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第18章 咲と聖奈の約束
恐れを越えて封印解放――勝利のためじゃない。聖奈のために、私は強くなる
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決勝戦を目前に控えた控室。
咲のもとに、母・美弥子の秘書が静かに現れた。手には、黒漆の木箱が抱えられていた。
「咲お嬢様。奥様から、これをお預かりしております。」
差し出されたその箱を見た瞬間、咲の胸が音を立てて高鳴った。
(まさか……お母様が、これを私に?)
「どうして、今……?」
思わず問いかけると、秘書は静かに頷き、美弥子の言葉をそのまま口にした。
「“夜叉と阿修羅の封印を解いたということは、咲が覚悟を決めた証。その二振りを壊す前に、本来の姿『帝釈天』へと戻しなさい。そして、父上の形見『迦楼羅』と共に、あなた自身の答えを刻みなさい。”……そう、奥様はおっしゃっていました。」
その言葉を聞いた瞬間、咲の手が木箱にそっと触れる。
(お母様……)
秘書は深く一礼し、その場を後にした。
咲はしばらくの間、箱を胸に抱きしめながら動けなかった。
夜叉と阿修羅――それは父が咲に遺した二振りの剣。
帝釈天を扱うにはまだ幼すぎた彼女のために、力を分割し、制御しやすいように与えられたものだった。
本来なら、二刀を自在に扱えるようになった時、それは“帝釈天を持つ資格”を得たことを意味する。
けれど咲は、その道のりに五年を要した。
その間に、父はこの世を去った。
(私は……遅かったの……?)
初めて夜叉と阿修羅を試合で使った日のことを、咲は今でも忘れていない。
夜叉の荒々しさ。阿修羅の制御不能な乱暴さ。
戦うはずの自分が、暴れる二刀に振り回された。
(怖かった……私、剣が怖くなるなんて思ってなかったのに……)
それでも――咲は諦めなかった。
恭弥と共に何度も制御に挑み、そして、ようやく二刀と心を通わせることができた。
今、咲の前にあるのは、父の形見『迦楼羅』と、
本来の姿に還る時を待つ、夜叉と阿修羅。
しかし――
(もし、融合して失敗したら? 決勝で負けて、みんなの努力を台無しにしてしまったら……)
夜叉と阿修羅は、一度融合すれば二度と戻らない。
その選択が、咲を躊躇わせた。
「お父様……私は、まだ……怖いです。」
咲は震える声でそう呟き、木箱の蓋をそっと閉じた。
――しかし。
状況は、大きく変わっていった。
姫香が、茜が、月華が――命懸けのような戦いで、勝利を繋いできた。
そして、旭日中学の優勝はすでに決まっている。
(……これは、私に与えられた“挑戦の場”なんだ)
勝ち負けに縛られず、本当の意味で“戦える”舞台。
その事実が、咲の迷いを少しずつ溶かしていった。
そしてもう一つ、咲の心を突き動かしていたものがある。
(聖奈……あなた、もう壊れそうなほどに……)
かつて自分にとって最大の目標であり、誰よりも頼れる仲間だった聖奈。
その彼女が、今は自分自身を見失っていた。
(だったら、私は……あなたの目標になってみせる)
聖奈が再び前を向くために。
今度は、自分が“最高のライバル”になってみせる。
恭弥の想いが、聖奈の心に届いているなら、
自分は“強さ”で、それを後押しするだけ。
「……夜叉、阿修羅。ありがとう。」
咲はそっと二振りを見つめた。
「あなたたちと一緒に戦えて、本当に誇りだった。だけど、ここから先は――帝釈天として、私の力になって。」
二刀が淡く光り始めた。
融合し、再び一振りの白銀の刀――帝釈天へと還っていく。
咲はそれを、ゆっくりと手に取った。
そしてもう一つの刀、迦楼羅。
それは父の形見であり、自分にとって“もう一つの魂”。
(聖奈……私は今、本当の意味であなたに挑める。)
左手に迦楼羅、右手に帝釈天。
覚悟を宿した二刀を携え、咲は静かに歩き出した。
これは、ただの決勝戦ではない。
かけがえのない仲間たちの想いと、
かつての親友に届ける“挑戦状”でもあった。
(見ていて……聖奈。私は、あなたの前を走ってみせるから――)
胸に小さな炎を灯し、咲は決戦の舞台へと向かった。
咲のもとに、母・美弥子の秘書が静かに現れた。手には、黒漆の木箱が抱えられていた。
「咲お嬢様。奥様から、これをお預かりしております。」
差し出されたその箱を見た瞬間、咲の胸が音を立てて高鳴った。
(まさか……お母様が、これを私に?)
