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ただ魔法を教わるだけのはずだったのに、なんでこんなことに
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「なあ、本当に知ってるんだよな? 魔法の使い方」
「うん。使う事はできないけど、教わった事はあるんだって」
「……こう言っちゃなんだが、そいつが嘘をついてる可能性は無いのか?」
彼女の言っていることが本当なら、ぜひ魔法を使いたい。
嘘だったとしても、その時は手を切ればいいだけの話だ。
そう思って、戦闘中にしか覚えれないという、なんとも怪しい彼女の発言を信じてついてきたわけだが……。
これで騙されていて、スライムより遥かに強いモンスターと戦わされでもしたら目も当てられないな。
「そんなことないと思う。あの人も魔法使う時はそうしてたし、それ以外に教えてくれたことも本当だったからね」
「まあ、ここまできたら信じる他無いんだが。……で、どこまで行くんだ?」
草原をただ延々と歩き続けるのも疲れた。どこまで続いてるんだよ、これ。
仮にゲームなら、マップでも見れば、どっち方向に街があるだとか分かるからいいが、完全無知な現状だと精神が削られる一方だ。
「近くの街まで歩いてるんだよ。スライムたちはどこで出てくるか分からないから、とりあえず歩き回るしかないの」
「決まった生息地とか無いのか?」
「黒の森までいけば多分居るけど、少し遠いし……多分君には早そうだから。こうして歩き回るしかないの」
遠回しにお前はの弱いんだと言われた気分だな。本当のことだが、なんか落ち込む。
「ちなみに、その方法ってのは戦闘中以外に教えてもらう事は出来ないのか? できれば先に知っておきたいんだけど……」
「別に、そんなに難しいことでも無いからそれでもいいよ。聞いとく?」
「聞けるのか。なら頼む」
聞いてみる物だな。あっさりと教えてくれるみたいじゃないか。
「えっとね、口上を述べるんだって。『コマンド入力、魔法』て。そうすると、自分の前になんか文字が出てきて、そこから選んで魔法使うとか言ってた」
「……悪い、もう一回聞いてもいいか?」
なんか、すごくメタい言葉を聞いたと思うんだが、聞き間違いじゃないよな?
「『コマンド入力、魔法』だよ!」
「……そうか」
これはなんだ? やっぱりこの世界、ゲームに酷似した世界とかじゃなくて、ゲームの中そのものなのか? 俺は誰かに操作されているのか?
……いや、深くは考えまい。しかし、それが事実なら気になることが何点かあるわけだが。
とりあえず思った事は、先に聞けるならそもそも、彼女は一緒に来なくても良かったんじゃなかろうか。
仮に彼女も戦闘のパーティに加わられると、守れる保証がないのだが。戦えない人間は下がってて欲し──いや、待てよ?
いくらモンスターの出現率が低いとはいえ、モンスターが出ないわけではないあの草原。
そんな場所を女の子が一人で歩いているなんて普通じゃないよな?
……まあ、ゲームの中のNPCと考えたら、普通じゃなくてもおかしくはないんだが……。
ふと思いたち、ナナの全身を集中して確認してみる。別にいやらしい気持ちはないからな? ……全くないとは言わんが。
「おぃ……」
「なに?」
「あんた、冒険者の協力なんか必要ないだろ」
全ステータス俺の倍以上ある。
何より今問題な点が二つ。
「魔法が使えない、だって? マーラさん?」
「あらら? なんで気づいたの?」
偽名に加えて、使える魔法の一覧まで書かれていた。全解析は便利だな。
つまり、名前を偽り、魔法を使えないと嘘をついてまで俺を連れ歩いていたんだ。
裏があるのは明白な事だろう?
「悪いが、あんたのステータスを覗かせてもらった。少し違和感があったんでな」
「──えっち」
「なっ……! バカ言うな! 悪いこととは思うが、そういうのじゃなくて……」
なんで嘘つかれて、それを見抜いた俺が動揺するんだよ⁉︎
ここで動揺すべきはあんたの方だろ⁉︎
「それで? 嘘をついたのはごめんだけど、君はそれが許せないの?」
「いい気分ではないな」
「じゃあ、私を倒す?」
ん? なんだこれ……少し様子がおかしくないか?
「何を言って──」
「君がその気なら、私はそれを拒んだりはしないから」
ナナ──いや、マーラの様子がおかしい。
さっきまでの人懐こい笑顔は消え、寂しげな表情で睨んでくる。
武器なども持たない彼女が、本気で俺と戦うつもりか? ……いや、俺も武器持ってなかった。
なんだこれ、本当に戦うのか?
