3 / 7
魔法は使いたいけど使えない。チートのくせにチート具合が半端なんだけど
しおりを挟む
「あんたは?」
振り返った先には、どこか嬉しそうに首を傾げている黒い髪の少女。
本当にゲームとかに出てきそうな、絵に描いたような美少女だ。思わず視線を逸らしてしまう。
「ああ、ごめんなさい。──私はナナ。旅人みたいなものだよ。もう一度聞くけど、君は冒険者なの?」
黒髪で名前がナナか。日本人──じゃないよな?
しかし、何故こんなに冒険者なのかを尋ねてくるのか? 冒険者も旅人も似たようなものだと思うのだが……。
「冒険者ってのは旅人とは違うのか?」
「全然! 旅人は自称で、冒険者は資格を持つ人のことなんだから──って、そんなこと聞いてくるってことは違うんだね」
「まあ、そうだな」
なるほど。旅人という職業はないが、冒険者という職業はあるんだな。
ここでこんな話が出てくるということはおそらく、今後俺は冒険者になるということだろうか?
「残念。冒険者だったら依頼したかったんだけどなぁ」
「依頼?」
クエストみたいなものか。ゲームや漫画で冒険者といえば、確かにクエストを受けるイメージはあるが……ターン制という割に、MMOのようなシステムになってるのか?
「ちなみに、どんな依頼なんだ?」
「スライムの討伐だよ。正確には、生きたスライムの核が必要なの」
「ふむ……」
さっき戦ったやつだろうか。しかし、核が必要となると俺は役に立ちそうにないな。
「悪いな。どうやら俺では役に立てそうにない。さっきスライムと戦ったが、俺はその核とやらを破壊して倒すことしかできないらしいからな」
核を傷つけずにHPを0にすれば良いのかもしれないが、レベルが上がったとはいえ、攻撃は受けても一回までだろう。二回も攻撃されれば、負けは目に見えている。
「そんな人居るの……? 魔法は使えないってこと?」
魔法……火球とやらが存在するのだから、まああるとは思っていたが、現地民らしき人間からそれを聞けたのは大きい。
この世界には間違いなく、魔法というものが存在するのだ! これはテンション上がる!
しかしこの言い方だと、魔法は使えて当たり前? この世界では珍しいものではなさそうだな。
「使えない。使い方を知らないだけかも知れないが、使った事はないな」
「そっか……やっぱり冒険者じゃないんだ。それじゃ、君はなんでこんな場所に?」
あー……困る質問来ちゃったな。俺にも分からんが、そんな回答で納得されるとは思えないし、かといって代わりになるような回答を知らん。
こういう時どう答えるのが正解なんだ。
思わず黙り込んでしまう。なんともいたたまれない沈黙が過ぎていく。
不思議そうに首を傾げたままの彼女は、特に言葉を続けることもなく、ひたすらに俺の回答待ちだ。
せめてこの世界のことがもう少しわかれば、誤魔化すこともできるんだろうけど、いかんせん情報が無さすぎるんだよな……。
続く沈黙は更に空気を重くする。もうなんでも良いから言った方がいいのか? 美少女にこれほど見つめられるのは悪い気がしなくなってきてる自分が居て、ちょっと怖くなってきたんだが。
結局状況に甘んじて眺められる現状、さすがにおかしいだろ。
体感だが、もう十分は経ってると思うんだが、彼女に一切の動きを感じない。俺の回答待ちでそんなに長く待てるものなのか?
ただ一つだけ、ターン制のバトルを思い出して、思いついた事はある。あるのだが──まさか、そんなことないよな?
「……道に迷ったんだ」
いい回答が浮かばなかった。浮かばなかったが、とりあえず何か答えたかったんだ。確認のために。
「道に? 近くの街でも結構かかると思うけどな……すごい方向音痴くん?」
まるで、さっきの間がなかったかのように返される、小馬鹿にした声。
間違い無いな。さっきの間は俺の回答を待っていた。──ただし、彼女の意思ではなく、世界の意思として。
つまり、あの時間はRPGで言うところの、プレイヤーに選択権を委ねられる選択肢が現れていた場面なのだろう。
……あの回答で今後どんな影響があるかは知らないが、まあ意味のない選択肢というものもよくあることだ。深く考えても仕方ないだろう。
「まあ、そんな事はともかく、依頼を受けてやれなくて悪いな。助けてやりたい気持ちはあるんだが」
「それじゃ、私が教える──てのはどう?」
「教える? 一体なにを」
「ま、ほ、う‼︎」
一体なにを言ってるんだ?
彼女が俺に魔法を教える? 魔法が使えないから、冒険者を探してたんじゃないのか。
魔法が使えない人間が、魔法なら使い方を教えることなんてできるわけないだろう……。
これは当てが外れたか?
