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第36話 勝利を祝う手作りピザ
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王太子殿下たちが逃げ帰ったという噂は、風よりも早く町中に駆け巡った。
翌日の昼、『陽だまり亭』には、心配してくれていた常連さんや騎士様たちが大挙して押し寄せていた。
「レティシアちゃん! 無事だったか!」
「あの馬鹿王子を追い返したって本当か!?」
「閣下と、あの白い犬っころが凄かったらしいぞ!」
みんな口々に私を労い、無事を喜んでくれる。
そんな温かいみんなへのお礼と勝利のお祝いを兼ねて、今日は店を開放しての大パーティーだ。
「さあ、今日はみんなでワイワイ食べられる料理よ! ジャンジャン焼くから覚悟してね!」
私が使うのは、屋敷の厨房の奥で眠っていた、あの巨大な石窯だ。ハンスに薪をくべてもらい、ガンガンに熱しておく。
主役は『ピザ』だ。
小麦粉、塩、オイル、そしてドライイースト代わりの天然酵母を混ぜて耳たぶくらいの硬さになるまでよく捏ねる。
発酵させて倍の大きさになった生地を、空中に放り投げて回しながら薄く伸ばす――なんて芸当はできないので綿棒で丁寧に丸く伸ばす。
「トッピングは自由自在よ!」
基本の『マルゲリータ』。
自家製トマトソースをたっぷり塗り、真っ白なチーズをちぎって乗せ、フレッシュなバジルを散らす。
ガッツリ系『ミート・デラックス』。
角切りのソーセージを山盛りにし、とろけるチーズで蓋をする。
女性に人気の『森のキノコとホワイトソース』。
濃厚なホワイトソースをベースに、バターソテーしたキノコをたっぷりと。これらを木のパドルに乗せ、高温の石窯の中へ滑り込ませる。
――ジュワアアァァッ!!
石床の熱で生地が焼け、香ばしい香りが爆発する。チーズがグツグツと沸騰し、焦げ目がついていく。
数分もしないうちに、縁がぷっくりと膨らんだ熱々のピザが焼き上がった。
「はい、焼けましたー! 熱いうちに召し上がれ!」
私が焼き立てをホールへ運ぶと、歓声が上がった。
「うおお! なんだこの平べったいパンは!」
「チーズの海だ!」
「これをこうやって、手で持って食べるのか?」
最初は戸惑っていた冒険者たちも、一切れ持ち上げてチーズがビヨーンと伸びるのを見て大興奮。
「熱ッ! うめぇぇぇ!」
「生地がカリカリで、中はモチモチだ!」
「トマトの酸味とチーズが最高に合うな! ビールだ! ビールを持ってこい!」
店内は一瞬にして宴会場と化した。
大人も子供も、騎士も商人も、みんな一緒になってピザを頬張る。
ルルも特製の『肉オンリーピザ』をハフハフと食べてご満悦だ。
「……平和だな」
騒ぎの輪から少し離れて、ジークフリート様がピザを片手に微笑んでいた。
その手にあるのは、私が彼のために焼いた『激辛ソーセージとハラペーニョのピザ』だ。
「辛い。だが、この刺激がたまらん」
「ふふ、すっかり辛党ですね、ジーク様」
私が隣に座ると、彼は一切れを私に差し出した。
「ほら、お前も食え。主役が働いてばかりではいかん」
「ありがとうございます。あーん」
パクッ。
んんっ、辛い! でも美味しい!