状況が分からないまま二人して睨み合う。
しかし、どちらから動くこともなく、会話があるわけでもない。
長い沈黙が続く。返事の催促もないというこの現状は……また選択肢でもでているのだろうか。
「本当に戦うのか?」
「……そう。分かったわ」
その言葉と同時に、彼女の雰囲気が変わる。
全解析で確認できる視界の中に、『ENCOUNT』の文字が現れたのである。
……そんなものまで表示するんだな、これ。便利だわー。
「うん。使う事はできないけど、教わった事はあるんだって」
「……こう言っちゃなんだが、そいつが嘘をついてる可能性は無いのか?」
彼女の言っていることが本当なら、ぜひ魔法を使いたい。
嘘だったとしても、その時は手を切ればいいだけの話だ。
そう思って、戦闘中にしか覚えれないという、なんとも怪しい彼女の発言を信じてついてきたわけだが……。
これで騙されていて、スライムより遥かに強いモンスターと戦わされでもしたら目も当てられないな。
「そんなことないと思う。あの人も魔法使う時はそうしてたし、それ以外に教えてくれたことも本当だったからね」
「まあ、ここまできたら信じる他無いんだが。……で、どこまで行くんだ?」
草原をただ延々と歩き続けるのも疲れた。どこまで続いてるんだよ、これ。
仮にゲームなら、マップでも見れば、どっち方向に街があるだとか分かるからいいが、完全無知な現状だと精神が削られる一方だ。
「近くの街まで歩いてるんだよ。スライムたちはどこで出てくるか分からないから、とりあえず歩き回るしかないの」
「決まった生息地とか無いのか?」
「黒の森までいけば多分居るけど、少し遠いし……多分君には早そうだから。こうして歩き回るしかないの」
遠回しにお前はの弱いんだと言われた気分だな。本当のことだが、なんか落ち込む。
「ちなみに、その方法ってのは戦闘中以外に教えてもらう事は出来ないのか? できれば先に知っておきたいんだけど……」
「別に、そんなに難しいことでも無いからそれでもいいよ。聞いとく?」
「聞けるのか。なら頼む」
聞いてみる物だな。あっさりと教えてくれるみたいじゃないか。
「えっとね、口上を述べるんだって。『コマンド入力、魔法』て。そうすると、自分の前になんか文字が出てきて、そこから選んで魔法使うとか言ってた」
「……悪い、もう一回聞いてもいいか?」
なんか、すごくメタい言葉を聞いたと思うんだが、聞き間違いじゃないよな?
「『コマンド入力、魔法』だよ!」
「……そうか」
これはなんだ? やっぱりこの世界、ゲームに酷似した世界とかじゃなくて、ゲームの中そのものなのか? 俺は誰かに操作されているのか?
……いや、深くは考えまい。しかし、それが事実なら気になることが何点かあるわけだが。
とりあえず思った事は、先に聞けるならそもそも、彼女は一緒に来なくても良かったんじゃなかろうか。
仮に彼女も戦闘のパーティに加わられると、守れる保証がないのだが。戦えない人間は下がってて欲し──いや、待てよ?
いくらモンスターの出現率が低いとはいえ、モンスターが出ないわけではないあの草原。
そんな場所を女の子が一人で歩いているなんて普通じゃないよな?
……まあ、ゲームの中のNPCと考えたら、普通じゃなくてもおかしくはないんだが……。
ふと思いたち、ナナの全身を集中して確認してみる。別にいやらしい気持ちはないからな? ……全くないとは言わんが。
「おぃ……」
「なに?」
「あんた、冒険者の協力なんか必要ないだろ」
全ステータス俺の倍以上ある。
何より今問題な点が二つ。
「魔法が使えない、だって? マーラさん?」
「あらら? なんで気づいたの?」
偽名に加えて、使える魔法の一覧まで書かれていた。全解析は便利だな。
つまり、名前を偽り、魔法を使えないと嘘をついてまで俺を連れ歩いていたんだ。
裏があるのは明白な事だろう?
「悪いが、あんたのステータスを覗かせてもらった。少し違和感があったんでな」
「──えっち」
「なっ……! バカ言うな! 悪いこととは思うが、そういうのじゃなくて……」
なんで嘘つかれて、それを見抜いた俺が動揺するんだよ⁉︎
ここで動揺すべきはあんたの方だろ⁉︎
「それで? 嘘をついたのはごめんだけど、君はそれが許せないの?」
「いい気分ではないな」
「じゃあ、私を倒す?」
ん? なんだこれ……少し様子がおかしくないか?
「何を言って──」
「君がその気なら、私はそれを拒んだりはしないから」
ナナ──いや、マーラの様子がおかしい。
さっきまでの人懐こい笑顔は消え、寂しげな表情で睨んでくる。
武器なども持たない彼女が、本気で俺と戦うつもりか? ……いや、俺も武器持ってなかった。
なんだこれ、本当に戦うのか?
状況が分からないまま二人して睨み合う。
しかし、どちらから動くこともなく、会話があるわけでもない。
長い沈黙が続く。返事の催促もないというこの現状は……また選択肢でもでているのだろうか。
「本当に戦うのか?」
「……そう。分かったわ」
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……そんなものまで表示するんだな、これ。便利だわー。
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