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第17話 潜入!食品メーカー
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数日後、俺は人生で初めて、大手食品メーカー「グルメフロンティア」の本社ビルに足を踏み入れた。
もちろん顔がバレないように、マスクとサングラス、そして帽子という、我ながら怪しさ満点の服装である。
隣には、マネージャーさんらしき人を伴った、いつものパーカー姿のレイナさんがいる。
通されたのは、役員クラスが使うような、立派な応接室。部屋に入ると、スーツ姿の男性たちが数人、緊張した面持ちで立ち上がり、深々と頭を下げてきた。
「お待ちしておりました、レイナ様! そして……料理人S様!」
(様付け……!? しかも、なんかものすごく歓迎されてるんですけど!?)
俺はその異様な雰囲気が妙に息苦しく感じた。
一方のレイナさんは、慣れた様子で「どうもー」と軽く手を振っている。さすがは国民的アイドルだ。場慣れのレベルが違う。
そして打ち合わせが始まった。
グルメフロンティア側の商品開発部長と名乗る男性が熱弁を振るっている。
「料理人S様のダンジョン飯は、我々食品業界に大きな衝撃を与えました! あの独創性、素材を活かす技術、そして何より、食べる人を幸せにする力! ぜひ、そのお力をお借りして、全く新しいレトルト食品シリーズを世に送り出したいのです!」
(いや、そんな大層なものじゃ……)
恐縮する俺をよそに、話はどんどん進んでいた。これまでレイナさんのSNSに登場した料理の中から「オーク肉の赤ワイン煮込み」「サンドワームソーセージ」「レイク・キングのムニエル風」などをレトルト化する企画案が提示されたのだ。
そして、試作品の試食タイム。
メーカーが試作したという「オーク肉の赤ワイン煮込み(レトルト版)」が運ばれてきた。
「S様、ぜひご試食いただき、ご意見をいただければと……」
促されるままに、恐る恐る試作品を口にする俺。……うん、悪くない。レトルトにしては、かなり頑張っている方だ。
しかし……。
「……オーク肉の臭みが、まだ少し残ってますね。下処理の段階で、赤ワインだけじゃなく、香味野菜と一緒に一晩漬け込むと、もっと抑えられると思います。あと、ソースのコクが少し足りない。隠し味に、ほんの少しだけ味噌を加えると深みが出ますよ」
思わず普段料理をしている時の感覚で、率直な意見を口にしてしまった。
「…………!!」
俺の発言にグルメフロンティアの担当者たちが目を見開いて驚いている。
レイナさんも、隣で「へぇー! さすが佐藤さん!」と感心しているではないか。
「み、味噌ですか!? なるほど……! 素晴らしいアドバイス、ありがとうございます!」
「S様、失礼ですが、もしかしてプロの料理人の方で……?」
「い、いえ! ただの、しがないサラリーマンです……料理は趣味で……」
慌てて否定するが、担当者たちは俺の言葉を信じていないようだ。むしろ「やはり、只者ではなかった……!」といった感じで、尊敬の眼差しを向けているようにも思える。
(いやいや、自分を過大評価し過ぎか?)
その後も、いくつかの試作品を試食し、俺は的確なアドバイスを連発してしまった。
打ち合わせが終わる頃には、グルメフロンティアの担当者たちは、完全に俺のことを「孤高の天才料理人」だと信じ込んでいるようだった。
商品化の話は、とんとん拍子に進むことに。
俺は、最後まで「自分はあくまで監修だけ」「レシピの権利やロイヤリティは、すべてレイナさんに」という条件を主張した。グルメフロンティア側は、それでも構わない、ぜひお願いしたいとのこと。
(……なんだか、とんでもないことになってきたぞ……)
応接室を出て、ビルを後にする。
隣を歩くレイナさんは、上機嫌だ。
「やりましたね、佐藤さん! これで、佐藤さんの美味しい料理が、日本中の食卓に届くんですよ!」
「は、はは……」
(俺は別にそんなの望んでませんけどね)
自分のあずかり知らぬところで、「料理人S」ブランドが一人歩きする。
俺は、その状況に戸惑いつつも、もはや流れに身を任せるしかないのかもしれないと諦めモードに入っていた。
もちろん顔がバレないように、マスクとサングラス、そして帽子という、我ながら怪しさ満点の服装である。
隣には、マネージャーさんらしき人を伴った、いつものパーカー姿のレイナさんがいる。
通されたのは、役員クラスが使うような、立派な応接室。部屋に入ると、スーツ姿の男性たちが数人、緊張した面持ちで立ち上がり、深々と頭を下げてきた。
「お待ちしておりました、レイナ様! そして……料理人S様!」
(様付け……!? しかも、なんかものすごく歓迎されてるんですけど!?)