口の中がヒリヒリするけれど、冷えたエールで流し込むと最高だ。
「レティシア」
「はい?」
「……私は、この景色を守りたかったのだな」
彼は賑わう店内を見渡した。
そこには、身分の壁を超えた笑顔があった。
王都では決して見られない、自由で温かい光景。
「お前が来てから、この辺境は変わった。……私も、変われた気がする」
「ジーク様……」
「だから、これからも頼むぞ。……私の、パートナーとして」
パートナー。その言葉が、料理人としてなのか、それとも……。
彼の真剣な眼差しに、私は顔が熱くなるのを感じた。ピザの熱気のせいだけではないはずだ。
「はい! 美味しい料理で、ジーク様とこの町を支え続けます!」
私が元気よく答えると、彼は満足そうに頷き、また一口ピザを口に入れた。伸びるチーズを指で巻き取る仕草さえ、絵になる人だ。
王太子たちは去り、町には平和が戻った。
けれど、まだ一つだけ心残りがある。
それは、私の「家族」について。
公爵家との関係、そして私自身の未来について、そろそろ決着をつける時が近づいていた。
翌日の昼、『陽だまり亭』には、心配してくれていた常連さんや騎士様たちが大挙して押し寄せていた。
「レティシアちゃん! 無事だったか!」
「あの馬鹿王子を追い返したって本当か!?」
「閣下と、あの白い犬っころが凄かったらしいぞ!」
みんな口々に私を労い、無事を喜んでくれる。
そんな温かいみんなへのお礼と勝利のお祝いを兼ねて、今日は店を開放しての大パーティーだ。
「さあ、今日はみんなでワイワイ食べられる料理よ! ジャンジャン焼くから覚悟してね!」
私が使うのは、屋敷の厨房の奥で眠っていた、あの巨大な石窯だ。ハンスに薪をくべてもらい、ガンガンに熱しておく。
主役は『ピザ』だ。
小麦粉、塩、オイル、そしてドライイースト代わりの天然酵母を混ぜて耳たぶくらいの硬さになるまでよく捏ねる。
発酵させて倍の大きさになった生地を、空中に放り投げて回しながら薄く伸ばす――なんて芸当はできないので綿棒で丁寧に丸く伸ばす。
「トッピングは自由自在よ!」
基本の『マルゲリータ』。
自家製トマトソースをたっぷり塗り、真っ白なチーズをちぎって乗せ、フレッシュなバジルを散らす。
ガッツリ系『ミート・デラックス』。
角切りのソーセージを山盛りにし、とろけるチーズで蓋をする。
女性に人気の『森のキノコとホワイトソース』。
濃厚なホワイトソースをベースに、バターソテーしたキノコをたっぷりと。これらを木のパドルに乗せ、高温の石窯の中へ滑り込ませる。
――ジュワアアァァッ!!
石床の熱で生地が焼け、香ばしい香りが爆発する。チーズがグツグツと沸騰し、焦げ目がついていく。
数分もしないうちに、縁がぷっくりと膨らんだ熱々のピザが焼き上がった。
「はい、焼けましたー! 熱いうちに召し上がれ!」
私が焼き立てをホールへ運ぶと、歓声が上がった。
「うおお! なんだこの平べったいパンは!」
「チーズの海だ!」
「これをこうやって、手で持って食べるのか?」
最初は戸惑っていた冒険者たちも、一切れ持ち上げてチーズがビヨーンと伸びるのを見て大興奮。
「熱ッ! うめぇぇぇ!」
「生地がカリカリで、中はモチモチだ!」
「トマトの酸味とチーズが最高に合うな! ビールだ! ビールを持ってこい!」
店内は一瞬にして宴会場と化した。
大人も子供も、騎士も商人も、みんな一緒になってピザを頬張る。
ルルも特製の『肉オンリーピザ』をハフハフと食べてご満悦だ。
「……平和だな」
騒ぎの輪から少し離れて、ジークフリート様がピザを片手に微笑んでいた。
その手にあるのは、私が彼のために焼いた『激辛ソーセージとハラペーニョのピザ』だ。
「辛い。だが、この刺激がたまらん」
「ふふ、すっかり辛党ですね、ジーク様」
私が隣に座ると、彼は一切れを私に差し出した。
「ほら、お前も食え。主役が働いてばかりではいかん」
「ありがとうございます。あーん」
パクッ。
んんっ、辛い! でも美味しい!
口の中がヒリヒリするけれど、冷えたエールで流し込むと最高だ。
「レティシア」
「はい?」
「……私は、この景色を守りたかったのだな」
彼は賑わう店内を見渡した。
そこには、身分の壁を超えた笑顔があった。
王都では決して見られない、自由で温かい光景。
「お前が来てから、この辺境は変わった。……私も、変われた気がする」
「ジーク様……」
「だから、これからも頼むぞ。……私の、パートナーとして」
パートナー。その言葉が、料理人としてなのか、それとも……。
彼の真剣な眼差しに、私は顔が熱くなるのを感じた。ピザの熱気のせいだけではないはずだ。
「はい! 美味しい料理で、ジーク様とこの町を支え続けます!」
私が元気よく答えると、彼は満足そうに頷き、また一口ピザを口に入れた。伸びるチーズを指で巻き取る仕草さえ、絵になる人だ。
王太子たちは去り、町には平和が戻った。
けれど、まだ一つだけ心残りがある。
それは、私の「家族」について。
公爵家との関係、そして私自身の未来について、そろそろ決着をつける時が近づいていた。
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