本物のチート能力を手に入れたけど、使い方が分からないのだが

夜兎

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チートコードのせいでヌルゲーかと思ったら、やっぱりヌルゲーかもしれない件

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「さて、全解析フルアナライズとやらの効果は、と」

 もう対峙したところで、怯える必要はない。
 ターン制と分かってれば落ち着いて対処できるからな。

 視界に表示されているHPは──スライムのHP35……? いや待て待て。雑魚キャラ、だよな?
 いくら初期ステータスとは言え、なんで主人公なはずの俺よりHP高いんだよ。

 さらに集中して見てみると、どうやらステータスやら弱点やら見えるらしい。かなり便利だな、さすがチートなだけあるよ。

 ──でだ、なんで殆どのステータスが俺より高いんだよ。唯一高い素早さと知力でなんとか勝ってるぐらいじゃないか。
 それにしたって、このステータス差で一撃とは、ダメージ計算がどうなってるのか気になるところだな。
 まあそれはいい。問題は弱点だ。一撃でやられるなら、初手で倒す他無いわけだよな。

「高温の火属性、または雷属性。準じて氷属性」

 なんというか、具体的なのかそうで無いのか、中途半端な弱点だな。
 まあ、流石にここは雑魚モンスターらしい弱点の多さだが……いや、知っていたさ。

「弱点分かったところで、俺じゃ何もできないじゃ無いか」

 魔法とか無いし。殴るしかできないんだから、同じ結末になるのは目に見えてるよなぁ……。

『ヘルプ参照。チートコード:0102-0101を提示します』
 
 ……なんだ? このコードは困った時にもらえるようにでもなってるのか? どんなヌルゲーだよ。
 チート前提で必要な時に必要なチートコードが貰える……てクソゲーのかがみだな。

「……といっても、とりあえずは従うしかないよな。他に何かできるわけでもないし」

 これがただのゲームなら、また何度でも挑戦して色々試すところなんだが、さっきの痛みを何度も味わうのはごめんだし、そもそももう一度蘇生できる保証もない。
 甘えてると言われるかも知れんが、そこは甘んじて受け入れよう。

 自分のステータス画面を開き、もう一度チートコード記入欄に集中する。
 先ほどのコードを入力し、確定すると──

『チートコード確認。火球ファイアボールのフラグを設定しました』

 なんだ? 火球……てのは魔法かなんかだろう。そのフラグ……?
 意味が分からん。意味が分からんが……使ってみればいいのか?

 しかし、そもそもどうやって使うんだ? コマンドとかは出ないし……変なとこ不親切だよな。
 とりあえずよくある感じだと、こう手を前に出して

「火球‼︎」

 ──無音。なにも起きない。いやそりゃそうだよ。だって使い方知らないし!
 スライムの前で厨二臭い事やってなにも起きないとか、なんの罰ゲームだよ……HPは減ってないけど、俺の精神はかなり削られたぞ。

 それはそれとして、一応行動したと思うのだが、攻撃してこないな。これはあれか? 行動失敗や意味のない行動は無かったことになる系なのか?
 ……まあ、何度も死にたくないし助かるのだが……さてどうしたものか。

 どうみてもゲームの中とは思えないのに、このターン制の戦闘というのはすごい違和感だが、焦らず考えることができるというのはありがたい。
 じっくりと観察して対応できるからな。

「ん?」

 スライムの中心、核らしき場所が鈍く光っているな。
 スライムの核と言えば、弱点の代名詞とも言える。……つまり、そういうことだよな?

「とは言え、そんなとこ攻撃する手段がないわけだが──って、おい⁈」

 核への攻撃手段……について考えていると、体が勝手に動き出す。俺の意思に関係ないこの動作はおそらく、攻撃の時のそれなのだが……。
 そのまま待ち構える──というか、多分動けないスライムに対して拳を振りかざし、殴りかかったかと思えば、俺の拳はスライムの体の中へと入り込んだのである。
 そのまま核を握りしめて──

「力技なんだが、そんなのはアリなのか?」

 握力だけで粉々にしたのである。
 俺の握力、ステータス上だと5しかないんだが、スライムの核ってそんな脆いの? それともこの数字でも強いの?

 そんなことを悠長に考えてしまう自分だが、仕方ないだろ? 目の前で核を潰されたスライムが地面に溶けていっちゃってるんだから。
 表示されているHPも0になってるし、勝ったということでいいんだろうな。……なんか釈然としない。
 
「……火球撃ちたかった」
 
 まあいいんだけど。
 さて、これがゲームと同じなら、戦利品の一つや二つ手に入ると思うんだけど──

「おぉっ?」

 全身が光り、なんとなくさっきより引き締まった? 気がする。なんだこれ。
 もしかして、レベル上がったとかか? スライムとは言え、あれだけステータスが上のやつを倒したんだ。
 序盤ならレベルが上がってもおかしくないだろう。

 そう思い自分のステータスを確認してみる。

「ふむ……少し上がってる、よな?」

 正直分からん。ステータス欄が多すぎるんだよ。
 ただ、二桁超えてたステータスの、素早さと知力が1ずつ上がってるのと、5だった握力が7になってるのは確認できた。もしかしたら、全部あがってるのかもしれない。

 しかし、ステータスがあるのに何故レベルの欄がないのか……さっきのがレベルアップだというなら、レベルも存在するんだよな? この世界。

「全解析、じゃないのかよ」

 どこが全解析なのか。問い正したい所存だ。

「ねぇそこの君。もしかして冒険者?」

 背後から聞こえる、可愛らしい少女の声。
 ああ、これはあれだな。このタイミングで現れる少女と言ったら二つしかないだろう。

 ──チュートリアルの案内人か、はたまたヒロインとなる少女か。
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