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第17章 聖奈の完全敗北と喜べない女子団体優勝
読み勝てど、勝ち切れず~届かぬ“価値”の重み~
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その掛け声に、落ち込んでいた茜と月華がはっと顔を上げた。
咲の一喝が、沈みかけた士気に火を点ける。だが一方で、姫香の敗北は綾野聖奈の心を深く抉っていた。
(姫香でも……手が出せなかった。私が、勝たなきゃ……!)
勝たなければという思いが、焦りに変わり、恐怖に変わる。
聖奈の膝が、微かに震えた。
その心の奥に、小さな“ヒビ”が入る音が、誰にも聞こえない場所で確かに響いていた。
――特別観覧席。
「恭介、いきなり負けちゃったわよ? どうするのよ、このまま負け続けたら……」
つぐみは思わず、恭介のネクタイをぐっと引っ張る。興奮が声に乗っていた。
だが、恭介は落ち着いた仕草でつぐみの手を取り、視線を同じ高さに合わせた。
「まだ始まったばかりだ。落ち着け。俺たちが動揺してどうする。
応援する側が騒げば、選手たちに伝わる。
それに……一国の主が、その程度の肝っ玉でどうする。
修羅場は何度もくぐってきただろ?」
「……っ、ふふ、そうね。私としたことが、こんな事で動じるなんて。」
つぐみは肩の力を抜き、表情を戻した……が、口は止まらない。
「でも恭介、女の私に“玉”はないわよ? セクハラ発言として通報してもいいかしら?」
「……それはご容赦願いたい。」
恭介がタジタジになりながらも視線を試合に戻すと――次鋒戦が始まっていた。
フィールドに立つ茜。その瞳には、かすかな緊張と、それを上回る集中の色が宿っていた。
試合直前、咲から告げられた言葉が、今も耳に残っていた。
(茜、よく聞いて。この次鋒戦が、勝敗のカギになるわ。今から言う通りにして。そうすれば……勝てる。)
咲の戦術を受け取り、茜の表情はみるみるうちに明るく、鋭くなっていった。
相手は、豊葦原鷹籠学園中等部・栞葉古杜音。
主審の合図と同時に、火花が散るようなスピードで戦闘が始まった。
「雷刃展開――応じなさい、フェンリル!」
茜の背後から、狼型のエネルギービーストが現れる。霊力を帯びた牙が唸り、攻撃の構えを見せる。
一方、栞葉古杜音は無言で刀を構え、すぐに身をひるがえして回避に徹する。
(右に逃げた……やっぱり!)
咲のアドバイスどおり、栞葉には“必ず右に避ける”という癖があった。
茜はそこを狙い撃ちにし、次々と追い込んでいく。
「そこッ! 雷牙咆哮!」
一撃ごとに、栞葉の防御が遅れはじめる。観客席にも、茜の優勢が伝わっていた。
だが――。
(……読まれてる? 動きが……全て。)
栞葉もただやられているわけではなかった。茜の攻撃を食らいながら、じりじりと反撃の機会を窺っていたのだ。
しかし、咲はすでにその一歩先を読んでいた。
(相手が“逆に逃げ始めたら”迷わず逆を攻撃して。必ず当たるわ。)
茜はその瞬間を逃さなかった。
栞葉が初めて左にステップした――その刹那。
「フェンリル、クローッ!!」
巨大な爪が栞葉に直撃し、その身体が硬直する。茜は即座に距離を詰める。
「決める……我が剣に触れ伏せ!
フレア・ミュート・ミョルリル!!」
フェンリルが姿を変え、燃えるような大剣を咥えた“炎のハンマー”へと変貌。
そのまま一気に振り下ろし、栞葉に直撃――!
……するはずだった。
「……まだよッ!」
わずかなタイミング、わずかな隙。
茜の“決め癖”――勝ちを意識した時の気の緩みを、栞葉は逃さなかった。
逆転の一撃が茜の胴に突き刺さり、二人の身体は同時に吹き飛ぶ。
「くっ……!」
「がっ……!」
両者の姿が、同時にバトルフィールドから消失する。
主審が沈黙のあと、宣言する。
「――両者、引き分けッ!!」
勝負は振り出しに戻った。しかし、流れは――確かに、動き出していた。
咲の一喝が、沈みかけた士気に火を点ける。だが一方で、姫香の敗北は綾野聖奈の心を深く抉っていた。
(姫香でも……手が出せなかった。私が、勝たなきゃ……!)
