後、乾いた状態で私の机の脇に立て掛けられているのが見つかっている。円居先輩がカフェで話してくれた予想通りだった。
 確か、「もし僕ときみが同じ傘の内に入るような写真を捏造ねつぞうできたら、きみに、『傘を忘れたフリをして僕に取り入った計算高い悪女』みたいなレッテルを貼れるだろうから」と言っていた。

「あの時は、少しでも分かり合えると思ったんだけどな……」
「え、何?」
「ううん、何でもない」

 はぐらかしながら図書館に入ったら、中にがいた。



「絵美里、ちょっとごめん、私トイレ行くね」
「良いけどなんで囁き声?」
「多分すぐ戻る……多分……」

 私は図書館前のトイレに逃げ込んだ。

「……どうしよう」

 鏡の前で目を閉じる。同じ学校の生徒なのだから、当然あり得る事態だった。でも、どうすれば良いかななんて分かるわけがない。そもそも、あの子にとって私って何なんだろう。
 ゆっくりと目を開けたその時、鏡に映った三つ編みっ子に、私は固まった。

「もしかして、町角すみれ先輩でしょうか?」
「ひっ!」
「……驚かせてしまい申し訳ありません、私はこういう者です」

 振り返ることすらできずにいる私に、彼女はタブレットを差し出してくる。一人一人固有の、学生情報のページだ。

『一年一組 古町綺羅きらら

「古町……きらら?」
「はい。すみれ先輩にご迷惑お掛けした沙羅の双子の妹です。おいやかとは思いましたが、町角先輩の特徴を知らなかったもので、沙羅に似た格好で待たせていただきました」
「ど、どうして……」
「安心なさってください、沙羅は今、自宅で謹慎中です」

 その顔はほとんど、あの時見た子と同じで、ただ、綺羅と名乗るこの子は、よく見れば髪が茶色っぽく、目の色も薄茶がかっていた。





 友達に許可を貰い、私は貸出業務を抜けて古町綺羅ちゃんと向かい合う。
「姉は……沙羅は、身内から見ても明らかに我儘わがまま放題の困った子です。小さい頃から欲しい物は全て手に入れないと済まない気質でしたが、親にも私にも直しようがありませんでした。円居レン先輩でしたか、その方のストーカーになったことからも、お分かりになるかと思います。中学二年になってからは、派手な外見をこのように変え、大人しくなったと思っていたのですが……残念ながら、円居先輩に警戒されないよう振る舞いを変えていただけだったようです」

 綺羅ちゃんは、聞きやすくも流れるように話す。立て板に水だ。三つ編みを軽く「このように」のところで叩くと、その後は話しながらゴムを外し、ほどいていく。ウェーブをかけられていた髪は、整えるまでもなくすぐに真っ直ぐになる。普段から三つ編みにしているわけではないみたいだ。その髪はやはり茶色。目といい、色素が薄いのかもしれない。眼鏡を外してどこかへしまうと、同じ顔ながら、全然印象の違う子がそこにいた。

「先日何があったのか、円居先輩のお話を伺い、馬鹿姉から聞き出しました。少し頭の回るだけに、あのような小細工で、とてもご心労お掛けしたこと、改めて申し訳ございません」

 真っ直ぐに伸ばしたロングヘアで、深く頭を下げる様子は、とても年下とは思えなかった。

「か、顔を上げてください」
「いえ、しっかりと謝罪させてください。一歩間違えば、町角先輩の名誉を著しく傷つけ、回復が困難な状態になっていました。[役割]持ちに対して、決してしてはならない事でした」
「わ、分かりました。謝罪を受け取ります、ですから顔を上げてください……」

 とても居心地が悪い。[役割]持ちだからといって、そこまで特別ということもないような気がするけど……。

「有難うございます。ですが、これはあくまでも、肉親としてのけじめです。私は、姉が同じような謝罪をするとは思えません。反省しているとも思いません。姉本人からの謝罪はまだお受けになっていないことを、お忘れにならないで下さい」

 再び上げた顔は、とてもりんとしていた。

「は、はい」
「こちら、ささやかな物ですが」

 小さなクッキー缶を差し出された。

「こ、ここまでしなくても……」
「いえ、あの性悪……姉が、きちんとした謝罪をし申し上げるとは思えません。当事者からの謝罪でなければ意味がないところを、こうして代理で済ませるしかない身内のせめてもの思いです。どうか受け取ってください」
「そ、そこまで言うのでしたら……いただきます」

 私もつられて敬体になっている。

「もし、謹慎後あれが……沙羅がまたご迷惑をお掛けするようでしたら、すぐにお知らせくださるか、通報してやってください。遠慮は無用ですので」
「姉妹、なんですよね?」
「はい、三十分だけ私が妹です」

