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第31話 深夜のチーズリゾット
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深夜の『陽だまり亭』に不穏な空気が充満していた。テーブル席にドカドカと座り込んだのは、泥だらけの王太子フレデリック殿下と、自称聖女のミナ様だ。
その向かいの席には、腕を組み、仁王像のような形相で二人を睨みつけるジークフリート様が鎮座している。背後から放たれる冷気で店内の室温が五度は下がっていた。
「……おい、いつまで待たせるんだ! たかが平民の定食屋風情が!」
「そうよぉ。椅子も硬いし、装飾も地味ね。王城のサロンとは大違いだわ」
二人は空腹のくせに口だけは達者だった。
私は厨房で呆れながら、手早く調理を進めた。
(文句を言う元気があるなら大丈夫そうね。……でも、胃袋は正直みたい)
長時間、まともな食事をしていない彼らに、いきなり重い肉料理を出せば胃がびっくりしてしまう。
私は、消化が良く、かつ満足感の高いメニューを選んだ。残り物の冷やご飯を使った『濃厚チーズリゾット』だ。
フライパンにバターを熱し、刻んだベーコンと玉ねぎを炒める。そこへ冷やご飯と牛乳、コンソメスープを投入。弱火でコトコト煮込み、ご飯にスープを吸わせる。とろみが出てきたらミックスチーズと粉チーズを「これでもか」というくらい大量に投入する。
――ふわり。
濃厚な乳製品の香りと、焦げたバターの香ばしさが厨房から漂い始めた。
「……ッ!?」
ホールで文句を垂れていた二人の声がピタリと止む。鼻をクンクンと動かし、厨房の方を食い入るように見つめている。
「仕上げに黒胡椒を振って……はい、完成」
私は湯気の立つ皿を二つ、トレイに乗せて運んだ。
「お待たせいたしました。『深夜の濃厚チーズリゾット』です」
ドン、ドン。
二人の前に皿を置く。
白く輝くリゾット。スプーンですくえば糸を引くたっぷりのチーズ。カリカリに焼けたベーコンのピンク色が彩りを添えている。
「ふ、ふん! 残り物の雑炊か! こんな猫の餌みたいなもの……」
殿下は憎まれ口を叩きながらも、震える手でスプーンを握った。
そして、我慢できないというように一口運ぶ。
ハフッ、ハフッ……。
「…………」
殿下の動きが停止した。
目が見開かれ、そこからポロポロと涙がこぼれ落ちたのだ。
「う……うまい……」
搾り出すような声だった。
「なんだこれは……優しいミルクの味が、荒れた胃壁に染み渡っていく……。チーズのコクが、脳の芯まで響くようだ……」
「嘘でしょ……? こ、こんな田舎料理が……」
ミナ様も一口食べ、絶句した。
悔しそうに唇を噛むが手は止まらない。
ガツガツ、ムシャムシャ。
王族としての品位も聖女としての淑やかさもかなぐり捨て、二人は貪るようにリゾットを口へ運んだ。一口食べるごとに、彼らのドス黒く淀んでいた顔色が見る見るうちに明るくなっていく。
私の『美味しくなあれ』の効果だ。
これまで泥水のようなスープしか飲んでいなかった彼らにとって、純度の高い魔力が込められたこの料理は、劇薬に近い回復薬となったのだろう。
「……レティシア」
完食し、皿まで舐めそうな勢いだった殿下が、呆然と私を見上げた。
「……城の料理は、なぜあんなに不味かったのだ?」
「はい?」
「お前がいなくなってから、何を食っても味がしなかった。だが、これは……昔、お前が差し入れてくれたクッキーと同じ、温かい味がする」
殿下の瞳に後悔の色が浮かぶ。
気づいてしまったようだ。
城の食事が美味しかったのも、彼の体調が良かったのも、すべて私の『加護』のおかげだったということに。
「……お前だったのか。私を支えていたのは、ミナの祈りではなく、お前の料理だったのか……?」
殿下が震える手で私に触れようとした。
しかし。
ダンッ!!
ジークフリート様がテーブルにナイフを突き立てた。切っ先は、殿下の指の数ミリ横。
「……食ったな?」
地獄の底のような低い声。
「腹が満ちたなら、さっさと用件を話せ。そして消えろ。……その汚い手で、私のレティシアに触れるな」
ジーク様の殺気に、酔いが覚めたように殿下が青ざめる。けれど、ここで引き下がるほど、彼らの執着は甘くなかった。
「……ふ、ふざけるな!」
ミナ様がバンとテーブルを叩いて立ち上がった。
その目は嫉妬で血走っている。
「ずるい! ずるいわよ! あんた、料理に何か変な薬を入れたんでしょ!? 媚薬とか! だから殿下も、その辺境伯もたぶらかされたんだわ!」
「はぁ? 薬なんて入れてません」
「嘘よ! じゃなきゃ、私が作ったスープがあんなに不味くて、あんたの残飯がこんなに美味しいわけがない!」
ミナ様は私の胸ぐらを掴もうと身を乗り出した。
「証明しなさいよ! あんたの力が偽物だって! 私と料理勝負しなさい! 私が勝ったら、あんたのその『魔力入りのレシピ』と、この店を全部もらうわ!」
……料理勝負?