チュートリアルの案内人でも、ヒロインでもない、ただのモブなのかも知れないな。残念美少女と言うところか。
「変な期待をさせないでくれ」
「教わった事はあるから、教えるだけならできるよ?」
さも当たり前と言いたげに首を傾げるその様子からは、冗談の類には見えなかった。
振り返った先には、どこか嬉しそうに首を傾げている黒い髪の少女。
本当にゲームとかに出てきそうな、絵に描いたような美少女だ。思わず視線を逸らしてしまう。
「ああ、ごめんなさい。──私はナナ。旅人みたいなものだよ。もう一度聞くけど、君は冒険者なの?」
黒髪で名前がナナか。日本人──じゃないよな?
しかし、何故こんなに冒険者なのかを尋ねてくるのか? 冒険者も旅人も似たようなものだと思うのだが……。
「冒険者ってのは旅人とは違うのか?」
「全然! 旅人は自称で、冒険者は資格を持つ人のことなんだから──って、そんなこと聞いてくるってことは違うんだね」
「まあ、そうだな」
なるほど。旅人という職業はないが、冒険者という職業はあるんだな。
ここでこんな話が出てくるということはおそらく、今後俺は冒険者になるということだろうか?
「残念。冒険者だったら依頼したかったんだけどなぁ」
「依頼?」
クエストみたいなものか。ゲームや漫画で冒険者といえば、確かにクエストを受けるイメージはあるが……ターン制という割に、MMOのようなシステムになってるのか?
「ちなみに、どんな依頼なんだ?」
「スライムの討伐だよ。正確には、生きたスライムの核が必要なの」
「ふむ……」
さっき戦ったやつだろうか。しかし、核が必要となると俺は役に立ちそうにないな。
「悪いな。どうやら俺では役に立てそうにない。さっきスライムと戦ったが、俺はその核とやらを破壊して倒すことしかできないらしいからな」
核を傷つけずにHPを0にすれば良いのかもしれないが、レベルが上がったとはいえ、攻撃は受けても一回までだろう。二回も攻撃されれば、負けは目に見えている。
「そんな人居るの……? 魔法は使えないってこと?」
魔法……火球とやらが存在するのだから、まああるとは思っていたが、現地民らしき人間からそれを聞けたのは大きい。
この世界には間違いなく、魔法というものが存在するのだ! これはテンション上がる!
しかしこの言い方だと、魔法は使えて当たり前? この世界では珍しいものではなさそうだな。
「使えない。使い方を知らないだけかも知れないが、使った事はないな」
「そっか……やっぱり冒険者じゃないんだ。それじゃ、君はなんでこんな場所に?」
あー……困る質問来ちゃったな。俺にも分からんが、そんな回答で納得されるとは思えないし、かといって代わりになるような回答を知らん。
こういう時どう答えるのが正解なんだ。
思わず黙り込んでしまう。なんともいたたまれない沈黙が過ぎていく。
不思議そうに首を傾げたままの彼女は、特に言葉を続けることもなく、ひたすらに俺の回答待ちだ。
せめてこの世界のことがもう少しわかれば、誤魔化すこともできるんだろうけど、いかんせん情報が無さすぎるんだよな……。
続く沈黙は更に空気を重くする。もうなんでも良いから言った方がいいのか? 美少女にこれほど見つめられるのは悪い気がしなくなってきてる自分が居て、ちょっと怖くなってきたんだが。
結局状況に甘んじて眺められる現状、さすがにおかしいだろ。
体感だが、もう十分は経ってると思うんだが、彼女に一切の動きを感じない。俺の回答待ちでそんなに長く待てるものなのか?
ただ一つだけ、ターン制のバトルを思い出して、思いついた事はある。あるのだが──まさか、そんなことないよな?
「……道に迷ったんだ」
いい回答が浮かばなかった。浮かばなかったが、とりあえず何か答えたかったんだ。確認のために。
「道に? 近くの街でも結構かかると思うけどな……すごい方向音痴くん?」
まるで、さっきの間がなかったかのように返される、小馬鹿にした声。
間違い無いな。さっきの間は俺の回答を待っていた。──ただし、彼女の意思ではなく、世界の意思として。
つまり、あの時間はRPGで言うところの、プレイヤーに選択権を委ねられる選択肢が現れていた場面なのだろう。
……あの回答で今後どんな影響があるかは知らないが、まあ意味のない選択肢というものもよくあることだ。深く考えても仕方ないだろう。
「まあ、そんな事はともかく、依頼を受けてやれなくて悪いな。助けてやりたい気持ちはあるんだが」
「それじゃ、私が教える──てのはどう?」
「教える? 一体なにを」
「ま、ほ、う‼︎」
一体なにを言ってるんだ?
彼女が俺に魔法を教える? 魔法が使えないから、冒険者を探してたんじゃないのか。
魔法が使えない人間が、魔法なら使い方を教えることなんてできるわけないだろう……。
これは当てが外れたか?
チュートリアルの案内人でも、ヒロインでもない、ただのモブなのかも知れないな。残念美少女と言うところか。
「変な期待をさせないでくれ」
「教わった事はあるから、教えるだけならできるよ?」
さも当たり前と言いたげに首を傾げるその様子からは、冗談の類には見えなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる