本物のチート能力を手に入れたけど、使い方が分からないのだが

夜兎

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新しい言葉がでてきたけれど、あまり小難しい話はやめてほしい

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「本当にあっさり倒せるものなんだな」
「むしろ、スライム相手に苦戦する方が難しいんだけど?」
「さいですか……」

 マーラの悪態もだんだん慣れてきた。一々気にしなきゃ良いんだな、これも彼女の愛嬌ということだ。
 
 日も落ち始め、夕暮れ時の草原。どれくらいここにいたかは分からないが、結構長く歩いていたと思う。
 その間に遭遇したスライムの数──二体。なんなんだよ、この出現率。スライムってレアモンスターかなんかなの?

「スライムってこんなに出会えないのか?」
「この草原のスライムは少ないの。餌が少ないからね」
「餌?」

 スライムって食事とか取るのか? 微生物とか……いや、大きいんだから、もっと栄養のあるものを食べるのか?

「そう。スライムの種類にもよるけど、ここのスライムが食べるのは草。特に好んで食べるのがエール草。祝福に満たされた空間に稀に生える薬草ね」
「祝福ってのはなんだ?」

 マーラは驚いている。そんなに変な質問になってしまっただろうか?

「君、そんなことも知らずによく今まで生きてきたわね。どんな生活をしてきたら祝福を知らずに生きてこれるのかしら」
「……そんなに常識なのか」
「物心つくころには、もう教えられているはずよ。生きていく上で大切なことだから」

 少し悩んだ素振りを見せ、空を仰いだ後こちらに向き直った。

「もう暗闇に満たされるわね。……いいわ、街に向かいながら教えてあげる。報酬も兼ねて、ね」

 そう言いながら右手に持って見せるのは、スライムを倒して手に入れた核。ツヤはないが、綺麗な球体となっている真っ白な物体。あれをどう使うのだろうか。

「お願いするよ」

 街についても分からないからな。それなりに歩くらしいし、その間にこの世界の知識が身につくなら是非もないというものだ。

「まず、祝福には種類があるの」
 
 歩きながら説明を始めるマーラ。小さな子供でも分かるんだから、そんな難しいことはないよな? あまり記憶力は良くないんだが……。

「その中でも特に覚えておくべきなのは、定着型の祝福と、設置型の祝福。前者を加護、後者を聖印と言うの」

 マーラは腕を伸ばして、袖をまくって見せた。
 そこには、何かの動物を模したような印が刻まれていたのだが……まるで肌の一部かのように、違和感がない。

「これは加護。この世界に命を授かった人間なら、誰しもが持っているもの。加護にも種類があって、私のこの加護は破壊を司るもの。他には、創造や隔絶、均衡を司る加護があるわ」
「その加護っていうのは、なにか特別な効果があったりするのか?」
「そうね。魔法やスキルの傾向、性能が特に大きく影響するわ」

 ふむ。つまるところ、戦闘スタイルや成長の傾向が変わる……ゲームならジョブや称号みたいなシステムに近いのか。
 生まれつきみんなに備わってるらしいが、おそらく別世界から来たであろう俺にはあるのだろうか。

「その加護の印ってのはどこに現れるとか決まってるのか?」
「人それぞれね。今まで君が気づいてこなかったというなら、あまり人目につかなくて自分でも見えないところなのかもしれないわね」
「隠れた場所ってことね」

 まあそもそも、この世界に来て間もないわけで、彼女が初めての人間な訳で……人目どころか、自分の体をまじまじと見るようなこともしてないからな。
 全解析フルアナライズで見れたりしないものか──っと、さすがだな。
 念のためステータスを確認してみると、加護と聖印の欄が増えている。
 自分の中で知識として知っていないと出ないのか? 便利なのか不便なのか分からない能力だな、ほんと。

「……どうやら、俺の加護とやらは均衡らしい。他と比べて、どんな加護なのか分かりづらいが……全体的にバランスが取れてるとかなのか?」
「急になんでわかった──ああ、あの気味の悪いスキルのおかげね」
「気味が悪いとから言わないでくれよな。……傷つく」
「まあ、考え方としては間違ってないわね。一般的なイメージでは、器用貧乏なんて言われる加護よ。まあ、そもそも授かる人数も少なくて、あまり前例がないというのもあるけど」

 マイナーな加護ってわけだ。情報が少ないのは不便だな。器用貧乏というのもな……こういうのは大体一極型の方が強いことご多いし。まあ、使い方次第といったところか。

「分かった。後聖印についてなんだが、解読とかいうのがついてるらしいが、何かわかるか?」
「聞いたことない……というか、そもそも人に聖印をつけるという行為自体聞かないんだけど。本当に君自身が聖印を受けてるの?」
「この目がおかしくないのであれば、そういうことだと思うんだが……」

 確かに、設置型とか言ってたな。人間に設置する、なんて言い回しはしないだろう。
 しかし、こちらも前例がないとなると、自分で見つける他無いんだよな……ちょっと楽しそうじゃないか。

「君の目は大概おかしいけど、事実を言い当ててきたその目が間違っているとは考えにくいわね。聖印に詳しい友人がいるから、聞いてみることにするわ」
「いいのか? 案内や説明に加えてそんなことまで」
「別に、君のためにやるわけじゃないし。私が気持ち悪いだけよ」

 目を背ける辺り、恥ずかしがってるんだろうか? 素直じゃないな。

「ほら、そんなこと言ってるうちについたわよ」
「ん? ──おぉ‼︎」

 既に空は暗い。
 しかし、周囲は視界不良どころか、さっきまでよりもはっきりとしているほど。
 目の前には、まさにファンタジー世界と言いたくなるような街並みが構えていたのである。
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