勝たなければという思いが、焦りに変わり、恐怖に変わる。
聖奈の膝が、微かに震えた。
その心の奥に、小さな“ヒビ”が入る音が、誰にも聞こえない場所で確かに響いていた。
――特別観覧席。
「恭介、いきなり負けちゃったわよ? どうするのよ、このまま負け続けたら……」
つぐみは思わず、恭介のネクタイをぐっと引っ張る。興奮が声に乗っていた。
だが、恭介は落ち着いた仕草でつぐみの手を取り、視線を同じ高さに合わせた。
「まだ始まったばかりだ。落ち着け。俺たちが動揺してどうする。
応援する側が騒げば、選手たちに伝わる。
それに……一国の主が、その程度の肝っ玉でどうする。
修羅場は何度もくぐってきただろ?」
「……っ、ふふ、そうね。私としたことが、こんな事で動じるなんて。」
つぐみは肩の力を抜き、表情を戻した……が、口は止まらない。
「でも恭介、女の私に“玉”はないわよ? セクハラ発言として通報してもいいかしら?」
「……それはご容赦願いたい。」
恭介がタジタジになりながらも視線を試合に戻すと――次鋒戦が始まっていた。
フィールドに立つ茜。その瞳には、かすかな緊張と、それを上回る集中の色が宿っていた。
試合直前、咲から告げられた言葉が、今も耳に残っていた。
(茜、よく聞いて。この次鋒戦が、勝敗のカギになるわ。今から言う通りにして。そうすれば……勝てる。)
咲の戦術を受け取り、茜の表情はみるみるうちに明るく、鋭くなっていった。
相手は、豊葦原鷹籠学園中等部・栞葉古杜音。
主審の合図と同時に、火花が散るようなスピードで戦闘が始まった。
「雷刃展開――応じなさい、フェンリル!」
茜の背後から、狼型のエネルギービーストが現れる。霊力を帯びた牙が唸り、攻撃の構えを見せる。
一方、栞葉古杜音は無言で刀を構え、すぐに身をひるがえして回避に徹する。
(右に逃げた……やっぱり!)
咲のアドバイスどおり、栞葉には“必ず右に避ける”という癖があった。
茜はそこを狙い撃ちにし、次々と追い込んでいく。
「そこッ! 雷牙咆哮!」
一撃ごとに、栞葉の防御が遅れはじめる。観客席にも、茜の優勢が伝わっていた。
だが――。
(……読まれてる? 動きが……全て。)
栞葉もただやられているわけではなかった。茜の攻撃を食らいながら、じりじりと反撃の機会を窺っていたのだ。
しかし、咲はすでにその一歩先を読んでいた。
(相手が“逆に逃げ始めたら”迷わず逆を攻撃して。必ず当たるわ。)
茜はその瞬間を逃さなかった。
栞葉が初めて左にステップした――その刹那。
「フェンリル、クローッ!!」
巨大な爪が栞葉に直撃し、その身体が硬直する。茜は即座に距離を詰める。
「決める……我が剣に触れ伏せ!
フレア・ミュート・ミョルリル!!」
フェンリルが姿を変え、燃えるような大剣を咥えた“炎のハンマー”へと変貌。
そのまま一気に振り下ろし、栞葉に直撃――!
……するはずだった。
「……まだよッ!」
わずかなタイミング、わずかな隙。
茜の“決め癖”――勝ちを意識した時の気の緩みを、栞葉は逃さなかった。
逆転の一撃が茜の胴に突き刺さり、二人の身体は同時に吹き飛ぶ。
「くっ……!」
「がっ……!」
両者の姿が、同時にバトルフィールドから消失する。
主審が沈黙のあと、宣言する。
「――両者、引き分けッ!!」
勝負は振り出しに戻った。しかし、流れは――確かに、動き出していた。
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