「どうして、今……?」
思わず問いかけると、秘書は静かに頷き、美弥子の言葉をそのまま口にした。
「“夜叉と阿修羅の封印を解いたということは、咲が覚悟を決めた証。その二振りを壊す前に、本来の姿『帝釈天』へと戻しなさい。そして、父上の形見『迦楼羅』と共に、あなた自身の答えを刻みなさい。”……そう、奥様はおっしゃっていました。」
その言葉を聞いた瞬間、咲の手が木箱にそっと触れる。
(お母様……)
秘書は深く一礼し、その場を後にした。
咲はしばらくの間、箱を胸に抱きしめながら動けなかった。
夜叉と阿修羅――それは父が咲に遺した二振りの剣。
帝釈天を扱うにはまだ幼すぎた彼女のために、力を分割し、制御しやすいように与えられたものだった。
本来なら、二刀を自在に扱えるようになった時、それは“帝釈天を持つ資格”を得たことを意味する。
けれど咲は、その道のりに五年を要した。
その間に、父はこの世を去った。
(私は……遅かったの……?)
初めて夜叉と阿修羅を試合で使った日のことを、咲は今でも忘れていない。
夜叉の荒々しさ。阿修羅の制御不能な乱暴さ。
戦うはずの自分が、暴れる二刀に振り回された。
(怖かった……私、剣が怖くなるなんて思ってなかったのに……)
それでも――咲は諦めなかった。
恭弥と共に何度も制御に挑み、そして、ようやく二刀と心を通わせることができた。
今、咲の前にあるのは、父の形見『迦楼羅』と、
本来の姿に還る時を待つ、夜叉と阿修羅。
しかし――
(もし、融合して失敗したら? 決勝で負けて、みんなの努力を台無しにしてしまったら……)
夜叉と阿修羅は、一度融合すれば二度と戻らない。
その選択が、咲を躊躇わせた。
「お父様……私は、まだ……怖いです。」
咲は震える声でそう呟き、木箱の蓋をそっと閉じた。
――しかし。
状況は、大きく変わっていった。
姫香が、茜が、月華が――命懸けのような戦いで、勝利を繋いできた。
そして、旭日中学の優勝はすでに決まっている。
(……これは、私に与えられた“挑戦の場”なんだ)
勝ち負けに縛られず、本当の意味で“戦える”舞台。
その事実が、咲の迷いを少しずつ溶かしていった。
そしてもう一つ、咲の心を突き動かしていたものがある。
(聖奈……あなた、もう壊れそうなほどに……)
かつて自分にとって最大の目標であり、誰よりも頼れる仲間だった聖奈。
その彼女が、今は自分自身を見失っていた。
(だったら、私は……あなたの目標になってみせる)
聖奈が再び前を向くために。
今度は、自分が“最高のライバル”になってみせる。
恭弥の想いが、聖奈の心に届いているなら、
自分は“強さ”で、それを後押しするだけ。
「……夜叉、阿修羅。ありがとう。」
咲はそっと二振りを見つめた。
「あなたたちと一緒に戦えて、本当に誇りだった。だけど、ここから先は――帝釈天として、私の力になって。」
二刀が淡く光り始めた。
融合し、再び一振りの白銀の刀――帝釈天へと還っていく。
咲はそれを、ゆっくりと手に取った。
そしてもう一つの刀、迦楼羅。
それは父の形見であり、自分にとって“もう一つの魂”。
(聖奈……私は今、本当の意味であなたに挑める。)
左手に迦楼羅、右手に帝釈天。
覚悟を宿した二刀を携え、咲は静かに歩き出した。
これは、ただの決勝戦ではない。
かけがえのない仲間たちの想いと、
かつての親友に届ける“挑戦状”でもあった。
(見ていて……聖奈。私は、あなたの前を走ってみせるから――)
胸に小さな炎を灯し、咲は決戦の舞台へと向かった。
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