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第17章 聖奈の完全敗北と喜べない女子団体優勝
大会の奥に潜む影――交わる欲望と正義でどう?
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一方、その頃――。
大会本部の会議室では、つい先ほどの試合について、工藤女性主審が関係者から問い詰められていた。
「最後はどういう流れで、あの榎宮朱璃選手が倒されたんだ? しかも、戻ってからの様子がどう見てもおかしかった。さらに言えば、姫柊咲の試合では毎回、モニターに異常が出る。不正の疑いがあるんじゃないか? 工藤君、それに佐伯君も。」
そう言ったのは、豊葦原鷹籠学園中等部をあからさまに贔屓している、とあるスポンサーの男だった。鋭く吊り上がった目、いやらしい笑み、その顔つきは裏で何か企んでいるような、そんな印象を誰もが抱いた。
(こいつ……本気で豊葦原を勝たせようとしてるな。)
工藤も佐伯も、そう思いながらも表情を崩さず、淡々と答えた。
「何も問題はありませんでした。」
佐伯が先に言うと、工藤も同じように答える。
「私も、榎宮選手の名誉のため、あえて多くは語りません。」
その返答に、男の顔色が一変する。
「なんだその態度は! 私を誰だと思ってる! 早乙女だぞ。この大会に一番金を出しているのは私だ。試合の詳細を聞いて何が悪い! それに、お前たち、旭日中学とつるんでるだろ。不正をしたんじゃないのか?」
その言葉に、さすがの佐伯も表情を強ばらせた。
「私たちは、公平かつ中立を誇りとしています。あなたのように、特定の学校に肩入れする発言の方が、よほど問題です。」
「なんだと、貴様……主審の資格を剥奪してやってもいいんだぞ。私には、その権限がある! 永久に表舞台に出られなくなることだって――だから教えろ、姫柊咲のあの技の正体を!」
早乙女はテーブルを叩き、脅すように言い放った。
しかし、工藤も佐伯も、怯む様子はなかった。
「お好きにどうぞ。でも、私たちは、あんな素晴らしい試合を台無しにしようとするあなたに、何も話したくありません。」
その瞬間――。
ガタン。
静まり返った会議室の扉が開き、場の空気が一変した。
「待ってちょうだい。その態度、ちょっと目に余るわよ。あなた、たかが一スポンサーでしょう? 大会を私物化するのはやめて。」
サングラスをかけた、一人の女性が悠然と現れた。
「な、なんだ貴様は! ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
鼻息を荒くする早乙女に、女性は涼しげに言い返す。
「あらそう。でも、私は関係者よ。あなたがいくら“民間で一番”出資してようと、この大会は国の管轄下。民間が威張って口出しするようなものじゃないわ。」
「……貴様、一体誰なんだ。正体を明かせ!」
早乙女がそう怒鳴った、その瞬間。
「内閣総理大臣付き、剣術大会取り締まり官です。」
横にいた男が先に名乗ってしまい、女性がジト目でその男に睨みをきかせる。
「ちょっと、恭介! 今、私がカッコよく登場しようとしてたのに!」
その女性の名は――百地つぐみ。
そう、現内閣総理大臣である。
「はいはい、皆さん。こちらにおられるのは、日本の総理大臣、百地つぐみ閣下であるぞー……。ほら、控えろよ。」
棒読みで紹介したのは、つぐみの秘書を務める綾野恭介だった。
「だから棒読みはやめなさいっての!」
つぐみがツッコむ横で、会議室の空気は凍りついていた。
そして――。
「これはこれは、百地首相! こんなところまでご足労とは……。」
手のひらを返したように平身低頭しだす早乙女。
だが、つぐみは涼しい顔で切り返す。
「あなた、またそんなことしてるの? 春にも、旭日中学の校長室で私に言われたでしょ? “反省する”って言ってたけど、あれ、嘘だったのね。」
そう言って、つぐみは静かに椅子に腰を下ろした。
「で、今日はどんなご用件で?」
ご機嫌を取り始めた早乙女に、つぐみはあっさりと答えた。
「面倒だから、代わりに恭介が説明して。」
ため息交じりにそう言うと、恭介が前へ出た。
「早乙女さん、あなたには現在、大会運営上の不正の疑いがかかっています。賄賂の授受、強豪校への情報リーク、さらには精神操作による試合の誘導――これらが確認されています。」
「……さあ、なんのことでしょう? 私が? 不正? 証拠でもあるんですか? もしないなら、名誉毀損で訴えますよ。」
居直る早乙女に、恭介は静かに、ある物を差し出した。