支離滅裂な言いがかりだ。
けれど、私の料理人としてのプライドに火がついた。
「いいですよ」
私は静かに告げた。
「その勝負、受けて立ちます。……ただし、私が勝ったら、二度とこの店にも、私にも近づかないでください」
深夜の『陽だまり亭』で女同士の熱い火花が散った。決戦のメニューは――『王道ショートケーキ』だ。
その向かいの席には、腕を組み、仁王像のような形相で二人を睨みつけるジークフリート様が鎮座している。背後から放たれる冷気で店内の室温が五度は下がっていた。
「……おい、いつまで待たせるんだ! たかが平民の定食屋風情が!」
「そうよぉ。椅子も硬いし、装飾も地味ね。王城のサロンとは大違いだわ」
二人は空腹のくせに口だけは達者だった。
私は厨房で呆れながら、手早く調理を進めた。
(文句を言う元気があるなら大丈夫そうね。……でも、胃袋は正直みたい)
長時間、まともな食事をしていない彼らに、いきなり重い肉料理を出せば胃がびっくりしてしまう。
私は、消化が良く、かつ満足感の高いメニューを選んだ。残り物の冷やご飯を使った『濃厚チーズリゾット』だ。
フライパンにバターを熱し、刻んだベーコンと玉ねぎを炒める。そこへ冷やご飯と牛乳、コンソメスープを投入。弱火でコトコト煮込み、ご飯にスープを吸わせる。とろみが出てきたらミックスチーズと粉チーズを「これでもか」というくらい大量に投入する。
――ふわり。
濃厚な乳製品の香りと、焦げたバターの香ばしさが厨房から漂い始めた。
「……ッ!?」
ホールで文句を垂れていた二人の声がピタリと止む。鼻をクンクンと動かし、厨房の方を食い入るように見つめている。
「仕上げに黒胡椒を振って……はい、完成」
私は湯気の立つ皿を二つ、トレイに乗せて運んだ。
「お待たせいたしました。『深夜の濃厚チーズリゾット』です」
ドン、ドン。
二人の前に皿を置く。
白く輝くリゾット。スプーンですくえば糸を引くたっぷりのチーズ。カリカリに焼けたベーコンのピンク色が彩りを添えている。
「ふ、ふん! 残り物の雑炊か! こんな猫の餌みたいなもの……」
殿下は憎まれ口を叩きながらも、震える手でスプーンを握った。
そして、我慢できないというように一口運ぶ。
ハフッ、ハフッ……。
「…………」
殿下の動きが停止した。
目が見開かれ、そこからポロポロと涙がこぼれ落ちたのだ。
「う……うまい……」
搾り出すような声だった。
「なんだこれは……優しいミルクの味が、荒れた胃壁に染み渡っていく……。チーズのコクが、脳の芯まで響くようだ……」
「嘘でしょ……? こ、こんな田舎料理が……」
ミナ様も一口食べ、絶句した。
悔しそうに唇を噛むが手は止まらない。
ガツガツ、ムシャムシャ。
王族としての品位も聖女としての淑やかさもかなぐり捨て、二人は貪るようにリゾットを口へ運んだ。一口食べるごとに、彼らのドス黒く淀んでいた顔色が見る見るうちに明るくなっていく。
私の『美味しくなあれ』の効果だ。
これまで泥水のようなスープしか飲んでいなかった彼らにとって、純度の高い魔力が込められたこの料理は、劇薬に近い回復薬となったのだろう。
「……レティシア」
完食し、皿まで舐めそうな勢いだった殿下が、呆然と私を見上げた。
「……城の料理は、なぜあんなに不味かったのだ?」
「はい?」
「お前がいなくなってから、何を食っても味がしなかった。だが、これは……昔、お前が差し入れてくれたクッキーと同じ、温かい味がする」
殿下の瞳に後悔の色が浮かぶ。
気づいてしまったようだ。
城の食事が美味しかったのも、彼の体調が良かったのも、すべて私の『加護』のおかげだったということに。
「……お前だったのか。私を支えていたのは、ミナの祈りではなく、お前の料理だったのか……?」
殿下が震える手で私に触れようとした。
しかし。
ダンッ!!
ジークフリート様がテーブルにナイフを突き立てた。切っ先は、殿下の指の数ミリ横。
「……食ったな?」
地獄の底のような低い声。
「腹が満ちたなら、さっさと用件を話せ。そして消えろ。……その汚い手で、私のレティシアに触れるな」
ジーク様の殺気に、酔いが覚めたように殿下が青ざめる。けれど、ここで引き下がるほど、彼らの執着は甘くなかった。
「……ふ、ふざけるな!」
ミナ様がバンとテーブルを叩いて立ち上がった。
その目は嫉妬で血走っている。
「ずるい! ずるいわよ! あんた、料理に何か変な薬を入れたんでしょ!? 媚薬とか! だから殿下も、その辺境伯もたぶらかされたんだわ!」
「はぁ? 薬なんて入れてません」
「嘘よ! じゃなきゃ、私が作ったスープがあんなに不味くて、あんたの残飯がこんなに美味しいわけがない!」
ミナ様は私の胸ぐらを掴もうと身を乗り出した。
「証明しなさいよ! あんたの力が偽物だって! 私と料理勝負しなさい! 私が勝ったら、あんたのその『魔力入りのレシピ』と、この店を全部もらうわ!」
……料理勝負?
支離滅裂な言いがかりだ。
けれど、私の料理人としてのプライドに火がついた。
「いいですよ」
私は静かに告げた。
「その勝負、受けて立ちます。……ただし、私が勝ったら、二度とこの店にも、私にも近づかないでください」
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