Sランクアイドルと作る絶品ダンジョン飯~社畜Fランク探索者の俺が、グルメスキルで成り上がるのはどう考えてもおかしい件!!~

咲月ねむと

文字の大きさ
9 / 19

第9話 ド緊張!テレビカメラ

しおりを挟む
そして、運命の土曜日がやってきた。

俺は、巨大キノコの森の入り口で、人生で経験したことのないレベルの緊張に襲われていた。心臓はバクバクうるさいし、手汗もすごい。

「佐藤さん、おはようございます! 今日はよろしくお願いしますね!」

いつも通りのパーカー&キャップ姿のレイナさんが、笑顔で現れた。彼女の後ろには、カメラを持った男性といかにもディレクターといった感じの腕章をつけた女性、そして音声さんらしき人が控えている。

テレビクルーだ……本物だ……。

「お、おはようございます……。よ、よろしくお願いします……」

声が震える。顔も引きつっているに違いない。

「こちら、今日の取材を担当してくださる、テレビ夕陽の皆さんです!」

レイナさんが紹介してくれる。

ディレクターの女性が、にこやかに挨拶してきた。

「佐藤さん、はじめまして! ディレクターの鈴木です。いつもレイナさんのSNS、楽しく拝見してます! 佐藤さんのダンジョン飯、本当に美味しそうで……今日、生で見られるなんて、光栄です!」

カメラマンさんや音声さんも、

「楽しみにしてます!」

「頑張ってください!」

と声をかけてくれる。

……なんか、みんな妙に好意的だな? 

レイナさんの影響力、恐るべし。

「あ、あの、俺、本当にただの素人なんで……あんまり期待しないでください……」

「またまたご謙遜けんそんを! レイナさんから聞いてますよ? どんな食材でも絶品料理に変えてしまう、魔法の手を持つって!」

(レイナさん、裏で何を吹き込んでるんだ……!)

ハードルが上がりまくっている。
これでは、もう後には引けない。

「さあ、行きましょうか! 目指すは、巨大キノコ!」

レイナさんの号令で、テレビクルーを引き連れた奇妙なパーティーのダンジョン探索が始まった。

巨大キノコの森は、その名の通り傘の直径が1メートル以上もあるような、色とりどりの巨大なキノコばかりがある不思議な空間だ。
空気は少し湿っぽく、独特の土と菌類の匂い。

道中、小型のモンスター、例えばスライムとか毒キノコのお化けとかが時々現れたが、レイナさんがカメラの前で華麗に一掃していく。

その度に、ディレクターさんたちが、

「おおー!」

「さすがレイナさん!」

と歓声を上げている。

俺は、その後ろで小さくなっていた。

「あ、ありましたよ、佐藤さん! 美味しそうなキノコが!」

レイナさんが指差したのは、傘が鮮やかなオレンジ色をした、ひときわ大きなキノコだ。
表面には、バターのような模様が入っている。通称「バターマッシュルーム」。加熱すると、本当にバターのような濃厚な香りとコクが出る、人気の食材だ。

「よし、じゃあ、ここで料理しましょうか」

俺は意を決して、調理器具を取り出した。

今日のメニューは「巨大バターマッシュルームの丸ごとアヒージョ風」だ。

巨大な傘の部分を器に見立てて、中にたっぷりのキノコと持参したニンニク、鷹の爪、そしてオリーブオイルを入れて、直火でじっくり加熱する。

カメラが俺の手元をアップで捉えている。
緊張で手が震えそうだ。

「すごい……! キノコの傘をそのまま鍋にするんですね!」

「いい匂いがしてきた……!」

テレビクルーの人たちも興味津々だ。

レイナさんは、隣で目をキラキラさせながら、完成を今か今かと待っている。

グツグツとオイルが煮立ち、キノコも色づき、香ばしい匂いが辺りに満ちていく。仕上げに塩コショウと刻みパセリを振って、完成だ。

「で、できました……。バターマッシュルームのアヒージョ風です……」

「うわぁぁぁ! 美味しそうー!!」

レイナさんが、真っ先にトングで熱々のキノコを掴み、ふーふーしてから口に運ぶ。

「んん~~~~っ!!! 熱っ! でも、うま~~~~~っ!!!」

期待通りのリアクション。
キノコの旨味とバターのようなコク、ニンニクと唐辛子の風味がオイルに溶け出して、絶妙なハーモニーを奏でているはずだ。

「鈴木さんたちもどうぞ!」

レイナさんに勧められ、ディレクターさんたちも恐る恐る試食する。

「……!! こ、これは……!?」

「美味しい……! キノコがプリップリで、オイルが最高……!」

「パン持ってくればよかったー!」

取材クルーも大絶賛。

よかった……なんとか、面目は保てたようだ。

その後も数種類のキノコを使って「キノコのバター醤油炒め」や「キノコのクリームスープ」などを作り、その度にレイナさんとテレビクルーから歓声が上がった。

俺は、料理を作っている間は集中していたが、終わった途端、どっと疲労感に襲われた。
精神的な疲労が半端ない。

取材は無事にかは分からないが終了し、俺たちはダンジョンを後にした。帰り際、ディレクターの鈴木さんが興奮気味に言った。

「佐藤さん、本当にありがとうございました! 
これは、絶対に面白い番組になりますよ! 佐藤さんのことは、レイナさんたっての希望で『謎の凄腕料理人S』として紹介させていただきますね!」

「は、はぁ……」

(てかSって、佐藤のSか……? 安直だな……)

こうして、俺のテレビデビューは、嵐のように過ぎ去っていった。

放送後、一体どうなってしまうのか……。

俺は一抹の不安とほんの少しの達成感を胸に帰宅するのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき
ファンタジー
冒険者ナザルは油使い。 魔力を油に変換し、滑らせたり燃やしたりできるユニークスキル持ちだ。 その特殊な能力ゆえ、冒険者パーティのメインメンバーとはならず、様々な状況のピンチヒッターをやって暮らしている。 実は、ナザルは転生者。 とある企業の中間管理職として、人間関係を良好に保つために組織の潤滑油として暗躍していた。 ひょんなことから死んだ彼は、異世界パルメディアに転生し、油使いナザルとなった。 冒険者の街、アーランには様々な事件が舞い込む。 それに伴って、たくさんの人々がやってくる。 もちろん、それだけの数のトラブルも来るし、いざこざだってある。 ナザルはその能力で事件解決の手伝いをし、生前の潤滑油スキルで人間関係改善のお手伝いをする。 冒険者に、街の皆さん、あるいはギルドの隅にいつもいる、安楽椅子冒険者のハーフエルフ。 ナザルと様々なキャラクターたちが織りなす、楽しいファンタジー日常劇。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...