「ようやく掴みましたよ。これがその証拠です。」
それは――一本の、封のされた飲料水だった。
大会本部の会議室では、つい先ほどの試合について、工藤女性主審が関係者から問い詰められていた。
「最後はどういう流れで、あの榎宮朱璃選手が倒されたんだ? しかも、戻ってからの様子がどう見てもおかしかった。さらに言えば、姫柊咲の試合では毎回、モニターに異常が出る。不正の疑いがあるんじゃないか? 工藤君、それに佐伯君も。」
そう言ったのは、豊葦原鷹籠学園中等部をあからさまに贔屓している、とあるスポンサーの男だった。鋭く吊り上がった目、いやらしい笑み、その顔つきは裏で何か企んでいるような、そんな印象を誰もが抱いた。
(こいつ……本気で豊葦原を勝たせようとしてるな。)
工藤も佐伯も、そう思いながらも表情を崩さず、淡々と答えた。
「何も問題はありませんでした。」
佐伯が先に言うと、工藤も同じように答える。
「私も、榎宮選手の名誉のため、あえて多くは語りません。」
その返答に、男の顔色が一変する。
「なんだその態度は! 私を誰だと思ってる! 早乙女だぞ。この大会に一番金を出しているのは私だ。試合の詳細を聞いて何が悪い! それに、お前たち、旭日中学とつるんでるだろ。不正をしたんじゃないのか?」
その言葉に、さすがの佐伯も表情を強ばらせた。
「私たちは、公平かつ中立を誇りとしています。あなたのように、特定の学校に肩入れする発言の方が、よほど問題です。」
「なんだと、貴様……主審の資格を剥奪してやってもいいんだぞ。私には、その権限がある! 永久に表舞台に出られなくなることだって――だから教えろ、姫柊咲のあの技の正体を!」
早乙女はテーブルを叩き、脅すように言い放った。
しかし、工藤も佐伯も、怯む様子はなかった。
「お好きにどうぞ。でも、私たちは、あんな素晴らしい試合を台無しにしようとするあなたに、何も話したくありません。」
その瞬間――。
ガタン。
静まり返った会議室の扉が開き、場の空気が一変した。
「待ってちょうだい。その態度、ちょっと目に余るわよ。あなた、たかが一スポンサーでしょう? 大会を私物化するのはやめて。」
サングラスをかけた、一人の女性が悠然と現れた。
「な、なんだ貴様は! ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」
鼻息を荒くする早乙女に、女性は涼しげに言い返す。
「あらそう。でも、私は関係者よ。あなたがいくら“民間で一番”出資してようと、この大会は国の管轄下。民間が威張って口出しするようなものじゃないわ。」
「……貴様、一体誰なんだ。正体を明かせ!」
早乙女がそう怒鳴った、その瞬間。
「内閣総理大臣付き、剣術大会取り締まり官です。」
横にいた男が先に名乗ってしまい、女性がジト目でその男に睨みをきかせる。
「ちょっと、恭介! 今、私がカッコよく登場しようとしてたのに!」
その女性の名は――百地つぐみ。
そう、現内閣総理大臣である。
「はいはい、皆さん。こちらにおられるのは、日本の総理大臣、百地つぐみ閣下であるぞー……。ほら、控えろよ。」
棒読みで紹介したのは、つぐみの秘書を務める綾野恭介だった。
「だから棒読みはやめなさいっての!」
つぐみがツッコむ横で、会議室の空気は凍りついていた。
そして――。
「これはこれは、百地首相! こんなところまでご足労とは……。」
手のひらを返したように平身低頭しだす早乙女。
だが、つぐみは涼しい顔で切り返す。
「あなた、またそんなことしてるの? 春にも、旭日中学の校長室で私に言われたでしょ? “反省する”って言ってたけど、あれ、嘘だったのね。」
そう言って、つぐみは静かに椅子に腰を下ろした。
「で、今日はどんなご用件で?」
ご機嫌を取り始めた早乙女に、つぐみはあっさりと答えた。
「面倒だから、代わりに恭介が説明して。」
ため息交じりにそう言うと、恭介が前へ出た。
「早乙女さん、あなたには現在、大会運営上の不正の疑いがかかっています。賄賂の授受、強豪校への情報リーク、さらには精神操作による試合の誘導――これらが確認されています。」
「……さあ、なんのことでしょう? 私が? 不正? 証拠でもあるんですか? もしないなら、名誉毀損で訴えますよ。」
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それは――一本の、封のされた飲料水だった。
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