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ボクと君の遊園地デート
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昨日カナメとも話していたけれど、この遊園地はさほど大きくない。
正確には、遊園地としての区画はさほど大きくなく、簡易的な植物園や公園やらも、遊園地内に存在している。
今日のボクたちのプランは、遊園地からの植物園の散歩、公園でお昼を食べ、午後からまた遊園地。
小さいくせに、夜には花火も上がる贅沢な遊園地なんだ。
「先輩、最初は何に乗りましょうか」
「凪くんは、何か乗りたいものがあるのかい?」
小さいとは言え、アトラクション自体は十を超え、小さいからこそ、割とどのアトラクションも行列になってしまっている。
人気なジェットコースターなんかは、開演したばかりの今でも、かなりの行列だ。……みんな、もう少し遠出してくれてもいいんじゃないかい?
「自分、こう言った場所は初めてで……調べては見たんですが、どれも気になって良くわからなかったんですよね」
どれも楽しそうということかい? なんだか可愛らしい発言をしてくれる。
君はボクの母性を掻き立てて、一体なにを望むというんだ。
「なら、全部乗るつもりでいこうじゃないか。最初は気軽に、メリーゴーランドなんてどうだい?」
白馬が遊覧する良くあるものではなく、多少子供向けに作られた、いろんな動物をモチーフにしたメリーゴーランド。
列を見ても、やっぱり親子連れが多い印象だ。
「なんだか、ちょっと気恥ずかしいですね」
「カップルで乗るのも定番らしいから、恥ずかしがることも無いんじゃないかい?」
……自分で言っていて思ったけれど、「恋人だ」と発言するよりも、「カップルなんだ」と発言する方が恥ずかしいのはなんでだろう。唇がすぐに乾いてきちゃうじゃないか。
カナメのアドバイス通り、リップを持参してきたのは正解だったね。
「先輩が良ければ自分は大丈夫ですよ」
「なら乗ってみようか。ボクも子供の頃以来だから、ちょっと懐かしい感じだね」
列はそれなりに並んでいるけれど、一回に乗れる人数が多いのと、並んでる中でも子供しか乗らない家族もいる。
割とすぐに順番が回ってきたんだ。
「これは二人乗り用みたいだよ、凪くん。一緒にどうだい?」
「一緒にですか。えっと……とても楽しそう、ですね」
カボチャの馬車のような乗り物。子供たちは率先して動物の形をしたものばかりに乗るから、割と人気がないらしい。女の子なら乗りたがりそうなものなんだけど、そうでもないのかな?
凪くんの返事が、少し動揺していたように聞こえたのはなんでだろう? やっぱり恥ずかしいのかな。ちょっと可愛すぎるから、男の子は気にしちゃうのかな?
考えるている内に、凪くんの方から馬車に乗り込み、手を差し出してくれる。なんだかんだ言って乗り気だなぁ。
……なんか、こうして手を差し出されると、王子様にエスコートされるお姫様みたいだね。
服装も性格も、ボクをお姫様とは到底呼ばないだろうけど。
「ありがとう、凪くん」
差し出された手は暖かく、心が落ち着くようだ。
……あれ、こんな風に彼の手を握るのは初めてじゃないだろうか。
確かに、前回の映画の後は凪くんに補助してもらってはいたけれど、あの時は泣いていてあまり気にはならなかった。
けど、こうしてお互い視線を合わせて手を握るなんて──
「先輩? 早く乗らないと迷惑になってしまいますよ」
そう言われ周囲に視線を向けると、他の動物に乗った子供たちから、非難の視線のようなものを向けられている……ボクはなにをやっているんだ。
「ご、ごめんよ」
急いで馬車に乗り込むと、メルヘンチックな音楽と共に、乗り物がゆらゆらと動き出す。
せっかくのメリーゴーランドだというのに、ボクはただ俯いて、さっきまで凪くんの手をにぎっていた、自分の右手にばかり視線を向けてしまっている……。
「程よい揺れ加減に、色んな景色を楽しめますね。意外と面白いかもしれません」
なんか変な感想を述べているじゃないか。意識しているのはボクだけなのかい? こうして触れ合うことは、君にとって当然のことなのかい?
多分真っ赤になっている顔を見られたくないから顔は上げられないけれど、横目に凪くんに視線を向ける。
ボクの視線に気づいたのか、優しく微笑んでくれるその顔は、若干赤くなっているようにも見える。
なんだ、君もちょっとは意識してくれているじゃないか! なんだか、さらに恥ずかしくなってしまったよ……もう景色なんて見られない。
「そう、だね」
ただひたすらに君の意見に同意することしか、今のボクにはできそうにないんだ。ごめんよ、凪くん。
頭が沸騰から冷めるよりはやく、可愛い音楽は終わり、メリーゴーランドの終了を知らせてくれる。
さっきの二の舞にならないよう、体だけはなんとか動かして、アトラクションを後にした。
凪くんはボクの様子を気にかけてくれているけれど、君のその優しさは更にボクの体温を上げていくんだ。今はそっとしておいてくれ!
