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1話 完璧な彼女の、完璧じゃない瞬間
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「はぁ……今日も平和だなぁ」
俺、佐藤健司は、窓から差し込む春の柔らかな日差しを浴びながら、代わり映えのない授業風景をぼんやりと眺めていた。特別なことなんて何もない、いつもの日常。それが俺のデフォルトだ。
隣の席では、幼馴染の田中結衣が、早くも次の体育の準備を始めてそわそわしている。茶髪の髪が似合い、目元にはほくろが一つ。胸元を少し開けていたりもする。
そんなギャルっぽい一面もある最高に可愛い幼馴染である。
こいつは本当に体を動かすのが好きだな。
「健司、次の体育、バスケだって! 勝負しよ!」
「お前、体力お化けなんだから勝てるわけないだろ……」
「むー! やる前から諦めない!」
そんな他愛ない会話をしていると、教室の前のドアがスッと開いた。入ってきたのは、この学校の生徒会長にして、全校生徒の憧れの的、西村あかりその人だった。
長い黒髪、涼しげな目元、透き通るような白い肌。制服も非の打ち所がない着こなしで、まさに完璧という言葉が服を着て歩いているような存在だ。教壇の前に立つだけで、教室の空気がピリッと引き締まるのを感じる。
(今日もオーラがすごいな……住む世界が違うって感じだ)
クラスの男子は目をハートにし、女子は羨望の眼差しを向けている。
まあ、俺には関係ない高嶺の花だけど。
西村会長は、手に持っていたプリントの束を教卓に置くと、凛とした声で話し始めた。
「皆さん、こんにちは。生徒会から、来月行われる球技大会に関するアンケートのお願いです。各クラスの代表者は……」
流れるような説明。淀みない声。誰もが彼女の言葉に聞き入っている。
……はずだった。
「……えっと、それで、各クラスの代表者は、今日の放課後までに、このアンケート用紙を……」
ん? なんだか会長の声が少しだけ震えたような……? 気のせいか。
彼女は説明を終えると、プリントを配るために、俺たちの列の方へ歩いてきた。
そして、俺の前の席の奴にプリントを渡そうとした、その瞬間だった。
「あっ……!」
ストンッ。
西村会長は、何もないところで綺麗に足を滑らせ、持っていたプリントの束を派手にぶちまけた。
ばさばさばさっ! と白い紙が宙を舞う。まるでスローモーションのように見えた。
教室が一瞬、シーンと静まり返る。
あの完璧な西村会長が? 転んだ? まさか。
すぐに「大丈夫ですか!?」とクラスメイトたちが駆け寄ろうとするが、それよりも早く、会長はバッと顔を上げた。
顔が、耳まで真っ赤になっている。
「だ、大丈夫です! ちょっと足元が……! ご、ごめんなさい!」
慌ててプリントを拾い集めようとする会長。だが、焦っているせいか、拾おうとしたプリントをさらに足で蹴飛ばしたり、指が滑ってうまく掴めなかったり、明らかにテンパっている。
(あれ……? あの西村会長が、こんな……?)
普段のクールビューティーっぷりからは想像もつかない、ポンコツ姿。
俺は思わず、近くに散らばったプリントに手を伸ばしていた。
「あ、あの、西村会長、俺も拾います」
「えっ!? さ、佐藤くん!?」
俺の声に、会長はビクッと肩を揺らし、さらに顔を赤くした。
なんで俺の名前を知ってるんだ?
いや、生徒会長だから把握はしてるのか?
それにしても、この反応はなんだ?
俺が拾ったプリントの束を手渡すと、会長は蚊の鳴くような声で「あ、ありがとう……」と言って、残りのプリントを配り始めた。でも、心なしか手が震えているように見えた。
「……健司、あんた、会長になんかしたの?」
隣の結衣が、怪訝そうな顔で俺を肘でつつく。
「な、何にもしてねーよ! なんで俺が!」
「だって、あんな会長、初めて見たんだけど……。あんたの前でだけ、めっちゃ動揺してなかった?」
「気のせいだろ!」
そう言い返しながらも、俺の頭の中は「???」でいっぱいだった。
あの完璧なはずの西村会長が、俺の前でだけ見せた、あの完璧じゃない姿。
あれは一体、なんだったんだろうか……?
この日から、俺の平凡な日常が、少しずつ、でも確実に変わり始めていくことになるなんて、この時の俺は知る由もなかった。
―――
今作は念願描きたかったラブコメ作品です。
現実世界(高校)を舞台に繰り広げられる物語、タイトルでは生徒会長だけがヒロインみたいな感じですが、複数人登場予定!
