恋も剣も本気です!青春剣士たちのラブ・グラディエーション ~気が付くとは~れむ状態!?~

てんちょう

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第18章 咲と聖奈の約束

剣を継ぎ、意志を継ぎ、夢を超えて

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月華が勝利の余韻をまといながらベンチに戻ると、真っ直ぐに蹲っていた聖奈の元へ向かった。

「聖奈さん……」

その声に誘われるように、聖奈は顔を上げた。まっすぐな瞳に宿るのは、かつて聖奈に憧れていた少女の面影ではなく、一人の剣士としての誇りだった。

「私……ずっと謝りたかったんです。聖奈さんが苦しんでいる時、私は何もできなかった。ただ頼ってばかりで……。でも今は違います。私はようやく、聖奈さんと並べるところまで来ることができました。」

月華はそう言って、そっと聖奈の肩に手を置いた。

「だから……これからは、自分のために生きてください。責任も、重荷も、もう背負わなくていいんです。今度は、私が聖奈さんを支える番ですから。」

その言葉に、聖奈の胸が締め付けられ、聖奈は何かを言いかけたが、その言葉は喉の奥で消えた。

(……月華ちゃん。こんなにも強くなった。私がもう、何もしてあげられないほどに。なのに私は、まだ……)

 胸が痛んだ。うれしいはずの後輩の成長が、今の聖奈には剣のように刺さる。

(私は何のためにここにいるの? もう、誰の力にもなれないなら――)

「情けないなぁ……後輩にまでこんな言葉をもらうなんて……先輩失格だよ、私は。」

かすれた声で呟いた聖奈がその場を離れようと身を引いた、その時。

「待って。」

咲が静かに手を伸ばし、聖奈の腕を掴んだ。

「……逃げる気? でも、私はそれを認めない。あなたが言う“責任”って、そんな程度のものなの? だったら最初から背負わないでよ!」

咲の言葉に、聖奈の足が止め、驚いて咲を見つめる。その眼には怒りも、呆れもなかった。ただ、まっすぐな情熱だけが宿っていた。

「今から私の試合を、ちゃんと見てなさい。正直言って、あの人に勝てるかなんてわからない。けどね――姫香が、茜が、月華が、必死な想いで繋いでくれたこの流れを、私が無駄にするわけにはいかないの。」

咲は唇を強く結んだ。その奥にあるのは、ただの怒りではない。仲間の想いを受け取った者の覚悟――それを、聖奈に伝えていた。

「私はチャレンジの機会をもらった。それが、どんなに残念な結果を迎えるとしても――私は足掻く! 負けが待っている戦いだって、構わない!」

聖奈の胸に、かすかな熱が灯った。

「よく見てなさい。私はこのチャンスで女子ナンバーワンになる。そして――その時は、聖奈、あなたに挑戦状を叩きつける。それが、私の……私の誓い――そして、覚悟よ!」

咲はそう言って、静寂を切り裂くように、ベンチの隅に置いてあった黒い木箱の蓋が開く。

中には、一本の美しい刀が納められていた。

「咲、それって……」と姫香が息を呑む。

咲は静かに微笑んだ。

「父の形見であり、私の原点。そして今の私に必要な、最後の力……夜叉と阿修羅の“兄弟”のような存在。名は迦楼羅――これは、私のもう一つの魂。」

彼女はその刀を手に取ると、鋭さと優雅さが同居するその軌道は、まるで風を割く一閃だった。その軌道に、周囲は息を呑んだ。

「……それで決勝戦に挑むんですか?」と月華が問う。

だが咲は首を振る。

「そして、もう一つ。」

咲は、夜叉と阿修羅にこれ以上ない深い感謝と別れの想いを込めた視線を送る。

「夜叉、阿修羅――ありがとう。これまでずっと、私を導いてくれて。でも、私は次の段階に進まなきゃいけない。だから今、あなたたちを……本来の姿に還す。」

そう言って、咲はベンチに置かれた夜叉と阿修羅を前に進み出た。

「本来の姿って……?」

月華が夜叉と阿修羅に目を落とす。

「今まで、ありがとう。私を支えてくれた……夜叉……阿修羅……もう一度、私に力を貸して。」

まるでその想いに応えたかのように、二振りの刀が淡く輝き始める。光が交わり、やがて一本の白銀の刀へと変わっていった。

咲はその刀をそっと手に取る。

「そして、これがもう一本の力――帝釈天――あなたが、私の覚悟の証。」

左手に迦楼羅、右手に帝釈天。二刀を腰に携え、咲は静かに前を見据える。

「これが私の“始まり”。この二本で、私は挑む。見てなさい、聖奈。私が今から“女子ナンバーワン”になって、その後――今度は私から、あなたに挑むから。」

 彼女は帝釈天と迦楼羅を腰に差し、静かに歩き出す。その背には、重くも熱い、仲間たちの想いと――聖奈への“挑戦”が刻まれていた。

咲のその背には、重圧はなく、仲間の意志、希望が宿っていた。聖奈は、ただただその背中を見送る。

(月華ちゃん……咲……あなたたちは、私が追いつけないところまで行っているかもしれない。でも……それでも私は、あなたたちの背中を追いかけたい……必ず、追いつく!)

その胸に小さな炎が宿り、聖奈はそっと拳を握った。
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