 顔がよく似ているから、一卵性双生児なんだろう。DNAが同じでも、外見に違いが出るケースは珍しくない。

「それでも、あの女を庇おうとは思えません。家族なので義理は果たしますが」
「……」
「お優しいんですね、町角先輩は」

 ふわりと綺羅ちゃんの表情が柔らかくなった。

「円居先輩との事、密やかながら応援させていだだきます。姉などに負けずに、頑張ってください」
「えっ?」
「お似合いだと思います、私は」

 綺羅ちゃんはまた美しい礼をして、図書館を出ていく。取り残された私は、クッキー缶を手に呆然と……。

「している訳にもいかないからね、用が済んだら戻ってきて」
「はい……」

 ではなく、カウンターで貸出業務に入った。



「話はあまり聞こえなかった、というか聞かないようにしてたけど」
「うん」
「何か私に言うことがあるみたいだね、すみれ?」
「そうかなー? ほ、ほら、大した話じゃないかもしれないし……」
「あの雰囲気で何もないって無理があるでしょ。あの子めっちゃ謝ってたし」
「そうだね……」

 結局、友達にもバレた。
 とはいえ、話したのは一部だけだ。古町沙羅という子が誤解を招く写真を送ってきた事とか、それが通報されたとか、軽い動機とか。私が風邪を引いたときの事や、カフェの話なんかはしていない。

「そんな事が……」

 すぐに怒られるかと身構えていたら、友達は、少し考え込んだ。

「絵美里?」
「……すみれ、少しつまんない話、してもいい?」
「もちろん良いけど」
「私、[笑顔]で長いことやってきたけどさ」

 友達は記録をつけながら話し始めた。

「すみれが入院してた頃になんだよね、[誘惑]の試練とかいうのを受けたの。今まで、ろくに話したことなかったと思うけど」
「うん」
「私は[笑顔]だからさ、当然、いつでも笑顔でいるし、人を笑顔にすることを考える」
「うん……」
「で、話すといっても、円居レンの[誘惑]の内容は、まあ、あんまり話したくないんだけど」
「飛ばしていいよ」
「うん。結局、私が評価を下げることになったのは……いや、確かに下げたんだけどさ。笑顔じゃない私の顔が撮られた隠し撮り写真が、大量に出回ったからなんだよね」
「……それって……」
「明らかにヤバい所から撮ったものもあったからさ、当時の私は激おこだったんだけど」
「激おこ」
「死語使っちゃった。だって女子更衣室とかあったし。顔だけとはいえそんな所のもあったから、まあ、円居レンのことは大嫌いなんだけど、だったんだけど」

 ため息をついてエンターキー。

「……似てるね、手口が」
「うん。よく考えたら、女子の力がないと更衣室の撮影なんて不可能だよね。あそこの付近のセキュリティは並みじゃないし」
「うん」

 数年に一度、入りたての一年か卒業間近の三年が、無謀にも入り込もうとしてはあっさり粛清しゅくせいされている。

「もしかしたら、それも、沙羅って子のやったことだったのかも。女子なら頑張れば盗撮出来そうだし。というか、写真がある以上、出来たんだろうね」
「そっか……」
「もちろんその前の付きまといだの嫌がらせだのは嫌だったけど、[役割]だもんなぁ……」
「そっか」
「すみれ、あのさ」

 こちらを向いた友達の様子に、嫌な予感がした。

「……確かめてもらえない?」
「どうやって?」
「すみれなら、さっきの妹ちゃんに話聞けるじゃない」

 さっきの、綺羅ちゃん……聞いてみるのはありだろうけれど、分からないだろう。

「絵美里、さっきの子、私の顔とか格好を知ってた訳じゃないんだよね」
「?」
「つまり、写真なんかの現物証拠は見たこと無いんだと思う。絵美里のことは問題として発覚すらしてないし、あの子は知らないんじゃないかな」

 何より、まだ確証のないうちにまたあの子に頭を下げさせることになるかと思うと、気が重かった。

「……じゃ、円居レン……センパイ、に聞けない?」

 友達はとんでもないことを言い出した。
 まだ尊敬を込めて呼ぶには抵抗があるのか、言いにくそうに「センパイ」と言う。

「私も今、[誘惑]受けてる最中なんだけど……」
「でも話せるんでしょ? 私はほら、いつもケンカ腰だったから話すどころじゃなくて……というか、円居レンと話せるのすみれくらいしか思いつかなくて……」
「う、ううん……残念だけど、うまく聞ける保証は無いかな……」

 もし三日前なら、すぐに頷いていた。

「それでも良いから、ね?」
「分かった……けど……」

 私のことを怒っているらしいあの人に、私から話しかけたりなんて出来るんだろうか? 暗に「関わるな」と言われた後では、友達の願いに応えられる気がしなかった。

「中途半端は良くない、か」

 呟いてみる。



 何度かは話そうとせず、何度かは分かり合おうとして、円居先輩と私の関係は成り立っている。例えばこれが何かのゲームだったら、選択肢ごとにブレてしまった時点で、もうハッピーエンドには行けないのかもしれない。彼の言うことは、そういうことなんだろうか。親しくなってから突き放すような真似を、してしまったんだろうか。

「私にとって、円居先輩ってどういう人なんだろう」

 隣の友達にも聞こえていたんだろうけど、何も言われなかった。たぶん友達も、今、困惑中だ。
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