正確には、遊園地としての区画はさほど大きくなく、簡易的な植物園や公園やらも、遊園地内に存在している。
今日のボクたちのプランは、遊園地からの植物園の散歩、公園でお昼を食べ、午後からまた遊園地。
小さいくせに、夜には花火も上がる贅沢な遊園地なんだ。
「先輩、最初は何に乗りましょうか」
「凪くんは、何か乗りたいものがあるのかい?」
小さいとは言え、アトラクション自体は十を超え、小さいからこそ、割とどのアトラクションも行列になってしまっている。
人気なジェットコースターなんかは、開演したばかりの今でも、かなりの行列だ。……みんな、もう少し遠出してくれてもいいんじゃないかい?
「自分、こう言った場所は初めてで……調べては見たんですが、どれも気になって良くわからなかったんですよね」
どれも楽しそうということかい? なんだか可愛らしい発言をしてくれる。
君はボクの母性を掻き立てて、一体なにを望むというんだ。
「なら、全部乗るつもりでいこうじゃないか。最初は気軽に、メリーゴーランドなんてどうだい?」
白馬が遊覧する良くあるものではなく、多少子供向けに作られた、いろんな動物をモチーフにしたメリーゴーランド。
列を見ても、やっぱり親子連れが多い印象だ。
「なんだか、ちょっと気恥ずかしいですね」
「カップルで乗るのも定番らしいから、恥ずかしがることも無いんじゃないかい?」
……自分で言っていて思ったけれど、「恋人だ」と発言するよりも、「カップルなんだ」と発言する方が恥ずかしいのはなんでだろう。唇がすぐに乾いてきちゃうじゃないか。
カナメのアドバイス通り、リップを持参してきたのは正解だったね。
「先輩が良ければ自分は大丈夫ですよ」
「なら乗ってみようか。ボクも子供の頃以来だから、ちょっと懐かしい感じだね」
列はそれなりに並んでいるけれど、一回に乗れる人数が多いのと、並んでる中でも子供しか乗らない家族もいる。
割とすぐに順番が回ってきたんだ。
「これは二人乗り用みたいだよ、凪くん。一緒にどうだい?」
「一緒にですか。えっと……とても楽しそう、ですね」
カボチャの馬車のような乗り物。子供たちは率先して動物の形をしたものばかりに乗るから、割と人気がないらしい。女の子なら乗りたがりそうなものなんだけど、そうでもないのかな?
凪くんの返事が、少し動揺していたように聞こえたのはなんでだろう? やっぱり恥ずかしいのかな。ちょっと可愛すぎるから、男の子は気にしちゃうのかな?
考えるている内に、凪くんの方から馬車に乗り込み、手を差し出してくれる。なんだかんだ言って乗り気だなぁ。
……なんか、こうして手を差し出されると、王子様にエスコートされるお姫様みたいだね。
服装も性格も、ボクをお姫様とは到底呼ばないだろうけど。
「ありがとう、凪くん」
差し出された手は暖かく、心が落ち着くようだ。
……あれ、こんな風に彼の手を握るのは初めてじゃないだろうか。
確かに、前回の映画の後は凪くんに補助してもらってはいたけれど、あの時は泣いていてあまり気にはならなかった。
けど、こうしてお互い視線を合わせて手を握るなんて──
「先輩? 早く乗らないと迷惑になってしまいますよ」
そう言われ周囲に視線を向けると、他の動物に乗った子供たちから、非難の視線のようなものを向けられている……ボクはなにをやっているんだ。
「ご、ごめんよ」
急いで馬車に乗り込むと、メルヘンチックな音楽と共に、乗り物がゆらゆらと動き出す。
せっかくのメリーゴーランドだというのに、ボクはただ俯いて、さっきまで凪くんの手をにぎっていた、自分の右手にばかり視線を向けてしまっている……。
「程よい揺れ加減に、色んな景色を楽しめますね。意外と面白いかもしれません」
なんか変な感想を述べているじゃないか。意識しているのはボクだけなのかい? こうして触れ合うことは、君にとって当然のことなのかい?
多分真っ赤になっている顔を見られたくないから顔は上げられないけれど、横目に凪くんに視線を向ける。
ボクの視線に気づいたのか、優しく微笑んでくれるその顔は、若干赤くなっているようにも見える。
なんだ、君もちょっとは意識してくれているじゃないか! なんだか、さらに恥ずかしくなってしまったよ……もう景色なんて見られない。
「そう、だね」
ただひたすらに君の意見に同意することしか、今のボクにはできそうにないんだ。ごめんよ、凪くん。
頭が沸騰から冷めるよりはやく、可愛い音楽は終わり、メリーゴーランドの終了を知らせてくれる。
さっきの二の舞にならないよう、体だけはなんとか動かして、アトラクションを後にした。
凪くんはボクの様子を気にかけてくれているけれど、君のその優しさは更にボクの体温を上げていくんだ。今はそっとしておいてくれ!
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