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第五話 晴成、大地に立つ

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 ここがグラドーンか……
 俺はザーナの創った星・グラドーンに転生した。要望通り7歳児なのだろう、小学生低学年を思わせる、この腕の細さ。近く鏡で自分を見てみたいものだ。
 しかし、此処は空気が重いというか、濃い気がする。

「晴成さん、無事に転生できて何よりです」

 可愛らしい少女が声をかける。ラフィアだ。彼女もまた俺と同じくらいの年齢をしている。

「あの、ラフィア様……僕はこれから何をすればいいのでしょうか?」

 此処には俺とラフィア以外にもう一人少年がいる。地球で言えば中高生くらいだろうか、少しあどけなさが残っている。
 しかしラフィアが彼を召喚? 創生? したときはすごかった。思わず、これぞ異世界! って叫びそうだったもんなぁ……

◇◆◇◆


「地は骨となり肉となり、水は巡りて血となる。風は息吹となり、火は熱を以って動かす。空は調和にて彼の者を形作らん。妙技・五陰仮和合」

 ラフィアが錫杖を掲げると強い光が放たれる。まばゆい光は直視することが出来ないほど強い。
 ゆっくりと光が収束するのを瞼の奥に感じ、目を開く。するとどうだろうか一人の少年がラフィアの前に傅いていた。

「此度、新たに生を受けた者にございます。如何なる命も謹んでお受けいたします」

 スゲェ……どっから出てきた? ていうか、敬語俺より上手くね?

「さて晴成さん、一通りの準備も終わりましたし、転生いたしましょう。目を閉じて下さい」

 そう言って、ラフィアは二人で輪を作るように俺の手を握る。俺は彼女の指示のままに目を閉じてその時を待った。

「あ、それと君は受肉したわたくしの分体の所に来なさい」

 ラフィア、部下? に厳しくない? 女性上司にそんな風にされたら、俺縮み上がっちゃうよ……
 少年の事を少し不憫に思っていると、不意に意識が遠のいた……

◇◆◇◆


 というのが少し前にあったわけさ……『誰に言っているんだ?』とか言うな。俺の状況把握の独り言だ!

「晴成さん、此の者を従者にして、名付けて下さい。此の者をダンジョンマスターにすれば、ダンジョンを支配しつつ、此の世界での冒険が可能になります」

 なるほど、その為の準備でしたか。
 しかし、小さくなったラフィアは愛らしい。まさに美少女だ。美人って幼い時から美の素養が高いんだね。実感したよ……

 それにしてもなんか『ガキのくせにイチャイチャするな』とか、『リア充爆発しろ』とか、誰かが遠くから脳に直接響かせてる感覚、何とかならないかなぁ……もしかして地球の俺と繋がってて、その怨念が届いてる? まさかね……

「えっと、晴成さん、どうしました?」

「う、ううん、何でもない。さぁ契約をしようか……えっと、契約ってどうやるの?」

 怨念なんかは、無視一択! 此れから異世界生活満喫するんだから、余計なことは気にしてはいけない、これ鉄則!

「あ、そうでした。晴成さんのところは魔法による契約が無いんでしたね。では、立会による契約をいたしましょう」

「じゃぁ、それでよろしく」

「晴成さんはこちらに立ってください。君はここに伏していなさい」

 俺たちはラフィアの指示した場所に移動する。ラフィアが部下に厳しいのはもうスルーです。甘いだけでは部下は育たないから、仕方ないんだよね……

「では、立会・創世神ラフィアの名の下に行う。雨宮晴成さんを主と為し、彼の者を従と為す。双方の同意にて主従を結び、双方の同意にてのみ破棄を為す。双方、わたくしが示しし事、盟約を為すならば返事をもって答えよ」

 俺たち三人の足もとにそれぞれ小さい魔方陣が展開していた。俺はそのクラシックなスタイルに少し感動を覚えつつも、了承の返事をする。

「了承した」

「拝命いたしました」

「双方の同意を以って、此処に盟約を為す」

 最後にラフィアが結ぶと魔方陣は強く光を放ち、消えていった。
 このクラシックなエフェクト好きだわぁ。

「では、晴成さん、契約も済みましたので彼の者に名前を付けてください」

「名前……ちょっと待ってね……」

 うーん、ピンチだ。俺は、ゲームでもアカウントでも名前が一番時間かかるんだよ……

◇◆◇◆


「よし、決めた。君は、“メーダス”」

「はい、僕はメーダス。主様宜しくお願いいたします」

 メーダスは体からほんのり光を放ちながら恭しく頭を下げる。

「メーダス、君は此れからこの魔石を以ってダンジョンマスターに成りなさい。ダンジョンの形は晴成さんからよく聞いて作るように」

 ラフィアはバレーボール大のサイズの魔石と思われる石を出して渡した。
 透明感ある黒。魔石って、アメジストとブラックダイアを合わせた感じだ。

「あぁと、メーダス、俺のイメージとするダンジョンはフィールド型のダンジョンだ。後々ダンジョン区域そのものを領地化したいと思っている。とはいってもまずは俺たちの居住環境を整えるのが先決だな」

「なるほど。ダンジョン領域なら外敵の排除がしやすいうえに、フィールド型なら土地区画がしやすい。という寸法ですか」

「そういう事。やれそうか?」

「多分大丈夫だと思われます。ダンジョンポイントさえ順調に入るようになれば、領域拡張も区域内改新もやれるはずです」

「よし。後、ダンジョンポイントで地球のものを取り寄せれるか?」

「お答えかねます。実際僕がダンジョンマスターに成れば、出来る、出来ないがお答えできるとは思いますが、現時点では何とも……」

 なるほど、こればかりは出たとこ勝負か。ラフィアもこれが一番確率が高いと踏んだわけだし、確率は高いとは思うがあとは持ち前のラック次第か。

「まぁ、取り寄せは後で確認するとして、ダンジョンのイメージは共有できたかな。あ、後、フィールドダンジョン内に塔型や洞窟型のダンジョンは出来るのか?」

「ダンジョンの子株化ですね、可能です」

「よし。計画が一段落したら、子株化を進めるとしよう。メーダス、先ずはマスター登録をしてくれ」

「承りました」

 メーダスが詠唱をすると魔石が光りだし、彼の胸へと吸い込まれるように消えた。
 まったく魔法世界っていうのは漫画チックだよ。

「マスター登録完了いたしました。初期展開を開始します」

 一瞬、大地が波打ったような感じがあった。多分、ダンジョン化した影響だろう。

「よし、初期設定は後で詰めるとして、地球からの取り寄せは出来そうか?」

「はい。ポイントはかなり割高ですが、項目の量から察するにほぼ全てが可能ではないでしょうか」

 ラフィアの読みは合ってたわけだ。流石だな。

「そうか、それは重畳。よかったな、ラフィア」

「はい」

 笑顔の花が咲く。
 久しく感じていなかった、張り、を感じた。
 あぁ、この充実感、懐かしいな……

「さて、ラフィアの為にもダンジョン運営を頑張りますかね」

 俺は、気合を入れると、メーダスと細かい打ち合わせをするのだった。
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