よろしければ励みになりますので、
【お気に入り】
よろしくお願いします!
俺、佐藤健司は、窓から差し込む春の柔らかな日差しを浴びながら、代わり映えのない授業風景をぼんやりと眺めていた。特別なことなんて何もない、いつもの日常。それが俺のデフォルトだ。
隣の席では、幼馴染の田中結衣が、早くも次の体育の準備を始めてそわそわしている。茶髪の髪が似合い、目元にはほくろが一つ。胸元を少し開けていたりもする。
そんなギャルっぽい一面もある最高に可愛い幼馴染である。
こいつは本当に体を動かすのが好きだな。
「健司、次の体育、バスケだって! 勝負しよ!」
「お前、体力お化けなんだから勝てるわけないだろ……」
「むー! やる前から諦めない!」
そんな他愛ない会話をしていると、教室の前のドアがスッと開いた。入ってきたのは、この学校の生徒会長にして、全校生徒の憧れの的、西村あかりその人だった。
長い黒髪、涼しげな目元、透き通るような白い肌。制服も非の打ち所がない着こなしで、まさに完璧という言葉が服を着て歩いているような存在だ。教壇の前に立つだけで、教室の空気がピリッと引き締まるのを感じる。
(今日もオーラがすごいな……住む世界が違うって感じだ)
クラスの男子は目をハートにし、女子は羨望の眼差しを向けている。
まあ、俺には関係ない高嶺の花だけど。
西村会長は、手に持っていたプリントの束を教卓に置くと、凛とした声で話し始めた。
「皆さん、こんにちは。生徒会から、来月行われる球技大会に関するアンケートのお願いです。各クラスの代表者は……」
流れるような説明。淀みない声。誰もが彼女の言葉に聞き入っている。
……はずだった。
「……えっと、それで、各クラスの代表者は、今日の放課後までに、このアンケート用紙を……」
ん? なんだか会長の声が少しだけ震えたような……? 気のせいか。
彼女は説明を終えると、プリントを配るために、俺たちの列の方へ歩いてきた。
そして、俺の前の席の奴にプリントを渡そうとした、その瞬間だった。
「あっ……!」
ストンッ。
西村会長は、何もないところで綺麗に足を滑らせ、持っていたプリントの束を派手にぶちまけた。
ばさばさばさっ! と白い紙が宙を舞う。まるでスローモーションのように見えた。
教室が一瞬、シーンと静まり返る。
あの完璧な西村会長が? 転んだ? まさか。
すぐに「大丈夫ですか!?」とクラスメイトたちが駆け寄ろうとするが、それよりも早く、会長はバッと顔を上げた。
顔が、耳まで真っ赤になっている。
「だ、大丈夫です! ちょっと足元が……! ご、ごめんなさい!」
慌ててプリントを拾い集めようとする会長。だが、焦っているせいか、拾おうとしたプリントをさらに足で蹴飛ばしたり、指が滑ってうまく掴めなかったり、明らかにテンパっている。
(あれ……? あの西村会長が、こんな……?)
普段のクールビューティーっぷりからは想像もつかない、ポンコツ姿。
俺は思わず、近くに散らばったプリントに手を伸ばしていた。
「あ、あの、西村会長、俺も拾います」
「えっ!? さ、佐藤くん!?」
俺の声に、会長はビクッと肩を揺らし、さらに顔を赤くした。
なんで俺の名前を知ってるんだ?
いや、生徒会長だから把握はしてるのか?
それにしても、この反応はなんだ?
俺が拾ったプリントの束を手渡すと、会長は蚊の鳴くような声で「あ、ありがとう……」と言って、残りのプリントを配り始めた。でも、心なしか手が震えているように見えた。
「……健司、あんた、会長になんかしたの?」
隣の結衣が、怪訝そうな顔で俺を肘でつつく。
「な、何にもしてねーよ! なんで俺が!」
「だって、あんな会長、初めて見たんだけど……。あんたの前でだけ、めっちゃ動揺してなかった?」
「気のせいだろ!」
そう言い返しながらも、俺の頭の中は「???」でいっぱいだった。
あの完璧なはずの西村会長が、俺の前でだけ見せた、あの完璧じゃない姿。
あれは一体、なんだったんだろうか……?
この日から、俺の平凡な日常が、少しずつ、でも確実に変わり始めていくことになるなんて、この時の俺は知る由もなかった。
―――
今作は念願描きたかったラブコメ作品です。
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