俺はその異様な雰囲気が妙に息苦しく感じた。
一方のレイナさんは、慣れた様子で「どうもー」と軽く手を振っている。さすがは国民的アイドルだ。場慣れのレベルが違う。
そして打ち合わせが始まった。
グルメフロンティア側の商品開発部長と名乗る男性が熱弁を振るっている。
「料理人S様のダンジョン飯は、我々食品業界に大きな衝撃を与えました! あの独創性、素材を活かす技術、そして何より、食べる人を幸せにする力! ぜひ、そのお力をお借りして、全く新しいレトルト食品シリーズを世に送り出したいのです!」
(いや、そんな大層なものじゃ……)
恐縮する俺をよそに、話はどんどん進んでいた。これまでレイナさんのSNSに登場した料理の中から「オーク肉の赤ワイン煮込み」「サンドワームソーセージ」「レイク・キングのムニエル風」などをレトルト化する企画案が提示されたのだ。
そして、試作品の試食タイム。
メーカーが試作したという「オーク肉の赤ワイン煮込み(レトルト版)」が運ばれてきた。
「S様、ぜひご試食いただき、ご意見をいただければと……」
促されるままに、恐る恐る試作品を口にする俺。……うん、悪くない。レトルトにしては、かなり頑張っている方だ。
しかし……。
「……オーク肉の臭みが、まだ少し残ってますね。下処理の段階で、赤ワインだけじゃなく、香味野菜と一緒に一晩漬け込むと、もっと抑えられると思います。あと、ソースのコクが少し足りない。隠し味に、ほんの少しだけ味噌を加えると深みが出ますよ」
思わず普段料理をしている時の感覚で、率直な意見を口にしてしまった。
「…………!!」
俺の発言にグルメフロンティアの担当者たちが目を見開いて驚いている。
レイナさんも、隣で「へぇー! さすが佐藤さん!」と感心しているではないか。
「み、味噌ですか!? なるほど……! 素晴らしいアドバイス、ありがとうございます!」
「S様、失礼ですが、もしかしてプロの料理人の方で……?」
「い、いえ! ただの、しがないサラリーマンです……料理は趣味で……」
慌てて否定するが、担当者たちは俺の言葉を信じていないようだ。むしろ「やはり、只者ではなかった……!」といった感じで、尊敬の眼差しを向けているようにも思える。
(いやいや、自分を過大評価し過ぎか?)
その後も、いくつかの試作品を試食し、俺は的確なアドバイスを連発してしまった。
打ち合わせが終わる頃には、グルメフロンティアの担当者たちは、完全に俺のことを「孤高の天才料理人」だと信じ込んでいるようだった。
商品化の話は、とんとん拍子に進むことに。
俺は、最後まで「自分はあくまで監修だけ」「レシピの権利やロイヤリティは、すべてレイナさんに」という条件を主張した。グルメフロンティア側は、それでも構わない、ぜひお願いしたいとのこと。
(……なんだか、とんでもないことになってきたぞ……)
応接室を出て、ビルを後にする。
隣を歩くレイナさんは、上機嫌だ。
「やりましたね、佐藤さん! これで、佐藤さんの美味しい料理が、日本中の食卓に届くんですよ!」
「は、はは……」
(俺は別にそんなの望んでませんけどね)
自分のあずかり知らぬところで、「料理人S」ブランドが一人歩きする。
俺は、その状況に戸惑いつつも、もはや流れに身を任せるしかないのかもしれないと諦めモードに入っていた。
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